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第九話 新たなスキルと目的地

  キーンコーン

  カーンコーン


 放課後の合図が校舎に鳴り響く。


「でね〜……すんごい怖かったんだよ〜…」

「へぇー上位プレーヤーかー…私も戦ってみたいな〜!」

「絶対かないっこないって!」

「あ、そうそう、私もやっとゲーム解禁なんだ! 今日早速やって見るつもり!」

「え! そうなの? やった! じゃあスタットの噴水前に居るから、ログインしたら来てみてね!!」

「うん! 楽しみだな!!」


二人はそう約束を交わし帰宅準備を始める。


今日は掃除当番でもないため、香瑠(かおる)は真っ直ぐ家に向かう予定だが、友理彩(ゆりあ)は生徒会長としての役目もあり帰宅時間が少し遅れる。


「ふんふんふん〜〜 楽しみ〜! あ、そうだ! 綺麗な場所とか見つけて連れて行ってあげよっと!!」


香瑠(かおる)は独自のテンポの鼻歌を調子外れに鳴らしていた。

ルンルンと誰が見てもご機嫌な様子だ。


  友理彩(ゆりあ)とは高校に入ってからの友人だった。

まだ高校に入って間も無い時、友人を作ろうと積極的な同級生が動いていた中、香瑠(かおる)はのんびりした性格もあり出遅れていた。

結果的に一人になって焦っていた香瑠(かおる)に声をかけてくれたのが友理彩(ゆりあ)だった。


それ以来昼食を共にしたり、仲良くすごしていた。

高校二年生になった時も同じクラスになり、香瑠(かおる)は安心したのを覚えている。


 友理彩(ゆりあ)は調子の良い性格で、クラスでも面白いとよく言われている。

また、性格とは裏腹に成績優秀で何かと頼りになる存在だ。

故に友人も多く、高校二年生になってからは生徒会長の役職にも立候補して忙しく過ごしていた。


 〇


  スタットの噴水前、フラウとなった香瑠(かおる)友理彩(ゆりあ)を待っていた。

友理彩(ゆりあ)はまだ来ていない。

友理彩(ゆりあ)が居ない間に、前日までのイベントで手に入れた四万枚のコインを使って何と交換しようかと考えていた。


「このスキルも手に入れれるけど、こっちも捨て難いなあ」


フラウは持ち前の優柔不断さを発揮し、数分たった今でも決めかねている。


「うーん…あ! これとか面白そう!!」


フラウはそう言って表示したのは"グロウボディ"と言うスキルだった。


「体が大きくなります……これってどこまで大きくなるのかな? 今狼だと人と同じぐらいの身長だから、もっとおっきくなるってこと? 」


スキル"グロウボディ"はフラウの持っているコイン二万枚分で購入できる。


このスキルはただ単に体が大きくなるだけで、攻撃力や防御力が上がるものでもない。

ただ単に体が大きくなるということなので、通常の戦闘などには不向きであるとされていた。

使い所のあまりなさそうな、所詮ネタスキルというものだが、好奇心からそれを選択したフラウ。


 そして、残りの半分のコインでスキル"エスパー"を手に入れた。


このスキルは自分の攻撃力より弱いプレーヤーやモンスターを浮かせる"浮遊"も着いているが、他にも、会話をしなくても、特定の人物にのみ直接語りかけることが出来るちょっと一風変わった能力でもある。

因みに"浮遊"と"会話"は同時に使用することは不可とされている。


また、エスパーのスキル自体はそこまで珍しくもなく、ただ、イベントに参加しないと手に入れられないスキルであった。


「これがあれば狼になっても他の人に意思表示できるかも!」


 そうして、新たに二つのスキルを手に入れたフラウは、改めて友理彩(ゆりあ)を探そうと周りを見渡す。

すると、それらしき人物が近くに立っていた。

ただ、電子掲示板を操作しているため顔がはっきりと見えない。

フラウが確かめようと顔を覗き込むと、やはり友理彩(ゆりあ)だった。

友理彩(ゆりあ)は驚いたように目を見張ったが、香瑠(かおる)と認識すると嬉しそうに笑った。


「ゆりちゃん隣にいたのに気づかなかったよ〜!」

「あたしも! でも会えて良かった〜! 一人だとどこ行ったらいいかわかんなくてさ、今丁度掲示板見てたところ」


そう言った友理彩(ゆりあ)の背中には、大きな剣を背負っていた。

やはり予想通り職業は"戦士"にしたのだろう。


香瑠(かおる)はフラウって名前にしたんだな! 私はリリィ!」

「リリィ! わかった! じゃあゲームの中ではそう呼ぶね!」

「とか言って、フラウは抜けてるところあるかなぁ〜…間違ってリアルの名前で呼ぶんじゃないぞ〜?」

「えぇ〜? 私そこまで抜けてるかなあ?」

「さ〜ど〜だか! まぁ改めてよろしくな、フラウ!」

「うん! よろしくゆりっ……じゃなくてリリィ!」

「言わんこっちゃねぇーなーははは!」


友理彩(ゆりあ)改めリリィはそう言って上機嫌に笑った。


「やっとログインできたから色々見て回りたいんだー! ところでフラウ、それが言ってた装備? なんて言うか、わんこって感じ。可愛いな」

「でしょ? でもちょっと恥ずかしいんだ〜」

「いいんじゃない? フラウっぽいし」

「そうかな〜?」

「あたしも装備欲しいし、早速レベル上げに行こうかな。フラウは付き合ってくれるか?」

「うん! 一緒に行こ!」


フラウは「まかせて!」と言って先陣を切って歩き出す。

向かう先は東門の丘だ。

普段教えられてばかりなので、リリィをリードしたくてうずうずしていたのだ。


東門から出てすぐの丘は初心者にはうってつけだとオルトが教えてくれていた。

さらに、あれから自分でも調べてみると東門ともう一つ、東門から出て、少し丘を歩いた先にある"雪山"も初心者でも攻略できて、かつ、経験値が豊富なモンスターが存在していると知った。


 リリィにその事について提案すると、特に反対はなかったため、目的地は"雪山"の"山頂"と意見が一致した。

二人はそうして東門の丘を歩き始めた。

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