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004

お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m

 時間の経過は早いもので、俺ももう30代である。

 こうも早く前世の年齢を超えてしまうとは思わなかったが、前世では何も全力で取り組む事も無ければやる気の欠片もなくただめんどくさいが為に生きていた人生だったので今世の方が短く感じるのは当たり前なのかもしれない。

 振り返ってみるととてつもなく充実していたように感じるのでやっぱり俺のやっている事は間違いでは無いのだろう。



「神様、今度の会議でもう少し家畜の数を増やすって事が決まりそうなのですが大丈夫ですか?」

「ん? 別にいいんじゃないか? 

 ただ記録付けと管理だけはしっかりとしておけよ」

「はい! あ、後解毒魔法の件ですが即効性の毒以外は完全に治癒できる事が確認できましたよ!」

「よし! でかしたノイン!」



 ノインももうそれなりに成長して、今ではすっかり俺の弟子というか付き人のような形になっている。

 第一使徒の座は多分ジェトが老いて辞めるまでそのままだと思うのでそろそろ第二使徒とか教皇とか、聖女とか言う位を制定してもいいのかもしれない。

 なんか俺を崇める人々が勝手に一日の始まりと終わり、つまり朝起きた時と夜寝る前の二回に神殿の方向に向かって三回拝礼をするとか言う謎の宗教的文化を始めたので国の運営とは別にそっち系の聖典を纏めたりするのも必要だろう。

 というか朝と夜の礼拝って誰が始めたんだよほんとに……。



 ちなみにこの拝礼は朝夜謝礼と言って朝は今日一日を無駄にすることなく生きるので何事もなく過ごせるようにと祈り、夜は今日一日を平穏に生きられた事を俺に感謝しているらしい。

 他にある宗教的な儀式の一つに食前謝礼という物があるが、これは俺が広めた文化だ。

 つまり「頂きます」と「ご馳走様」なのだが俺がついうっかりやってしまったせいであっという間に広まった。

 まあ、悪い文化じゃあ無いので別にこういうのは良いんだが……。



 宗教のこういう儀礼って誰か一人が初めて、あっそれいいなって思った誰かが便乗して行ってを繰り返して広まっていくケースが多いという事を身をもって体験した。

 なるべく早い内にしっかりとした聖典とかそう言うのを配備しておかないとそのうち生贄の文化や食べてはいけない食べ物とかも出てきそうな気がするのでこれは近日中に対処する予定だ。

 あんな戒律とかクソ喰らえである。

 教義には「絶対に他人に迷惑を掛けない範囲で自由に、ルールと契約以外の何かに縛られることなく生きろ」とか書き込んでやるぜ。



 教義を簡単にして10項くらいに纏めて教会みたいな物を作って配布してみようかな? 

 教会と言っても最初は病院も兼ね備えた施設にしようと思っているんだがな。

 神と言えば治療のイメージって結構多いし、病に苦しんでいる人ほど信仰心が厚くなる傾向ってありそうだよなって事で実益を兼ね備えた病院というわけだ。

 え? 何故信仰心を集めようとしているのかって? 



 話すと少々長くなるんだがこの世界には魂のネットワークのような物が存在するらしい。

 で、祈るという行為を本気でやるとこの魂のネットワークを通して俺の所に魔力や魂と言った物を流し込む事ができるみたいだ。

 つまり、俺は間接的にこの国の人々の力使ってあんなバカバカしい力を発揮していたらしい。



 他にも死んだら魂を神に捧げるとか思ってる奴が死んだ時にその魂を無意識のうちに吸収していたりしたみたいだ。

 ちなみにそういう奴は一定数所か、この国の国民のほぼ全ての人が死んだら魂を神に捧げるとか思っているせいでもう誰かが亡くなると勝手に俺の魂は常時膨れていくという訳だ。

 一応受け取り拒否もできるようなのだが勿体ないし、神に魂を捧げるとか言っている本人にも悪いので遠慮なく吸収させて頂いている。



 これで受け取った魂をこの世界に転生させるとか元の身体に戻すとか出来ればその時点で不死の完成だったのだが、残念な事に俺が受け取ってしまった時点でその魂は完全に俺のものに変化するのでこの魂のネットワークを使って人間を蘇生する事は不可能と言うわけだ。

 俺が魂を吸収するのは俺の事を信仰している人が死亡して約7日が経過するか、そばに居る誰かが俺の許へ行けるようにとか祈った瞬間に起こるようだ。

 ならばそれまでの間でならワンチャン蘇生ができるのではないかと思って色々と試してみたのだが、無理やり死体に魂を押し込んでもアンデッドのような穢れて壊れた冒涜的な存在になるだけで何も解決する事はなかった。



 狂って、自分の事もろくに分からず、ただひたすらに苦しみ続ける存在。

 恐ろしいというか、怖かったというよりも何か冒涜的に感じた。

 目も見えず、耳も聞こえず、じたばたとするくらいしかできない上に、自分の事もろくに分からず、記憶もろくに覚えてないのに、苦しんで、苦しんで、「助けてウロ様」なんて言うんだぜ? 

