表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/64

第十話 山頂とその先

  雪山に着いた二人は真っ白な山道を踏み締めて感嘆の声を上げる。


山肌に生えた木々から垂れ下がる氷柱や、降り止まない雪。そして雪の結晶が薄い膜を貼る水面。


何もかもが幻想的で美しい光景だった。


「こんなに雪が積もってるのにぜーんぜん寒くないねー」

「ゲームだからなあ寒かったら進めねーし、モンスターどころじゃないんだろうな」


二人はそんな会話をしつつどんどん山の頂上をめざして歩く。


「ところでさーフラウの手に入れたスキルだけど、どんな感じなんだ?」

「スキル?」

「あれだよ、特殊スキルのウルフ何とか」

「ああ! ウルフメイクのこと? あ、そうだ! 私が狼になって、大きくなるから、リリィ乗ってみる? そしたらさ、すぐにてっぺんにたどり着くよ!」


フラウは思い出したように手を叩く。

そして、リリィとは少し離れた場所でスキルを発動させた。


「見ててねー! "ウルフメイク"! "グロウボディ"!!」


フラウが叫ぶと共に姿が狼のモンスターになる。

そして、グロウボディのスキルによってその体はどんどん大きくなり、山肌に見える大木と同じぐらいの大きさになった。


「う、うぉ〜……! 凄い!! でも、デカすぎだろ!!」

「このスキル、こんなに大きくなるんだ〜」

「の、脳内に直接……!?」

「あ、そうそう、狼だと人の言葉話せなくなるから"エスパー"のスキルで話しかけてるよ〜」

「つか、こんなデカかったら乗れないだろ。そもそも届かない」

「うーん……調整できないみたい〜」


ひとまず元の大きなに戻るフラウ。

元の大きさは人と同じ程度の大きさだ。

背中に乗せて走ることは出来るだろうが、安定感が無いため、リリィが何度かふらついた。

まだレベルも低いので落ちたら大怪我では済まないだろう。


結局、フラウは元の姿に戻り、二人は並んで歩くこととなった。


 〇


  雪山の頂上付近に到着した二人。

モンスターがチラチラと見えてきたため、早速パーティーを組んでレベルをあげようと意気込む。


雪山にいるモンスターは、雪だるまの形のものや、小動物風のものが多かった。


「状態異常・氷結ってどういう事だ?」

「あっ! リリィ足が……!!」

「うぉ!? 足が凍ってる! 動けねぇじゃん」

「これ! 状態異常に効くポーション!」

「ナイス! ありがとう!」


リリィはそう言ってポーションを使用した。

すぐに足の氷は溶けだしたが、その間にもモンスターからの追撃があったため、HPが少し減った。


「いたっ! もう!! 反撃だ! フラウは援護頼む!」

「任せて! スパーク!!」


フラウの魔法により麻痺するモンスター、そこにリリィの大剣が力任せに振り下ろされた。

さすが戦士の職である。モンスターは一撃で電子となって散り散りになった。


 そうこうしつつ、日が暮れるまで二人は雪山を散策した。


そして、陽が完全に沈んだ夜。

モンスターの凶暴性は昼間より少し上がる。


「夜のモンスターって苦手なんだ〜」

「向こうから来てくれるから、戦いやすくてちょうどいいだろ」

「そうかな〜? 追いかけられるから怖い」


フラウがそう言うと耳としっぽがへにゃと垂れる。


「そのアイテム面白いな! フラウの感情ダダ漏れ」

「うぅ〜……あんまり嬉しくないな〜」


 ムスッとするフラウ。

また耳としっぽが勝手に不機嫌に動くのでリリィに笑われた。


  二人が雪山を彷徨い続けていると、木々が少なくなり、道が開けてくる。

そして、現れたのは休憩できるスペースと売店が並ぶ少し賑わった広場だった。

他のプレーヤーの姿も疎らに現れ、各々好きなように過ごしていた。


「どうやらここが頂上らしいな」

「休憩しよ〜!」


二人はそう言って売店に立寄る。

そこには老婆がニコニコと微笑んで立っていた。

この老婆はNPCと言ってプレーヤーではない、コンピューターが作り出した人物だ。


「いらっしゃい、何が欲しいんだい?」


お決まりのセリフと微笑み首を傾げる姿は、まるで本当の人間のように見えた。

それを見た二人はそれぞれ「すごいな」と声が漏れる。


 そうして、二人は売店でうどんを手に入れた。

早速休憩スペースで試食してみたところ、本当に食べているかのような風味豊かな味わいが感じられた。


「不思議だね〜これってイメージなんだよね」

「そうだな。私たちの感覚を読み取った"リアティ"が味を感じさせるように働きかけているらしい。実際腹は膨れないが満足感はあるだろ」

「確かにいつもならお腹いっぱいになるけど、うどん食べ終わった後でもまだ食べられそう〜」


フラウはそう言って売店を眺めた。

しかし、リリィはそれを止めて何故か「ふっふっふっ」と不敵に笑いだした。


「急にどうしたの?」

「実はな、この山頂の奥にダンジョンがあるって情報を手に入れたんだ! 今日はそこのボスモンスターを倒してお宝を手に入れるつもりでやってきた!」

「そうだったの? てっきりただレベルを上げるだけだと思ってたよ」

「それは計画の第一段階、今あたしのレベルは十二になっている。ここのダンジョンは初心者向けらしいから、十分攻略できるはずだ!」


さらに、とリリィは続けた。


「フラウ、お前のレベルはいくつだ?」

「えぇーっとこの間のイベントでだいぶ強くなったからなぁ〜……あ、あった! 二十八だよ!」

「十分すぎるレベルだ! さて、行くか」

「うぇ!? もう?」

「ダラダラしてると置いてくぞー」

「待ってよ〜!!」


不敵な様子のリリィに慌ててフラウはついて行く。


  山の奥地、先程の賑わいもとっくになくなり、モンスターの蠢くフィールドの中央に、木々に囲まれたダンジョンが現れた。


二人は気合いを入れ直し、そのスタート地点である魔法陣に乗り込む。


足元が輝き、光が体を覆い始め、そして目を開くと、一面の氷で覆われた洞窟の狭い道へ降り立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