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第十四話 ホライズンとヘルスサイド

 次のイベントまで一週間の猶予があった。

リリィは気合が入っているらしく、新しいスキルを求めて一人でどこかへ行ってしまったようだ。


そのため、今日フラウは一人である。


 今は土曜日。

学校も休みで一日空いていたフラウは、改めてリアティの行ったことのない場所を探索してみようと意気込んでいた。


そして、フラウが今いるのは"廃れた街"のさらにその向こうにある"ホライズン"と言う少し薄暗い国だった。


「魔術師御用達って掲示板で聞いたけど、雰囲気あるなぁ」


フラウはそう言ってキョロキョロと辺りを見渡す。

街はどこを見ても、奇妙で怪しげなものでいっぱいだった。


 "ホライズン"はスタットとかけ離れた、少しゴシックで雰囲気のある国だ。


街を歩いているのも、悪魔のような格好をしたプレーヤーやゴスロリの魔法少女風であったり、ドラキュラのような人もいる。


おどろおどろしい雰囲気の中、建ち並ぶ店舗名も"魔女の薬屋"や"狼の酒場"と徹底して作られていた。


「こんな所もあったんだ〜」


フラウは時折そうつぶやいて街の探索を進める。


 初め、不気味だと思っていた廃墟や、古いお屋敷風の家も、慣れてくると少し楽しい。

窓に映るのは人影ばかりではないことに気づいた時はドギマギしたが、怖いもの見たさは人間の心理なのだろうか?


 暫く歩いていると、見慣れた水色の魔女風の女性を見つけた。


「マリンさん!」


フラウがそう言うと、マリンは振り返り手を振る。


「イベントぶりだネ〜フラウちゃん」

「こんにちは! マリンさんは今日は一人ですか?」

「そそ、ここは魔術師系の職だと重宝するアイテムが多くってよく来てるんだ〜フラウちゃんも何か物資調達?」

「私は探索に来ました! 見たことのない場所を見てみようと思って!」

「なるほどね〜……あ! なら、この国の目玉"ヘルスサイド"って言うダンジョンがあるから、寄ってみたらどうかな? ボスモンスター倒したらなにか出てくるかもよ〜」

「国の中にダンジョンがあるんですか?」

「変わってるでしょ〜ま、行ってみてのお楽しみってことで。ここからでも見える大きな御屋敷、あそこが入口だヨ」


マリンがそう指を指した方向に、雷雲に覆われた怪しげなお屋敷が見える。

フラウは国も大方歩いたため、二つ返事でそこに行くことを決心した。


「ありがとうございます! 行ってみます!」

「あ、そうだ、ボスまでの道のり結構長いから、ポーション奢ってあげる! 持ってけドロボー!」

「こんなに……! いいんですか?」

「先輩からの奢りだヨ〜」

「ありがとうございます!!」


フラウはそう告げて、大きな屋敷の方へと歩いて行く。

その後ろをマリンは手を振って見送った。


  マリンに教えられた通りに歩いていくと、石で出来た大きな門が見えてきた。

恐る恐るフラウが門をくぐると"ゴーン"と大きな鐘の音が響く。

その音に少し驚いていると、足元の魔法陣が作動する。


 魔法陣の光に包まれ、フラウが次に目を開けると、空は紫色の厚い雲に覆われ、土は乾燥しヒビが入っている、そんな閑散とした大地に立っていた。

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