 あれはダメだ。



 あんな方法でアンデッドを作るなんて例え神であってもやっていい事じゃない。

 完全に死亡し、魂が肉体から剥がれ落ちた死者はどう足掻こうが蘇る事は無い。

 逆に言えば死んでから魂が肉体から剥がれ落ちるまでの約20時間程度であれば「極限まで生者に近いアンデッド」を作ることができる。



 この極限まで生者に近いアンデッドというのは魂を消耗させながら、魔力を使って動く生きた死体のようなものだ。

 時間とともに刻一刻と魂が削れていき、やがて全ての記憶と全ての感覚を失って完全に消滅する。

 それに魔力が無くなればその時点で肉体から剥がれ落ちるのでどうにかして魔力を得る必要がある。

 こんなものを生きているとは呼べないし、まさに生ける屍(アンデッド)というのが正しいだろう。



 これに人間の血や体液を吸って魔力を蓄える機能をつければ物語に出てくる吸血鬼の出来上がりという訳だ。

 物語に出てくるように真祖とかはいないし、太陽の下でも十分平気だしで吸血鬼と言えるのかどうかは分からないし、結局魂はすり減っていくので吸血鬼と言って良いのかどうかは分からないのだが……。



 それと、死んでから2時間程度の時間であれば死者の蘇生を行う事もできる事を発見した。

 かなり素晴らしい研究結果だと言えるのだが俺以外に蘇生魔法なんて使えるわけが無いし、使えたとしても蘇生した魂はいくらか消耗して何らかの記憶障害や感覚障害が起こる可能性が非常に高い。

 そもそも再生魔法や治癒魔法というものは魂から健全だった状態の情報を参照し、それを基に肉体を再構築するという魔法なのでその蘇生元の情報が壊れているとどうしようもないという訳だ。



 この参照する情報を無理やり変えると若返りや寿命を伸ばすなんて事もできるんじゃないかなんて思ってやってみたのだがこれは失敗した。

 魂と器は完全に対応した対になる形になっており、少しでもズレると魂が器からこぼれ落ちて即死するし、これを無理やり結びつければ極限まで生者に近いアンデッドになるという訳だ。

 結局若返りの方法なんてまだ見つかってないし、寿命を伸ばす方法も同様に存在しないという訳だ。



 俺に限っての話で言えば何かあった瞬間に治癒魔法や再生魔法、解毒魔法が発動するので老衰で死ぬまではもう余裕で何とかなるので最低でも後70年は余裕があると思う。

 その間に延命魔法か若返りの魔法のどちらかを手に入れておきたいものだ。

 全く……よくファンタジー系の物語に出てくる寿命の無いキャラクターが羨ましいぜ。



「あの、神様」

「ん? 何だ?」

「私考えたんですけど、いっそ魂の情報を書き換えてはどうでしょうか?」

「あー、確かにそれは俺も考えたんだがちょっと厳しいぞ」



 まず第一に現段階の技術では魂に干渉する術はほとんど無く、当然魂の書き換えなんて魔法が存在するわけがない。

 次に仮に書き加える技術があったとしても俺の魂が巨大すぎるので防壁を突破して書き換える事は不可能だという事。

 なら自分で書き換えればいいと思った奴は残念ながら完璧なまでの不正解だ。

 どこに自分の脳を自分で手術できる医者がいるんだと言う話だ。



「とまぁ、とりあえずこの三つが難点な訳だが更にこの方法で延命と不死化に成功しても恐らく今後は一切何も覚えられないし、今後一切の成長をする事が無いような本当のアンデッドになりかねない」

「では自分の魂に頼らない外部記憶のような物を取り付ける方法はどうでしょうか? 

