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六話 帝都ドルセン。

七話が速く書き終えたので、今日は二話連続で投稿です。


 護衛を承諾し、その日の内に馬車で帝都を目指すことになった。

 外には土砂降りの雨が降り、俺の乗る馬車の天井からはドタドタと楽器を叩く様に雨音が響き渡る。

 小綺麗な馬車の後ろ窓からはメナリ様が乗っている皇族用の黄金の馬車が後に続いているのが見えていた。

 メナリ様を乗せた黄金の馬車を中心に、護衛の近衛騎士の馬車が数台、帝都から派遣された兵士の馬車が十数台、使用人を乗せた馬車が数台に、帝都の文官とライランド伯爵の文官の馬車が数台。

 全て合わせて合計三十台を超える車列が大雨の中を行軍するという、まあ普通に考えれば非常識な車列だ。

 でも、こうでもしないと、ライランド・シティで謎の敵対者から籠城するには危険すぎる。

 あの町の邸宅で籠城するぐらいなら、この大雨の中を行軍してでも帝都目指すべきだというのは、俺も納得だな。

 今は、一刻も早く帝都に着くのが先だ。

 とは言っても、ずっと馬車の中だと流石に暇になってくる。

 手に持ったスマホの画面に映るのは、日本人なら皆知ってるあのゲームだ。

 耳のインカムからサクラの声が聞こえる。

 

『よっしゃあ王手! ざまーみろユウタ!』

「くっそ……! ……んぬぇえい!」

『はぁ!? 死にぞこないがぁ!』


 暇すぎて、スマホ越しにサクラと将棋で対戦していたのだった。

 こんな事していて良いのかって? まあ、俺が警戒しようにも前の景色が見える訳じゃないし、外の警戒に関しては、サクラがちゃんとペンダントの機能で索敵してくれている。 ……筈だ。


「なあ、ちゃんと索敵はしているのか?」

『しているよ。人を疑うなんて、失礼だなぁ』


 との事だ。

 サクラの事は全面的に信用している。

 アイツが大丈夫だというのだから、大丈夫なんだろう。

 

 そんな何事もなく馬車が進んで数日が経った。

 馬車の窓を見ると差し込む快晴の日の光を目に入る。

 初日は車内が騒音に包まれる程の雨だったが、ここ数日は信じられない程に快晴だ。

 しかし、外の景色は森林地帯。

 街道の数メートル先には鬱蒼とした木々が立ち並んでいた。

 いつ魔物や山賊が出てもおかしくは無い立地で、気は抜けない。

 今日も今日とて索敵画面が映っているパソコンとにらめっこしているであろうサクラに、異常が無いか聞いてみようか。


「なあ、そっちから見て何か異常はないか?」

『うーん…… まあ異常はあるっちゃあるよ?』

「異常があるのか?」


 てっきり、今回も異常は無いと言うと思っていたんだが、歯切れの悪い回答が返ってきた。

 どうしたんだろう?


