第十三話 成敗!!
後日、お鈴と約束した店に二人はやって来ていた。
「うーん、やっぱり、気が重いよ〜……」
「まぁまぁ、今日は悪質プレーヤーを倒す計画だ! 話が逸れると面倒だから、イベントでのことはまだ黙っとこうぜ。気がかりなら全部終わってから話せばいいし」
「うーん……そうだね〜……」
二人はそんな会話をしつつ店の扉を開ける。
既にお鈴は席に着いており、ギルドの人達をどこかへ送り出していた。
「こんちは〜」
「ん? あぁ、来てくれてありがとう。早速で悪いが話を聞かせてくれないか?」
二人は席に着くなり、昨日襲われた場所とプレーヤーの見た目をお鈴に教える。
「うちのメンバーに聞いた目撃情報と酷似している。こいつらかもしれないな……」
「では早速」
「あぁ、向かうとしよう」
お鈴はそう言って立ち上がる。
その後ろにフラウとリリィも続いた。
〇
お鈴を加え、三人で"廃れた街"にやってくる。
襲われたあたりまで来た時、お鈴は何かの気配を察知した。
「くるぞ!」
お鈴の言葉と共にあらわれたのは、先日フラウとリリィを襲った"レバノン"のギルド名を名乗った五人だった。
「あいつらだ!!」
リリィはそう言って五人を睨みつける。
「おいおい、また来たのか? 懲りねぇ奴らだぜ」
「また俺たちの経験値になってくれるのか?」
「それとも、私達に恨みでも晴らしに来たのかしら?」
五人は口々にそう言うと小馬鹿にしたように笑った。
そして、ふとお鈴の姿をみてギョッとする。
「あ、あいつは輪ノ華会のお鈴……!?」
「まさか、お前ら輪ノ華会の……!」
「チッ!! 面倒なことになったぜ」
五人はお鈴を前にバツが悪そうに顔を歪めた。
「お前達は本当に"レバノン"の一員なのか?」
「は! 当然だろ!! 俺達にはあの"カナト"が付いてるんだ!! お前もタダじゃすまねぇぞ」
「ほぅ……そうか。カナトがお前達のボスだと?」
「だったら何だってんだ!! 痛い目見たくなかったらさっさと失せろ!!」
「なら、カナトに連絡でも取ってみるか。こちらとしてもレバノンと争う気は毛頭ないのでな」
そう言ったお鈴は、リアリティでプレーヤー同士が連絡を取り合うために作られた"アドレス画面"を開く。
そこには"カナト"の名前が表記されており、その他にも"ライラ"や"グリズリー"と言った有名なプレーヤーの名前が並んでいた。
「さすがお鈴さんだよな」
「リリィ知ってるの?」
「ふふふ、当然だろ! 前回のイベントは動画サイトでも流れてたんだ」
「そうなんだ〜」
「そう言えば、チラッとだがフラウも映ってたような……?」
「え! そうなの? 全然知らなかった〜」
二人の呑気な会話を横目に、レバノンの一員だと主張する五人は冷や汗をかいていた。
お鈴そんな五人を逃がさないよう睨みつつ、カナトに電話をかけていた。
そして、呼出音の後"プツッ"と言う音と共に「どうした?」と不機嫌な声が聞こえた。
「おい、カナト。お前のギルドの一員だと言っている奴らが初心者狩りをしているが、一体どう言う教育をしているんだ? うちのメンバーも被害が出てる。どうにかしろ」
お鈴がそう訴えると、電話の向こうから「しらねぇよ」と声が響いた。
「お前から電話が来るなんて何事かと思ったら……うちにそんなつまんねぇことするプレーヤーはいねぇよ。そもそも、初心者を襲ったところで俺らの経験値の足しにもならねぇ」
「だが今目の前にいる五人はお前の後ろ盾があると言っているが?」
「はぁ? 俺はお前と違ってメンバーが困ってるからって動くような人間じゃねぇよ。そんな弱いやつに興味はない」
「フンッ、お前はそう言うやつだったな。わかった、じゃあな」
「ちょっとまて、まだ切るな。お鈴、今度俺と戦おーぜ。闘技場がオープンしたって話、聞いただろ?」
「……考えておく」
「チッつれねーやつ……とにかく、そいつらは好きにすればいい。お前なら勝てるだろ」
"ブチッ"と乱暴な音を立てて電話は途切れる。
お鈴は「はぁ〜」と深いため息を吐き出し、目の前の五人を見た。
「そういう事だ、お前達。くだらないことはやめるんだな」
お鈴の言葉に五人は冷や汗をかく。
「お、俺たちが何したって言うんだ!」
「たかがゲームでしょ!?」
「も、もういい! 輪ノ華会がなんだって言うんだ! やっちまえ!!」
「俺たちだって強くなったんだ!!」
自暴自棄になった五人は、掛け声と共に一斉にお鈴に飛びかかる。
しかし、お鈴は五人を簡単にねじ伏せ、倒してしまった。
残った二人が腰を抜かして逃げようと這いつくばったが、お鈴がそれを阻止する。
「いいか、今後姑息な真似をしてみろ。タダじゃ済まないからな。それに、何事においても近道なんてない。弱いものいじめなんて卑怯な真似はやめて、精々時間を使って努力しろ。ゲームは楽しんだ奴が強くなるんだからな」
お鈴がそう告げると二人は悔しそうに顔を歪めたが、言葉を発することは無かった。
〇
お鈴の活躍のお陰で、翌日から被害は激減した。
どうやら倒された五人は"ブラッドレイ"と言うギルドの一員だったようだ。
今まで初心者狩りを行っていたのもブラッドレイの仲間が大半だった。
フラウとリリィはまた、スタットの喫茶店で話をしていた。
内容は主に昨日のお鈴についてだ。
「凄いよな〜お鈴さん! あたしも強くなりたい!」
「そうだね〜私もがんばろーって思ったよ〜」
「じゃあさ、今度のイベントであたしらも上位を目指そうぜ! そしたらさ、ギルドなんて作っちゃってさ」
「いいねぇそれ〜! 名前はなんて名前にする?」
「うーん……また考えとくよ」
そんな会話をして二人は笑う。
そうしているうちに次のイベントの情報が飛び込んできた。
次のイベントはどうやらP v Pに決まったらしい。
詳細はまた近々発表されるらしい。




