009
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「天をも縛る白き鎖ッ!」
俺がそう言うと共にどこからともなく白金に輝く鎖が飛び出してきた。
その鎖は目にも止まらぬスピードで、まさに一瞬の後にマンモスを拘束する。
そして、その鎖が鈍く輝くと共にマンモスは徐々に抵抗力を奪われて暴れなくなっていく。
相手が強ければその力を取り込み、相手を拘束するというまさに最強にして究極の武装だ。
まさに神の鎖と言ったところだろう。
さらに言えばこの鎖は俺の力でかなりの力をかけて強化してある為、この世界で最も強い物質と言えるだろう。
しかも、魔力は自由自在に継ぎ足しできるようにしてある為、事ある毎に強化する予定である。
「……勝ったな」
何にかって?
この世界にだ。
だって前世からずっと夢見てきたんだぞ?
そりゃあ前世と合わせると完全に老人な俺だってはしゃぎたくもなるものだ。
「我が白金の鎖は闇をも縛る。
逃れえぬ摂理たる束縛」
……うん、カッコいい。
こう鎖がスパーンって飛び出してくるようにしたのがいいよね。
ちなみに先っぽが短剣のようになっている為、普通に発射して刺すだけでも大抵の奴は始末できる。
そしてこの鎖、何故か先端が合計で9個もあるが紛れもなくこれで一本の鎖である。
……保管してある空間の中でどう繋がっているのかは定かではないが間違いなく混沌としている事は間違いないだろう。
一本の鎖を徐々に継ぎ足しては継ぎ足してと伸ばしていったら何故か先端が9つになっていたのだ。
もちろん俺のミスなどではなく、世界そのものが湾曲しているらしい。
ここから先は量子力学の説明になるのだが、俺の余りにも強すぎる魔力は本来なら可能性だけで終わる筈のものを無理やり確定した事象になるまで押し上げてしまったらしい。
分からなかった奴のために言うと。
この鎖がAに刺さる。
この鎖がBに刺さる。
この鎖がCに刺さる。
この鎖がDに刺さる。
という4つの可能性があり、それぞれが均等な事象として起きるとする。
もちろん普通に考えれば1つの事象が起こる可能性は25%なのだが、俺の鎖はAとBとCとDに同時に刺さったとかいう意味不明な現象を引き起こせるわけだ。
そして、今のところこの鎖の命中率はまさかの900%である。
狙ったところにピンポイントで飛んでいくのは勿論として、同時に複数の箇所だろうが鎖を飛ばすことができる。
因果反転の呪いなんてちゃちなもんじゃねぇ。
もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ。
「よし、とりあえず限界を超越せし因果の集約と名付けよう!」
うん、カッコいい。
ゲーム風に言うとだいたいこんな感じだろうか?
『天をも縛る白き鎖』
攻撃力Ex+
耐久力Ex+
スキル
【逃れえぬ摂理たる束縛】
(【非物質特攻】【格上特攻】【魔力封印】【魂束縛】)
【限界を超越せし因果の集約】
(【因果反転】【可能性確定可】)
【不壊】
【不滅】
【空間収納】
【絶大な切れ味】
コレなんてチート武器と思われるかもしれないが仮とはいえ主神である俺の武装なのでこの位は許されても良いと思う。
そのうち俺にできる全ての魔法を永久的に付与する予定なので最終的にはこんなもんじゃないというのは間違いないだろう。
「後は4つの神器だな」
鎖はほぼ装飾の加工が必要ないので俺がこの手で作り上げる事ができたのだが、鎌も、腕輪も、髪飾りも、盾も間違いなく装飾が必要なものである。
というか腕輪と髪飾りが装飾なかったらそれは絶対に腕輪じゃないし、髪飾りでも無い。
装飾の無い装飾品とかただの神器である。
俺が適当な草原で試し打ちを行っているとノインが現れた。
完全に飛行魔法をものにしたようだが、この飛行魔法は風の力を使って起動する不安定版の方だ。
まあ、それでも時速300キロメートルくらいは余裕で出せる代物なので俺のように魔力を大量に使えない者にとっては非常に便利で実用的な魔法である。
え? 俺の使ってる飛行魔法?
……音速はまだ突破してないとは思うが、ちゃんと測ったことは無いというのが真相である。
そのうち測ろうかな?
