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1-2 エレノアとの遭遇

午前の授業が終わった。時には殿下やサイアス様たちとお昼ご飯を食べたりすることもあるけれど、昨日にあんなことがあったからか、今日は殿下がお休みだった。そこで、オリヴィアと二人でご飯を食べることにし、学食へと向かおうとした時、エレノア様が廊下で立ちすくんでいるのが見えた。その視線の先では、他のクラスの生徒達が数人で立ち話をしていた。


「ねえ、昨日のパーティーのことどう思う? そうそう、あれのこと。私びっくりしたわ、まさかラザフォード公爵令嬢がリリアをいじめていたなんてね。身分もこれ以上ない位に高いのに、嫉妬に狂うなんて、どんな人なのかしら。ねぇどう思う?」


どうやら彼女たちには話題の中心であるエレノア様の存在が全く見えていないみたいだ。私達が学食へと行くにはどうしても彼女たちの目の前を通りすぎなくてはならない。エレノア様は可哀そうだと思ったが、基本的に面倒事には関りたくない主義なので、気付かないふりをして通り過ぎようとする。


「あっ、噂をすればリリアじゃない。ねえ、リリア。」


見つかってしまった。彼女たちに手招きされてしまい行かざるを得ない空気になった。渋々、どうしたの? とそちらへ向かうと、彼女たちは生き生きとした目を向けて尋ねてきた。


「リリアは昨日のことどう思っているの? あの人があんなひどい人ってこと、知らなかったわ。王太子様達に責められたって、自分のやったこと否定していたじゃない。リリア、あんな相手に嫌がらせされていたなんて、大変だったわね。」


「えっ、そんなことないよ。」


「リリアも昨日体調崩しちゃったみたいな事を聞いたよ。無理しなくていいのに。やっぱりラザフォード公爵令嬢のせいで心労が溜まっていたとか?」


軽く流すだけでは全く通じそうにないどころか、エスカレートしていきそうな気がする。彼女たちは平和な学園生活で突然起こった高位貴族の一大スキャンダルに心奪われているのだ。これは、ダメもとできちんと説明するほかない。


「エレノア様が嫌がらせしていたっていうのは誤解なの。彼女は全く何もなさっていないわ。彼女なことを悪く言わないで。」


まさか私がエレノア様を庇うようなことを言うとは予想外だったのか、みんな驚いたように口を開けていた。少し離れたところにいたオリヴィアまでもが驚いているのを感じた。しばらくの間、沈黙が続いた。驚きから立ち直ったオリヴィアはこちらに近づいてくると、見かねたように口を開いた。


「あそこにラザフォード公爵令嬢、いらっしゃるわよ。」


口をあんぐりと開けたまま振り返り、エレノア様の姿を認めると、彼女たちは一目散に逃げて行った。


「お騒がせしました。」


こちらを茫然と見つめているエレノア様に気付いたオリヴィアがそう言うと、私の手をひいて足早にこの場を去ろうとした。私はオリヴィアに、ちょっと待っててと声をかけると、エレノア様の方へと駆け寄った。


「リリアさん。どうされたのです?」


エレノア様は私がなぜ戻ってきたのか全くわからないといった様子で、お尋ねになった。私は勇気を振り絞ってエレノア様に声をかけた。


「その、昨日のことは本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。エレノア様は何も悪くないって知っているのに、全部エレノア様のせいになってしまって…。私エレノア様ともっと仲良くなりたいです!」


「…それはどういうこと? 昨日、殿下がパーティーの時におっしゃったことを気にしてくれているの? もう気にしていないわ。ありがとう。」


エレノア様は微笑んだ。全く心を開いてくれそうにない。エレノア様と仲良くなれたら、悲惨な死から遠ざかりそうな気がするのだけれど、これもなかなか難しそうだ。どうしたものか。そうだ、お昼に誘ってみよう。


「エレノア様、もしこの後ご予定が無ければ、お昼ご一緒しませんか?」


後ろでオリヴィアがビクッと肩を震わせた。エレノア様は目を丸くして私の眼をまじまじと見つめていた。


「ごめんなさいね。今日は用事があって。また今度ぜひ。」


そう言うとエレノア様は踵を返し、足早に去って行かれた。完全に警戒されている。いったいどうしたらエレノア様と仲良くなれるのだろうか。それはかなり険しい道のりであるように感じた。


「今のは何だったの、リリア。ラザフォード公爵令嬢をご飯に誘うってどういうつもりなの?」


オリヴィアは混乱が伝わってきた。


「皆、エレノア様が悪いって思っているみたいだからその誤解を解きたいなって思ったの。それには仲良くするのが一番かなと思って。でも仲良くしてもらえなさそうだったね…」


オリヴィアは心底呆れた様子で大きくため息をついた。


「こればかりはラザフォード公爵令嬢の気持ちが痛いほどにわかるわ。昨日までほぼ敵対状態に近かった相手にいきなり仲良くなりたいって言われたら、誰でも警戒するでしょ。昨日までのリリアもそう思っていたと思うけど、ラザフォード公爵令嬢にとっても避けたい相手だと思うよ。仲良くなるにしてももう少しやり方があるんじゃないかしら。とりあえず、放課後、絶対に何があったかたっぷりと聞かせてもらうからね。」


次の授業の時間も迫っていたので、二人で急いで学食へと向かい、お昼ご飯を食べた。オリヴィアは以降はそれ以上深くは聞いてこなかったので、とてもありがたかった。少し情報の整理が必要だ。さっきの行いで逆に事態を悪化させてしまったのではと気が気でない。放課後、いったいどのように説明したらいいのだろう。そしてこれから先どうしようかと、ぼんやりしながら考えていた。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


リリアは、憑依のような形の転生ではないので基本的に性格は変わっていません

なので、前世の記憶が戻っても、常識が無いところや空気が読めないところはそのままです(多少改善された部分もありますが)


続きが気になったり、面白いと思っていただけたりしたら嬉しいです。


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