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1-7 放課後2

まだ状況を理解できずに固まったままの私に、ディオン様がそっと声をかけた。


「リリア様、さっきの話は本当なのですか?」


「ええ、本当なんです。今までは勘違いでエレノア様のせいにしていたけれど、それは間違っていたって気付いたんです。でも、今更訂正しても、誰も聞いてくれなさそうなのですが、沢山皆に迷惑をかけちゃったことを謝りたくて…」


突然、開いたままのドアからひょっこりとオレンジの頭が覗いた。


「あら、まだここにいたのね。さっき殿下達が出て行ったって管理人の人から聞いたから、もう帰っちゃったのかしらと思って探していたの。」


私の声はオリヴィアの明るくて大きな声に遮られてしまった。話ながら部屋を見渡したオリヴィアはディオン様の姿を視界に認めると、慌てたようだった。


「あら、リリア以外に人がいるって知らなかったわ…。私、外へ出た方がいいのかしら。」

「大丈夫ですよ。それより、オリヴィア様にも聞きたいことがあるのですが。」


オリヴィアはどうやら自分に話を振られると思っていなかったみたいで、困惑気味に、ええ、何でもどうぞと答えた。


「では、リリア様に対する嫌がらせの件はオリヴィア様もご存じで?」

「知っていますけど…」

「犯人がエレノア様ではないというのは?」

「昨日聞きました。」


二人から同時に視線を向けられる。どうやら二人して私に何か言えと訴えているようだ。


「エレノア様が嫌がらせの犯人だっていうのは全くの誤解で。だからそれでエレノア様が責められるのが申し訳なくなってきたのです。」


「では、先日の殿下の婚約破棄騒動も間違いであったということですか?」


「あの時告げられたエレノア様の罪状に関しては全くの無実だと思います。」


ディオン様が頭を抱えている。オリヴィアも苦笑いしている。


「先程、この話になった時に殿下はかなり怒って出ていってしまわれたんです。あの調子では、殿下達はとうていリリア様の話を聞き入れてくださりそうにはありませんね。ましてやラザフォード公爵令嬢があっていて、自分が間違っていたということは絶対にお認めにはならないでしょう。」


全くの正論だ。もはやあの婚約破棄騒動を無かったことにするには遅すぎる。私が今更エレノア様の無実を訴えれば、それは殿下やサイアス様の判断が誤っていたと言いふらしているのと同義になってしまうのだ。今の今まで事態の深刻さに気付いていなかった。


「真犯人を見つけ出すことができれば、殿下達も少しは聞く耳を持ってくださらないかしら。」


オリヴィアが独り言のように呟いた。ディオン様がうーんと唸っている。


「聞く耳を持って下さるかは未知数ですが…。リリア様にこれ以上の被害をもたらさないためにも、真犯人は探した方が良いという意見には賛成です。」


オリヴィアがうんうんと頷く。ディオン様は話を続けた。


「エレノア様が犯人だと今までずっと決めつけていた自分にも責任がありますから、もしお力になれることがあれば、何でも言ってください。」


どうやら、私への嫌がらせの犯人捜しにディオン様も加わってくださるようだ。とりあえず、一人でも仲間が増えて良かった。ディオン様は、騎士練習生だから強そうだし、大変心強い。


「ありがとうございます! また何かあったら言います。」


今までどのような被害にあったかとか、誰が犯人としてありえるか等を三人で暫く話し合った。それで、気付いたら殿下達が出て行った後から大分時間が経過していた。そろそろお開きにしようかということになり、ありがとうございましたとディオン様に告げて、オリヴィアと共に出て行こうとすると、ディオン様に呼び止められた。


「オリヴィア様ともう少しお話ししたいことがあるのですが、お時間はよろしいですか?」


どうやら二人で話し合いたいことがあるみたい。対策でも考えてくれるのだろうか。本当に二人には頭が上がらない。


じゃあ私、先に帰っておくねとオリヴィアに告げて、私は談話室を後にした。それにしても、前世の記憶を取り戻してからまだたったの2日しか経っていないというのに、もう既にオリヴィアとディオン様というとても頼もしい協力者が二人もできてしまった。これってかなり順調なのではないだろうか。ライノルト殿下の怒りをかなり買ってしまっていることとか、不安な要素は色々ある上、まだ解決できていない問題も多数存在するけれど、あの二人に任せておけば少なくとも私への嫌がらせの問題は解決しそうな気がする。そして、その問題が解決すればエレノア様がリリアを害そうとしたとかいう犯人として罰せられることもなくなるだろう。結果として、彼女が追放される可能性も大分低くなるはずだ。エレノア様が幸せなままなら、あの小説のストーリーは成り立たなくなるはずだから、私がざまぁされて悲惨な死を迎えることも無い。私、なかなかやるじゃないか。スキップしだしそうなくらいに明るい気持ちで寮へと帰って行った。



…私の読みが甘すぎたということに気付くのは、もう少し後のことだった。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


続きが気になったり、面白いと思っていただけたりしたら嬉しいです。


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