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第十一話 雪洞と白熊

 雪山の洞窟は"雪洞(せつどう)"と呼ばれていた。


中にいるモンスターは雪山の表面に居るモンスターよりも少し強く、主に氷や雪の魔法を使うモンスターが多いので足を取られやすい。


「えいっ!! どりゃぁあ!」

「気合入ってるね〜」

「当然だろ! あたしも特別な装備とかスキルとか欲しいし! それに、思いっきり暴れられるの楽しぃー!」


自分より大きな身長の剣を振り回すリリィを見て、フラウは凄いなーと呟いていた。

そんなフラウはと言うと、リリィが戦いやすいよう援護に務めていた。


「"ポイズンボール"!」


フラウの言葉により、持っていた狼の頭が掘られた魔法の杖から、キラキラとエフェクトを発動した。

そしてモンスター目掛けて鉄砲のように紫の塊が発射される。

モンスターはそれが当たると、状態異常を表すエフェクトを纏い始めた。

モンスターのHPをじわじわと減らしていく中、リリィが大剣を使って切り伏せていく。

一人で戦っていた時より断然狩の効率は高かった。


  二人が奥へ奥へと進んでいくと、大きな雪玉が転がるエリアが現れた。

雪玉は速かったり、遅かったりと、転がるスピードは疎らである。


「どーする?」

「どっかに出口が……」


ふと天井を見上げると上に抜ける穴を見つけた。

リリィはそれを指でフラウに教える。


「あれだ! でもどうやって……」

「私に任せて!」


抜け穴を捉えたフラウは、そう言って狼の姿になる。

リリィに背中にまたがるようにと指示を出したあと"グロウボディ"と唱えると、フラウの体は天井まで届くほど大きくなった。


「届いた?」

「うわわわ!! ……っておぉ!! やっぱり、道があるぞ!! 横に続いてる!!」

「やった!!」

「よしよし、登ったぞ! フラウは登れるか?」

「大丈夫〜! 狼の姿のままジャンプすると届くと思う!」


フラウはそう言って流れてくる雪玉を足場にジャンプした。


 なんとか二人とも天井の穴に入ることが出来た。

すると、眼前に大きな門が現れた。


「これが最後の部屋なんじゃないか?」

「絶対そうだよ〜! 私がこのスキル手に入れた時もこんな感じの扉だったし」

「よっしゃー!! じゃあ早速ボスの顔を拝んでやろーぜ!!」


勢いよくリリィが扉を開く。

扉は二人を迎え入れ大きく口を開いたように感じられた。


 〇


  二人が見つけたこの雪洞のボスはどこからどう見ても真っ白な熊の姿をしていた。

しかし、その身長は高層ビルほど大きい。

ひとまず二人は石の壁に隠れ、顔だけを覗かせていた。


「こ、こんなのに敵うかな……」

「あれ、リリィさっきまでの勢いはどうしたのさ」

「む、なんだその顔は!! 怖くなんかないぞ! あれはくまさんだ!」

「んふふ、リリィも怖いものがあるんだね〜」


フラウは得意気に笑うと、リリィは「うるさいぞ!」と顔を少し赤くする。


「でも、私も狼を見た時怖かったなぁ〜あの黒い狼もこのぐらいおっきかったんだよ! 私もなれるかなぁ?」

「お前、もう十分でかくなれるだろ」

「グロウボディでもここまで大きくないからなぁ〜」

「そうかなあ? 同じぐらいだと思うけど」


無駄話をしつつ、二人は注意深く白熊を観察する。

白熊はウロウロする訳でもなく、鼻をひくつかせて二人の気配を察知していた。


 暫く話した後、二人が意を決して白熊の前へ飛び出す。

白熊は二人を見つけるとすかさず睨みつけ、怒り狂ったように襲いかかってきた。


「フラウ! 頼んだぞ!」

「任せて! ファイアーボール!」


フラウがそう叫び、白熊に向けて火の玉を飛ばす。

白熊はその火の玉を顔で受け止め、少し狼狽えたがダメージは小さいようだった。


"グォオオオオ!"


