プロローグ
『ログイン』
『生体認証を始めます』
『あなたの情報をスキャンしています』
『同期完了』
『仮想アバターは気に入りましたか?』
『続けるならはいを、やり直すのであればいいえを選択してください』
ーーようこそ、ここはオープンワールド型ゲーム"リアティ"。貴方はここでもう1つの人生を体験するーー。
"フォン"と電子音を立てて目の前に並ぶ半透明の武器。
それらは、基本的な職業である戦士、魔術師、聖職者、生産者、テイマーと名前が書かれていた。
そして、それらに取り囲まれ、狼狽える少女はゲームを趣味にしている女子高生・林道 香瑠。
香瑠は幼い頃からゲームは好きだったが、ゲーマーという訳でもなく、気軽に遊ぶタイプの人間だった。
「どれにしようかな……」
指で空中を撫でると、職業一覧はクルクルと回る。
優柔不断な香瑠は先程からそれを繰り返し行っていた。
"リアティ"ーーそれはゲーム業界に革命をもたらしたとされる近未来的機械である。
手持ちの、インターネットが繋がる機器を媒体に、サングラスとイヤホンが一体化したような機械を繋げると、データーを読み込み、生体認証により、まるで機械の中に入ったかのように手足共々、そっくりそのまま電子世界に放り込まれる感覚を体験出来るゲームだ。
バーチャルリアリティの最先端だと今話題のゲームである。
ゲームの中では、ゲーム内時間というものが流れており、現実より少し早く時が経つのが特徴だった。
ただ、プレーヤーとなりその空間で過ごす分には違和感がなく、人体にも全く問題ないとされていた。
その中ではプレーヤーはもう一つの人生を託される。
それは、自分で切り拓くものであり、一本道の物語がない。
つまり、プレーヤーの思うままに過ごし物語を作ることが出来るのだ。
香瑠は友達の斎藤 友理彩に誘われて購入した。
元々興味があったというのもある。ただ、友理彩はまだゲームが届いてないと聞いている。
香瑠は友理彩を待とうと思ったのだが、先に始めていいと言われたため現在に至る。
「やっぱり魔術師? 前で戦うのは怖いし……あ、でも魔術師って体力が少なそうだなあ……友理彩はきっと戦士とかだよね〜」
香瑠はそう言ってうーんと頭を捻る。そして、ふとあることを思い出した。
「あ、そっか、基本職はこの五種類って言ってたけど後で進化とかスキルとか振り分けて職業がパワーアップすることもあるんだった。そこから何百、何千って道が別れるらしいから、魔術師でも体力のある魔導騎士とかになれるのかな」
いいことを思い出したと香瑠は小躍りする。
「だったら魔術師で!! これで友理彩のサポートもできるし、パーティー組んだ時のバランスも良くなるよね!!」
香瑠はそう言って魔術師のマークに触れる。
すると機械が再び"フォン"と音を立てて次の画面に誘導した。
そして、とうとう香瑠はバーチャルワールドに足を踏み入れたのだった。