第二話 スキル解放
賑わった街の中、ふと掲示板に立ち寄った香瑠ことフラウは、イベントと大きなポップが出た所を押してみた。
【参加自由! 第三回イベントは一匹でも多くモンスターを倒し、豪華報酬をゲットしよう!!】
フラウは参加出来たらいいなと気軽に思い、例の条件を満たすため、南門に向かった。
〇
南門には東門より少し強いモンスターが存在していた。
特に獣の形をしたモンスターが多く、狼型のモンスターも盛んに存在しているという。
フラウは今回、事前にリアティの攻略掲示板やSNSでそれらを調べており、迷うことなくたどり着くことが出来た。
「さて、狼のモンスター探さなくちゃ!!」
フラウは気合を入れて森を進む。
途中出会った兎型のモンスターや鳥型のモンスターは、あの時の洞窟に居たものと少し似ていた。
ガサガサと草木を掻き分け奥に進むと、ついに目的の狼型のモンスターがウロウロしているのを発見した。
手堅く一匹で歩いている狼モンスターを狙って、フラウは魔法をかけた。
そして、狼はフラウの存在に気づきこちらに走ってきた。
「ファイアーボール!!」
少し威力の強くなった魔法を真正面に受け止めた狼は、容易く狼狽えていた。
「これなら勝てるかな」
内心ドキドキしていたフラウだが、簡単に倒すことが出来たので少し気が楽になる。
それからは順調に狩りが進んだ。
十匹目を倒した時、フラウのレベルも十を表示しており、ハテナボックスは"解放"の文字が表示されていた。
それをタップすると現れたのは少し変わった名前のスキルだった。
「ウルフメイク……?」
聞いたことの無いスキルだ。
「もしかして、特殊スキルかな? え、私ツイてる!!?」
特殊スキルとは、一定の確率で発現するちょっと変わったスキルのことだ。
フラウは掲示板でその存在を知り興味を持っていた。
やった! とガッツポーズを取るフラウ。
さっそくウルフメイクと言うスキルを使ってみた。
すると全身キラキラと輝き、そして、視界がぐんと低くなり、ハッとした時には、フラウの体があの洞窟にいた狼のボスモンスターの小型バージョンのような形になっていた。
「え!?」
フラウが驚いていると、今まで敵意を向けていた他のモンスターがフラウに関心を持たなくなった。
「これってモンスターに擬態してるってこと? えぇ〜…どうなんだろう……? 体力が少ない時は助かるのかなあ?」
思いの外使い所が分からないスキルに少しガッカリするフラウ。
とりあえずそのままモンスターにそっと近づき周りをウロウロとしてみた。
モンスターはやはり我関せずとフラウに敵意を向けない。
「あ、この状態で攻撃しかけたらどうなるのかな?」
フラウはそう呟き、近くの兎のモンスターに襲いかかる。
兎のモンスターは驚いて固まり、簡単にやっつけることが出来た。
どうやらステータスの方も少し上昇しているらしい。
電子の粒となるうさぎのモンスターを見送り、フラウは何だか便利そうだと気持ちを持ち直した。
そして、この状態でしばらくレベルを上げることに専念していた。
すると"ピコン"と何かまた表示される。
「ウルフハンターの称号? 効果は、攻撃力二倍! 凄い! これだと簡単に狩りができる!!」
さっそくその効果を確かめるべく、先程苦労して倒した熊のモンスターに再度戦いを挑む。
熊のモンスターは手こずることなくやっつけることが出来た。
フラウはいい収穫があったと喜び、そのまま狩りを続ける。
そして再び"ピコン"と音が鳴る。
「次はどんな称号かなあ? どれどれ……えーっと、百獣の王、効果は素早さと頑丈が二倍! これだと序盤が楽になるかも!」
フラウはそう言って計算を始める。
今、フラウのレベルが十で、攻撃力は二百、素早さは百五十、頑丈が百、となっている。
その二倍という事で、攻撃力は四百、素早さが三百、頑丈が二百、言ったところだ。
総合値を表すステータスグラフは、誤差程度しか変動していないが、おおよそレベル十五の魔術師がそのぐらいだと聞いていたので、フラウは実質レベル十五になったと言っても過言ではない。
「やったあ! 凄く楽にレベルが上昇した気分だ! あ、そうだ、今日はここまでにして、明日に備えて勉強しなきゃ」
フラウが慌ててログアウトを済ませる。
明日は何しようかなと心弾ませて机に向かった。
〇
学校で小テストは何とかやり過ごした香瑠は、友達の友理彩に昨日までのゲームの進捗を話していた。
「でね、なんか、狼になれて〜称号も何個か貰ったから、ちょっとは強くなったんだよ! 友理彩が来た時はちゃんとサポートできるようになっておくから任せて!」
「いいなぁ私も早くやりたい。そうそう! 今日届くってメールが来たから、すんごい楽しみでさあ」
「ほんと!? じゃあ一緒にできるね!!」
二人はそんな会話を経てチャイムがなる。
次の授業の合図だった。
香瑠は浮き足立った様子で自分の席に戻る。
その後ろ姿を友理彩もソワソワとした様子で眺めていた。