「何かあるのか?」

『うん、まあね…… 三時間程前からかな。敵意を持った誰かが六人、森の中で車列と並走する様に移動しているね』

「おい、なんで言わなかったんだ?」

『いやさ、それが結構な距離があるんだよね。狙撃するような距離じゃないし、かといって近づく感じでもないんだよ』


 つまり、敵意を持った六人が監視しながら俺たちの車列と森の中を並走しているって事か。

 今日の予定を思い出す。

 この森林街道の途中に作られた休憩所で休息と昼食を取り、また移動する。

 そして夕食を食べる頃には、森を抜けている計画だ。


「来るとしたら、昼食を取るタイミングだな」

『多分、そうだろうね……』


 明確に敵意を持った何者かがメナリ様を狙っている。

 その事実に気を引き締めながら移動し、車列は昼前に休憩所に到着した。

 休憩所に着くなり、誰よりも早く馬車から降りる。


「今はどこにいる?」

『ちょうど、ユウタが見ている方角だよ』


 右手に魔力を貯め、敵が居るであろう方角に雷撃の魔法を飛ばす。

 放った先から、誰かの叫び声が聞こえた。

 俺が突然魔法を放った事に驚き、近衛兵が飛び出してくる。


「どうなされましたか!」

「敵意を持った何者かが、ずっと森の中を並走していたんだ。襲ってくるなら、ちょうどこの場所だと思ってな。先制攻撃したって訳さ」

「それは、本当に……?」


 半信半疑な近衛兵。

 突然森の中に攻撃を放ち、実は敵が居ましたなんて、まあ信じられないよな。

 まあ信じてもらうしかないんだけども。


「まあ…… 誰が来ていたかは分からない。でも敵意を持っていたのは確かだ。 ……あと、倒したであろう敵を確認してきてほしい。俺はメナリ様を着き添いで護衛する事を頼まれているから、離れる訳にはいかないだろうから」


 近衛兵たちに頼むと、半信半疑な反応を見せながらも彼らは指示に従ってくれた。

 突然の騒動に、帝国の兵士以外は全員馬車から降りること無く経緯を見守っている。

 馬車から降りたら、危険だからな。

 彼らが馬車の中に居てくれる方が守りやすい。


 森の中に入った近衛兵たちが戻ってくる。

 戻ってきた彼らは、一応にして険しい表情をしていた。

 彼らの中の一人が俺の所にやってくる。


「暗殺者だ。それも、只の雇われとは思えない装備の充実度だった」

「只の雇われとは思えないってのは、どういう事なんだ?」


 近衛兵の言う、只の雇われとは思えない装備の充実度とは、どういう事なのだろうか?

 どういう事か彼に聞く。


「暗殺者の持つ装備が良すぎるんだ。ナイフから、羽織っていた防具まで全てな。……まるで、貴族のお抱え暗殺者って所だな」


 近衛兵が、そう答えて俺の元を去っていく。

 暗殺者が出たという情報はすぐに行軍の車列全員に共有され、すぐに出発する事になった。

 食事は携帯糧食が各々に手渡され、各々の馬車の中で食べろとの事だ。

 近衛兵が手際よく車列の点呼を呼び、全員の乗車を確認して出発の号令を出す。

 休憩する事なく、また馬車に揺られる事になった俺は、手渡された乾パンを水筒に入ったスープにつけてイソイソと食べる。


 初めて人を殺めたが、今一実感が無い。

 まあ、魔法を放つという人を殺める手順は行ったが、その結果を見ていないから殺人の実感が無いのだろう。

 それでも、人を殺した実感は無いとはいえ、どこか居心地の悪さを感じるな。



●●



 燦燦と降り注ぐ日光を手で遮りながら馬車の窓の外を見る。

 窓から見える山道の外側の、急な斜面の先に広がる風景は、一面の穀倉地帯と大きな城塞都市。

 メナリ様一行が、ライランド・シティを出発して二週間、やっと目的地である帝都ドルセンが俺たちに姿を現した。

 

 大きな城壁を周囲の穀倉地帯が覆いつくし、城壁の中の広く続く街並みの中央に見える大きな敷地。

 その大きな敷地こそ、俺たちが目指している宮殿だ。

 俺はてっきり、絵にかいた様な高く聳え立った王城を想像していたが、遠目で見る実際の印象としてはベルサイユ宮殿だな。

 耳のインカムからサクラの声が聞こえる。


『ほぇ…… ベルサイユ宮殿みたい』


 考える事は同じか。

 まあ、俺たち現代日本人の考える西洋の石材を積み上げた高い王城ってのは、某ネズミのアニメアニメスタジオのテーマパークが有名だからこそ想像しやすい景色だが、実際に石材を積み上げて高く作る王城を世界の君主が使っていたかと言われると、まあ微妙なところだしなぁ。