 仮にこれが上手くいけばその時点でほぼ完璧な不老不死ですよ!」

「外部記憶か……」



 このノインの説明で俺の頭に浮かんで来たのはマインドアップロードや拡張知能とかいうあれだ。

 確かにああいったIT系の技術があれば記憶の外部保存とかも余裕だろうし、魂と肉体の固定化魔法があれば将来はこの術式が成立する可能性は高い。

 が、今の時代にはコンピュータも無ければITの技術が完全に0で進歩の一つもしていない。

 いくら金属を自由自在に加工できる俺とはいえども、全然仕組みを知らないものは作れないし、天才達が集まって何十年も考えて仕組みを作っていったものを俺一人で思い付くというのはもっと無理な話だ。



 この世界で可能性があるとすれば、魂を使った記録方法と生物の脳を使った記録方法くらいだろうか? 

 これならばそのうち行ける方法はあるかもしれないが、外部の魂に情報を刻んで行くなんてそうそうできる事ではない。

 魂のネットワークを使ってこれが何とか解決できるとしてもやはり実際に魂を保存しておくサーバーのようなものが必要になってくる。



 そしてそのサーバーとして使う魂は記憶を記録する魂よりも遥かに大きい必要性がある。

 俺よりも大きい魂? 

 今はそんなものは間違いなく無いと言えるし、今後もそんな魂は誕生する予定もなければさせる予定もない。

 そんな魂の持ち主は間違いなく俺を真正面から殺す事ができるだろうし、それこそ俺のような限りなくよく似た何かでは無く、正真正銘の神とか俺よりも神に近い何かという事になる。

 仮に居たとしてもそんな神が俺に協力してくれるか? 

 間違いなく答えはNOだ。

 俺ならばそいつの持てる知識と魂の全てを吸い上げるね(確定事項)



 もし例え仮に協力したとしても最低限の魂以外は吸収する筈だ。

 あとこれが一番大事なのだが、その神が数万年も生きられるとは限らないという事だ。

 もちろん可能性はあるのかもしれないが、俺はそんな不確かな可能性なんてものに全てを賭ける気にはならない。



 ……あれ? 

 これ、俺以外ならこの方法で不死になれるんじゃね? 

 俺ならば百人や二百人程度の記憶であれば余裕で引き受けられるし、前述されている魂の防壁も俺ならば余裕で突破して中身を弄り回す事ができる。

 問題があるとすれば魂を弄り回すって死ぬほど痛いだろうなって事と、そもそも弄り回す技術がまだ無いという事で、前者は気合いがあれば何とかなるし、後者はどの道何とかするべき問題である。



「……いけるんじゃね?」

「本当ですか!?」

「ああ、暫く実験と検証が必要だとは思うがやってやれない事はないとおもうぞ。

 ……まあ、俺以外の不老不死って限るんだが」

「なら私でも不死になれるんですか!?」

「可能性の話だが別に否定する材料はないとおもうぞ? 

 それじゃあ明日からは魂の固定化魔法を探す事にしようか」

「はい!」



 かなり際どいラインだとは思うのだが、この方法で作れるものは不老不死の人間なのだろうか? 

 俺の見立てではこの方法でできるのも限りなく生者に近いアンデッドという事になるような気がする。

 言わばこれってメモリが無く、ハードディスクも無く、インターネット上のクラウドで動作するコンピューターって訳だからな。

 ……なんか唐突に失敗する気がして来た。



「さてと、そろそろ昼飯だししばらく外でも回ってくるか?」

「はい、あの……今日は一緒に行きませんか?」

「ん〜、まあいいぞ行くか?」



 国もかなり安定して、もう大抵の事はジェトに任せておけば何とかなるので、ココ最近はずっと神殿(自宅)にこもって研究尽くめだったという訳だ。

 まあ、たまには外に出てみるのもいいだろう。

 この国を建国してからもう15年、人口は12000人と最初の村のような小さな集落だった時とは大違いだ。

 窓から見るだけでその発展具合は一目瞭然だ。

 最初の頃は簡易的な家しかなかったのだが最近は建物の種類もかなり増えて石造りの本格的な建物や、木で作った高床式の家のようなものまでたくさんの物が入り乱れている。



「いつも通りにとりあえず表通りの方に行くか?」

「えーと、今日は裏通りの方から回りませんか?」

「了解、変身魔法掛けるからちょっと待ってろ」



 そう言って俺とノインの姿を変身魔法で外出用の姿に変えて裏口からこっそりと神殿を後にした。




ブクマ、評価等ありがとうございます。

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