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1-9 思いもよらぬ



「リリア、ここ最近ずっと何を探しているの?」


「このペンダントについていたペンダントトップが外れてしまっていたみたいなの。お母さんの形見のものだから、絶対に無くしたくないのだけれど、全然見つけられなくて…。もし見かけたら教えて。学園内の心当たりのある場所はここ数日で全部見てみたはずなのだけれど、寮にも学園内にもどこにもなくて…。」


結局、気付いた日から毎日いろいろな所を探していたけれど、全然見つからなかった。オリヴィアにはこれ以上迷惑をかけたくなくて、今までは言っていなかったけれど、流石にもう一人で探すのには限界がある。オリヴィアも協力してくれるというので、お願いすることにした。


「いったい何時から見つからないわけ?」


「気付いたのは数日前だから、無くなったのはそれより前かな…。最後にちゃんと確認したのは、あのパーティーの日だったから、その間に無くしたのだと思う。」


「学園内を本当に全部見たのなら、期間的には街に行った時に落とした可能性もあるってことかしら?」


そうだ、街にいった時に落とした可能性をすっかり忘れていた。学園内を探すことばかりに夢中になっていたが、言われてみれば街で落とした可能性が一番高い気がする。あの日は喫茶店でオリヴィアと話し込んだり、破落戸に襲われたりと色々あったから、どこかで落としていても気付かなかったかもしれない。だが、仮に街中で落としていたとして、果たして見つかるのだろうか。


「とりあえず、見に行ってみようよ。見つかるかもしれないじゃん。」


という訳で、あの日行った道筋を二人で辿ってみることにした。学園を出て、乗合馬車に乗り街の中心部まで向かう。停留所で降りて前に通った道を歩きながら、喫茶店まで行った。喫茶店の店員さんに落とし物が無かったかどうか尋ねたが、見かけなかったと言われ、少しだけ落胆して外に出ようとすると、誰かに呼び止められた。


「リリアさんにオリヴィアさん。こんな所でお会いするとは奇遇ですね。」


声をした方を見るとエレノア様が喫茶店に入ってこようとしていた。視線を感じてエレノア様の隣を見ると、彼女の侍女だったはずの少女が私の方を大層睨みつけていた。どうやら、かなり敵視されているようだ。無理もない、つい最近までエレノア様に酷い言いがかりをつけていた相手だったわけだから。


「今何をなさっているのですか?」


エレノア様にそう尋ねられたので、探し物をしていることを告げた。


「では、私も暇だからご一緒させてもらおうかしら。」


傍らの侍女がぎょっとしたのが伝わってきた。私達も驚いてしまって、何も言えなかった。


「だって、リリアさんとお話ししたいって思っていたのに、全然うまく予定が合わなかったから。丁度良いと思わない?」


侍女は必死で首を横に振っていたが、エレノア様が、ねえ、マリー? と彼女に微笑みかけると、お嬢様がそうおっしゃるのでしたらと頷いていた。


「では、そうと決まれば行きましょう。」


マリー、先に帰っていてもらっても良いかしら? と、有無を言わせない雰囲気で侍女に再度笑いかける。マリーと呼ばれた侍女は何か言いたげだったが、諦めた様子で、承知しました。と言って渋々去っていった。


「これで大丈夫よ。彼女は私のことを心配し過ぎる節があるの。それは嬉しいことなのだけれど、リリアさんにも何かと嫌な思いをさせちゃうかもしれないから、ね。これでゆっくりと話せるわ。」


エレノア様はそう言うと、微笑みを浮かべた。吊り上がった眼が和らいで、とても美しい。流石、小説の主人公だ。私みたいな見せかけだけの可愛さでは到底かなわないオーラみたいなものがある。せっかくだからと三人でお茶する流れになった。席につくと、エレノア様が尋ねた。


「私がリリアさんを脅して言う事を聞かせているって言われているらしいのだけれど、リリアさんに何かそう思わせるようなことはあったのかなと思って。あまりにリリアさんの様子が違うから。王太子殿下もそのようにおっしゃっているみたいなの。」


殿下やサイアス様はあれ以来近寄りがたい雰囲気だから、全然お話していないし、あの時の態度の変わりようが怖くてあまり積極的にお話したいとも思わない。美しい所作で紅茶を飲むエレノア様に見とれていると、エレノア様がカップをそっと置いて再度口を開いた。


「なぜ、突然に私が犯人じゃないって言ってくれているのか不思議なの。王太子殿下にも反論したって聞いたときは、本当に驚いたの。」


「ええっと、あのパーティーの後、今まで勘違いしていたって気づいたんです。本当に今まではご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした…。」


「ただどうしてなのか気になっただけだから謝らなくて良いわよ。最近のリリアさんを見ている限り、本心でそう考えていると思うから、疑っているわけでもないわ。」


「私も何でリリアがそこまで変わったのかはよくわからないんですけれど、嘘をついたりはしてないって私からも保証します。」


オリヴィアがそう言ってくれた。ありがとう、オリヴィア。そう言って私はエレノア様に再度向き直る。


「今までのことは本当に申し訳ありませんでした。これからはエレノア様のためにできることがあれば、何でもします!」


「ありがとう。過去のことはもう気にしなくていいわ。仲良くしましょう。」


やった。エレノア様と仲良くなる作戦は成功したのでは。ありがとうございますっ! 思わず弾んだ声が出てしまう。そんな私をニコニコしながら眺めていたエレノア様は、はっと思い出したように言う。


「そういやリリアさんの探し物は見つかったのかしら。」


すっかり忘れてしまっていたが、今日街に来た目的はエレノア様に会うことではなく、無くしたペンダントを探すことだった。まだ見つかっていませんと答えると、エレノア様は首を傾け、こう言った。


「宝石屋は行ってみた? あそこはアクセサリーの買い取りもしているみたいだから、もしかしたらあるのじゃないかと思ったのだけれど。」


オリヴィアもそうですね、確かにあるかもしれませんと同意する。じゃあ早速行きましょうとエレノア様が言い、三人で喫茶店を後にした。


まさかこのメンバーで街を歩くとは思ってもいなかった。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


続きが気になったり、面白いと思っていただけたりしたら嬉しいです。


私用のため、9月いっぱいは月金更新に変えたいと思います。


ペースがゆっくりになってしまい申し訳ありません。


感想や評価等作者の励みになります。もし良ければ、よろしくお願いします。


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