白熊は足を止め、地鳴りする程の大きな声を響かせる。

二人はその声に小さな悲鳴を上げた。

白熊はそんな二人の隙をつき、大きな手で横に薙ぎ払った。

二人は壁際まで叩きつけられ、HPが三分の一程削られた。


「このままじゃ負けてしまう……!」

「どうしよう……あ、私がおっきくなって隙を作るからその間にリリィが攻撃し続けて!」

「大丈夫か?」

「大丈夫! 私はリリィよりレベルが高いから多少は踏ん張れるよ!!」


 フラウはそう言ってウルフメイクとグロウボディを使った。

白熊に負けないぐらい大きくなったフラウ。

そのまま白熊の肩口に噛み付いて動きを止めた。

リリィはそんなフラウに続いて昼間覚えた技を構える。


「"剣舞(けんぶ)"!! "ファイアーソード"!! "氷の剣(こおりのつるぎ)"!!」


 リリィは"剣舞(けんぶ)"のスキルにより、上昇した自身のスピードを使い、勢いをつけて"ファイアーソード"で炎を纏った大剣を叩きつける。

 そして、"氷の剣(こおりのつるぎ)"により魔術で生成した十個程の氷の(つぶて)を白熊に浴びせるように発射させた。


白熊はフラウが噛み付いていることにより、身動きが取れなかったため、真正面からその攻撃を受け止める。


白熊は咆哮を上げた。


「これならいける!!」


そう確信を持ったリリィとフラウは、一気に白熊を攻め立てた。


 そして、しばらくの攻防の後、白熊は電子となって雪に解けるように消えた。


「やったーー!!」

「何とか勝てたね!!」


フラウが狼の姿を解除し、リリィとハイタッチをして喜びに浸る。

そして、現れた宝箱の前に駆け寄り「せーの」で開いた。

二人のアイテムボックスにそれぞれの報酬が追加される。


「あ! なんか、新しいスキル覚えたぞ!!」

「どんなの?」

「えーっと"要塞ノ型(ようさいのかた)"だって、これを使うと一時的に防御が大幅アップするって! 便利そうだな」

「そんなスキルもあるんだ〜」

「あと"アイスソード"これは攻撃技だな。大剣が氷の剣になるんだってさ。ファイアーソードの氷バージョンみたいな感じかな」

「へぇー強そう!」


フラウはそう言って自分のスキルも確認する。


「私は"アイスバーン"と"アイスショット"だって! アイスバーンは氷結の状態異常を起こすみたいだよ」

「アイテムも見てみようぜ!」

「うん!」


そう言った二人は、早速貰ったアイテムをタップして装着してみる。


「えぇっと……なんだこれ」

「あれー? 白熊を倒した筈なのに、また狼の耳としっぽだよ?」


二人は目を見合せた。


 リリィは白熊のモチーフの可愛い帽子に、モコモコとした白いショートマント。そしてしっぽの着いた白いショートパンツだ。

アイテム名では"ホワイトベア"と表記されていた。


 フラウは何故か白い狼の耳としっぽで"スノーウルフ"と書かれている。

それらを装着すると髪の色が真っ白になるため、ちょっとしたイメージチェンジにもなるみたいだ。


「なんか可愛すぎないか? ちょっと恥ずかしいんだけど……」

「リリィ似合ってるよ! すごい可愛い! あ、見て! 加護付きだよこの装備」

「なになに……えーっと私は自身のステータス二倍アップと攻撃力五倍アップかな? 防御プラス三百もついてるから、品質はすこぶるいいぞ!」

「私のは状態異常に強くなるみたいだよ! 特に氷無効と炎無効って強いんじゃないかな?」

「いいな、それ!」


こうして二人は新しい装備を手に入れることが出来た。

リリィはしばらく手に入れた装備で過ごすらしい。

フラウは"スノーウルフ"を装備スロットに登録し、すぐに呼び出せるようにしておく。


 雪洞を攻略できた二人は、一旦ログアウトすることになった。

明日も学校があるからだ。

リリィが名残惜しそうにログアウトするのを、フラウは笑って見送った。

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