「神様、新しく連れてこられたフォルとかいう子が呼んでますよ?」
「お? そろそろできたのか。
知らせてくれてありがとなノイン」
「いえいえ、それで何を作らせているんですか?
神様が自分の手で作れないものなんて無いと思うのですが……」
俺といえばなんでもありみたいな感じだったのでそう思われても仕方ないと言えば仕方は無いのだが、もちろん俺にもできない事はあるし作れないものもある。
「いや、俺にも色々とあるぞ?
代表的なものは芸術関連だな」
「……ものすごく精密な像を作ってたりとか、どう見ても本物にしか見えない絵とか描かれてましたよね?」
「実物見ながら作るのは魔法が使えれば誰だってできるだろう?
ノインだってできたじゃないか」
「それは確かにそうですが……。
でもそもそも絵を描き始めたり像を作ったりしたのって神様じゃないですか、なら神様がやっぱり一番凄いのでは?」
確かに旧石器時代に絵や像なんて文化があるわけが無いので大抵のものは俺が始めた事になる。
うん、これじゃあ人類に知恵をもたらした偉大な神とか言われても仕方がないな。
そのうち俺が世界を創造した事になってそうで怖い。
……というか歴史を思い出してみると間違いなくそうなるんだよな。
ナザレのイエスがユダヤ教の神と同一だって事になったんだぜ?
国を作り、そこに多くの人を住まわせ、人に知恵を与えた神がむしろ創造神じゃあない方がおかしいと言える。
きっと将来では唯一神ウロとか創造神ウロとか呼ばれている事だろう。
「ま、まあ……今はそういう事にしておこうか」
「はい、それで何を作らせていたんですか?」
「ん? ああ、ちょっと剣をな」
「剣、ですか?」
「ああ、俺の鎖は知っているだろう?」
「あの天をも縛る白き鎖ですよね?」
おおお!
さすがノイン!
俺の魂を媒介にして記憶してるとはいえ、自分の武器の名前が覚えられていることには感動するしかない。
これは帰ったらノインに何かしらのご褒美確定だな。
「そうだ、あれのシリーズを作ろうと思っててな。
その試作品一号機が剣と言うわけだ」
「神様が使われるんですか?」
「いや、アラビア半島にぶっ刺してくる」
「あらびあ半島?」
あ、アラビア半島なんてこの時代の人が分かるわけないか……。
まあ、適当に誤魔化しておけばいいだろう。
「あー、とにかく遠い所に行って刺してくるって思ってくれればいいぞ。
まあ、この世界にもいくつかロマンがあった方がいいと思ってな」
「ロマンですか?」
「選ばれし者にしか抜けない最強の剣、この世界のどこかに存在する天空に浮かんだ城、世界中に散らばっていて集めればどんな願いでも叶うというパズル、毎日飲めば永遠に寿命を伸ばす事ができる命の水を生み出す石、この太古の昔からこの世界の記録が蓄積された書物。
他にもたくさん、それこそ山のようにあるが、そんなものがどれか一つでもあれば世界はきっと、もっとずっと面白くなるとは思わないか?」
「……確かに夢が広がっていいのでは無いでしょうか?」
うん、俺もそう思う。
文明が進み、機械化が進み、情報化が進み現代に至るまでの道。
あの世界の歴史を、現状を、しっかりと知っている俺ならば分かる。
あの腐った世界にロマンなんてものは存在しない。
資本主義が進み、富の独占化がほぼ終わったあの世界ではその人の一生は殆どどこの家庭で生まれたかということだけでほぼ全てが決まる。
だが、そんな世界にこんな話があったとしたらどうだろうか?
太古の昔から存在する選ばれし者にしか抜けない究極の剣が。
しかもその剣が抜けるかどうかはどんな身分の誰が試してもいいなんて環境があればどうだろうか?
そんなものがあったら一度でいいから試してみたくなるだろう?
それは間違いなく夢があるし、他のものにしたってそうだ。
この世界には圧倒的なまでにロマンが存在しないのだ。
何の希望も夢も無く、ただ親の言われるがままに学校に行き、そして独り立ちをしてブラック企業で使い潰されて緩やかに死ぬ。
こんな世界を誰が望んでいるんだ?
