第二十話 あの時のリベンジ
イベント二日目。
リリィは昨夜見た掲示板の話をフラウとしていた。
掲示板ではほとんど雑談が交わされていたが、しっかりとスキルの把握と職業の把握も行われていた。
「派手に動くとすぐ噂になるな、こっちの手はあんま見抜かれないようにしないとな〜」
「そうだね〜あのモニターで結構流れてたんだね」
「こっちはまだ手数が少ないから、完封されたら勝てねーし」
リリィはそう言って自分たちの順位を見る。
「うーん、でものんびりしてられねーな。私らはまだ昨日の段階で千位以内。スピード上げていかないとすぐ追い越されてしまう」
「そだね。じゃあ今日もおっきくなって一網打尽にする?」
「それより、上位のプレーヤーを狙った方が得策かもしれない」
「わかるの?」
「順位表のあたしらより上のやつらを探して叩いていこうぜ。あとは一人で歩いてるやつとか?」
「じゃあ探さなきゃだね」
リリィとフラウは動き始めた。
フラウは機動力を活かして木から木へ渡り歩く。
リリィは"剣舞"を使用しつつできるだけフラウと距離が開かない程度に索敵を進めた。
そうしていると何人かは見つけられ、戦いに持ち込めたが、昨日のこともあり、フラウの狼姿を見て警戒し、逃げられることもあった。
数分続けていると、少しだけ順位は上がったが、まだ百位にも届いていなかった。
「いい方法ないかな」
「強い人を集める方法……あ、逆に昨日であれだけ目立ったんだから、姿を見せれば集まってくるかな?」
「うーん……どうだろ」
「試してみようよ!」
フラウはそう言って狼になり、また巨大化する。
「現れたぞー!」
「えっモンスターも出るの!?」
「違う! あれはプレーヤーだ!」
「適わねぇから逃げるぞー!」
「撤退!!」
森のあちらこちらでそんな声が響いた。
こうして弱いプレーヤーはどんどん距離をとり、残ったのは中級者~上級者のプレーヤー達だ。
「おぉ〜意外と上手くいったな」
「リリィ、昨日より手強いから気をつけなきゃだね」
「そうだな!」
二人はそう言い合い、興味本位に向かってくるプレーヤーに炎や氷を降らせる。
そして、二人が調子よくポイントを獲得していると、その場に見知った和服の女性が現れた。
「派手に動いているようだな」
お鈴はそう言って二本の刀を構えた。
「まさか、あの狼はお前だったとは……悪いが、あの時の決着付けさせてもらう!!」
お鈴がそう言うと業火の火の粉を振り払い、すぐにフラウの足元までやってきた。
刀を振り上げた時、リリィが二人の間に割って入る。
「"要塞ノ型"!!」
リリィのスキルによりお鈴の攻撃はとめられた。
その間に、フラウは"グロウボディ"のスキルを解除しリリィの傍につく。
「二対一、今の私の体力も少ない……だが、部が悪いが負けない!! 行くぞ!!」
お鈴はそう言って刀を低く構えた。
「"鈴虫・華ノ舞"」
お鈴の攻撃スピードがあの時と同様上昇する。
「"鈴虫・残骸"」
お鈴は勢いのままフラウの前に躍り出て、居合の構えを取った。
フラウは嫌な予感を感じ取り、早めに体を後退させる。
先程居た場所は、見事に地面が抉れていた。
「フンッ野生の勘か……?」
お鈴が奥歯を噛み締め、フラウに追撃しようとしたが、間髪入れずリリィが目の前に割り込む。
「"天誅"!!」
「クソッ……!!」
リリィの技により、地面にヒビが入りお鈴の足場がとられた。
とっさに体制を整えるが、次はフラウが飛び出てくる。
「"スキルイーター"!!」
お鈴は減速したスピードと、のしかかる重力によりその場に膝をつく。
「"ファイアーボール"!」
「"アイスストーン"!」
二人の同時の攻撃をなんの防御もなく受け止めるお鈴。
「……っ!!」
お鈴はそのまま電子となって消えた。
二人は「やった〜〜!!」と飛び上がって喜ぶ。
そんな姿を、お鈴は広間のモニターの前でスッキリとした表情で眺めていた。




