第二十七話 祝祭
ロームの闘技場付近が今日は一段と賑わっていた。
午前は引き続き、祝祭に出場できる選手の選別を行っており、午後からは"祝祭"と名付けられた新エリアオープンのお祝い行事が開催するからだ。
祝祭を盛り上げる為に一役買う約束をしたフラウとリリィは、闘技場の一室にある客間で説明を受けていた。
また、二人の他にカナトやライラ等も参加する予定らしい。
一見プレーヤーに見える女性は、ローム周辺のバグや違反を取り締まる運営スタッフらしい。
今回急遽アバターを作成し、上位プレーヤーに接触を行っている。
彼女は、二人に順番と相手を告げた。
「リリィさんは"玄武"さんと、フラウさんは"リーリア"さんと対戦をお願い致します。彼らは五位、六位と実力も拮抗していると思われますので、不利にはならないとは思います。あとは、全力でお願い致しますね!」
元気よくそう言ったスタッフは、他のプレーヤーを探さなくちゃならないと言い残し、客間からすぐに出て行く。
残された二人は、ルールの記載がされた個人の電子メールを、読み間違いがないか確認を行っていた。
今回のルールは闘技場ルールに則り、どちらかが負けを認めるか、それとも倒されるかで勝敗が決まる。
リングの中で起こったことは、リングから出たら全て元通りになる為、リング外へ飛ばされても負けになる。
他にも、アイテムの使用は禁止となっている。
試合前にステータス等を上昇させるアイテムを使用することも禁止だ。
たとえ使用して入ったとしても、リングに上がれば無効にされる為、正々堂々と闘う事を求められる。
試合の順番は、始めの第一試合目は十位のプレーヤーが二位の挑戦者と闘う。
それが終了次第、二試合目にカナトと一位の挑戦者が闘い、次いで八位のプレーヤーと九位のプレーヤーが闘う予定だ。
その後、四試合目に来てリリィと玄武が闘い、五試合目にフラウとリーリアが闘うことになっている。
今回の祝祭の目玉は、カナトと挑戦者、そして二位ライラと三位グリズリーの闘いだろうと予想できる。
フラウとリリィは何度目かのルールを読み終わる。
そして、午前は時間が空くので、選手となるプレーヤーの闘いを、観覧席で見ることにした。
二人は客間から移動する。
以前は闘技場の入り口に設置されていたモニターで闘いをチラリと見ただけで、観覧席まで入るのは初めてだった。
観覧席はリングを囲む様に円形に作られていた。
そして、人がこれでもかと言うほどひしめき合っており、中の試合に熱狂している。
二人が席に着くなり、さっそくリングで闘いが始まる。
どちらも勝ち残っただけあり、かなりの実力者だ。
白熱した試合を繰り広げる二人のプレーヤー。
そんな中、ふと、フラウはリリィに尋ねた。
「そういえば黄金の洞窟で手に入れたスキル確認した?」
その返答にリリィは「もちろん!」と元気よく答える。
「新しく追加されたスキルは"リミッターロスト"ステータスを一時的に限界まで引き上げるらしい。フラウは?」
「"ディバインプロテクト"っていうスキルだよ。私を中心に半球体のドーム状になった防御壁ができるらしいから、今度は洞窟が崩れるのもビクビクしなくて済むよ〜」
「中々便利そうなスキルだな! 今回の試合にも役立つ様な気がする!!」
「そうだね! なんか気合い入るよね〜! 頑張ろうね、リリィ!」
「おぅ!!」
二人がハイタッチすると同時に、リングで行われていた試合の決着がつく。
先程まで戦っていた選手がリングの外へ捌けると、再び違うプレーヤーがリングで準備を行う。
午前はそうして試合が続いた。
見たことのないスキルも多くあった為、あれが便利そうだとか、これが欲しいだとか、二人の会話は大いに盛り上がった。