少なくとも俺は望んではいない。
この世界には夢や希望があった方が良いと思うし、この世界はもっとずっと自由にあるべきだと思う。
だから俺は聖典にこう刻んだ。
人は己の意思の下の自由であるべきだと。
法に従うかどうかすらも自由、決して何者からか強制されるべきでは無い。
人に本来義務は無く、人に本来背負うべき責任は無く、人に本来成すべき事は無い。
ならば、自らの意思をもって自らの成すべき事を自ら定めるべきである。
それは誰がに口出しされていいものでも無ければ、他人が代わりに決めていいものでもない。
自らの意思で決め、自らの生涯全てを掛けて成し遂げるべきである。
だからこそ俺自身は法そのものに罰則を一つしか制定することはなかった。
俺はハッキリと言おう。国が施行する法に存在する罰則とは法を破ったものに与えられる『国からの罰』では無く、自由に基づく国からの暴力である。
ルールとして罰則を設けたいのであれば国はその個人としっかりと契約書を交わして契約するべきだと俺は本気で思ってるからな。
「えーと『民よ、神以外の何者にも縛られるなかれ』でしたよね?」
「ああ、それだな。
というかお前もチェンの演説を聞いたのか?」
「はい、特等席で聞かせてもらいましたよ。
熱心な方は毎回聞きに来ているようですよ?」
「マジかよ、さすがにそれは少し恥ずかしいな」
「最近では本になったりもしてますし、本当に今更だと思いますよ」
「そういえばココ数年になって急激に識字率が上がったよな、あれってもしかしなくてもチェンのお陰か?」
「間違いなくそうかと、聖典の写本って今はもう一家族に一冊はありますからね」
さすがゴッドパワーとでも言うべきなのだろうか?
いや、そういえば聖書って歴史上の全部を合わせたら1兆を越えるとか聞いたことがあるな……。
ならこの写本がありまくるのもきっと不自然な事では無いのだろう。
「でもさすがにそろそろ落ち着くんじゃないか?
紙の生産が追い付いてないとか言ってたのもかなり落ち着いてきただろ?」
「いえ、単に紙の製造数が大幅に増えただけだと思いますよ。
桑の木から紙を作る技術なんてやっぱり凄すぎます」
「案を出したのは俺だが、実際に桑の木から紙を作ったのはあの紙の大魔法使いとか呼ばれてる奴だろうに」
前世のテレビで見た『和紙ができるまで』とかいう特集があったのをたまたまうろ覚えしていたのを伝えただけでここまで本当に和紙を作る奴が居るとは思わなかった。
俺が伝えたのなんて桑の木の革と芋をすりおろして作るあのトロロを使うって事だけだぞ?
たったそれだけで紙を作り上げるとか本当に天才としか思えない。
元から賢者の称号を持っていたので、大賢者の称号を教会を通して正式にプレゼントしておいた。
「神様、そう言えば話し込んじゃってますけど帰らなくてもいいんですか?」
「……あっぶねぇ! 完全に忘れてたぞ!
せっかくだし全速力で帰るか」
そう言って俺は天をも縛る白き鎖を少しだけ取り出して、全力で発射できるように魔力を込めていく。
この帰還方法は少し乱暴、というか乱暴以外の何ものでもない帰り方だが、間違いなくこれが一番早いだろう。
「あの神様? なんでそんなものを取り出されたんですか?」
「ん? ああ、一緒に帰ってみるか?」
「えと……これでどうやって移動できるんですか?
もしかして空間魔法とかそんな魔法です?」
「……そうだな、確かに空間魔法とは言えなくはないかもしれないな。
あ、そうそう、一緒に帰るなら俺に全力で捕まっとけよ」
「え? こ、こうですか?」
ノインが俺にしっかりとしがみついたのを確認して、周囲に結界を展開する。
そしておもむろに神殿のある方向へ鎖を発射し、その鎖をしっかりと手で掴んだ。
これぞ因果反転を効率よく利用した究極移動魔法である。
因果の壁を超えて狙ったところに刺さるという事はつまり、発射した瞬間で既に刺さったという結果とそれに至る過程が確定しているという事である。
ならば途中で鎖を掴んでも鎖が相手に刺さるまでの時間も変わらなければ、そのまま鎖が刺さったという結果も一切変わらない。
つまり、『俺が掴んでいる鎖が対象に刺さっている』という結果が無理やりに引き起こされるわけだ。
厳密に言うと転移では無いのだが、実質的な転移だし、『神鎖式転移魔法』とでも言っておこうか。
ブクマ、評価等ありがとうございます!