 日本の天皇だって敷地の広い宮殿だったし、なんなら現代の皇居だって敷地が広いタイプだ。

 なんなら西洋の王室代表のイギリス王家だって敷地の大きい宮殿だった筈。

 でも此処は剣と魔法の異世界だから、いつかはファンタジーな高い王城を見れるかもしれないな。


 それからの時間の流れは速いもので、今まで森や草原ばかり見てきたからか、人工物が目に入ってからは、あっという間に穀倉地帯に入り、小麦畑を眺めている内に気が付けば車列は城壁の前だった。

 馬車の前方から何かを確認する声が聞こえる。

 先頭の車両から順に、門番の衛兵が帳簿と実際の馬車を見比べている様だ。

 門番の衛兵の確認作業は順調に進んでいるようで、俺の馬車まで来るのに時間は掛からなかった。

 馬車の扉が開けられ、手に資料を持った門番の衛兵が、俺を見てから中の様子を伺う。


「ふむ、特に不審な物品は無しっと…… キミ、名前は?」

「ユウタです」


 自己紹介をし、衛兵にお辞儀する。

 門番の衛兵は手元の資料から名簿を確認しているようだ。

 しばらく資料と見つけていた門番の衛兵だったが、名簿から俺の名前を見つけたみたいだ。


「――あった、これか…… 職業は冒険者で…… ん? 冒険者?」


 職業が冒険者という肩書に、門番の衛兵は手を止める。

 門番の衛兵は少し考えた後に、俺に質問をしてきた。


「失礼、職業は冒険者で合ってるのか?」

「ああ、冒険者だ」

「冒険者が何故、皇族の馬車の車列に居るのだ? 何か特別な役割を仰せつかっているのか?」


 そう不審者を問いただす様な声色で俺に詰め寄る門番の衛兵。

 冒険者が護衛の依頼を受ける事は、そんなに珍しい事なのだろうかとも思うが、まあ皇族の護衛を受ける事は珍しい事なのだろう。

 

「俺は護衛です。ライランド・シティでメナリ様一行の危機に助太刀して以来、ライランド伯爵とご縁がありまして、今回の護衛の依頼もライランド伯爵から引き受けました」


 俺の言葉に門番の衛兵は驚き、すぐに手元の資料を確認しだす。

 門番の衛兵は資料を数枚めくり、一枚の資料に目を止めた。


「冒険者が臨時で皇女殿下の直属騎士を拝命だと!? どうなっているんだ……?」


 資料に書かれた俺の肩書が信じられないのか、何度も俺と資料を見比べている。

 ただの冒険者が直属の騎士として、臨時で任命されている事実に驚愕を隠せない様子の門番の衛兵は、俺に詰め寄る。


「幾らライランド伯爵と縁があっても、只の冒険者が臨時で直属騎士にまで任命される筈がなかろう! お前の口から説明しろ!」

「それはできない」

「なんだと!?」


 説明を求められたが、断った。

 門番の衛兵は納得できないといった態度を隠そうともしないが、今までの経緯など説明できる訳がない。

 不信感を露にする門番の衛兵に、少し近寄った。


「……あんたの言う通り、只の冒険者が直属騎士に任命されるのは異常事態だ」

「そうだ、あり得ない事なんだぞ!」

「そうだな…… あり得ない事だろうと思うぜ。でも実際に任命された。なあ、察してくれないか? この馬車の車列は雨や嵐の中、ライランド・シティから最短の道である森林の道を通ってきたんだ。危険な道を天気に関係なく突き進み、公式な騎士じゃなく冒険者を直属騎士に任命する程の事情があるんだよ」

「なっ……!? あの魔物だらけの森林を通ってきたというのか!?」


 門番の衛兵は驚きながら数歩下がり、今一度馬車の隊列を見た。

 あのメナリ様が乗っている皇族用の黄金の馬車でさえ泥だらけになり、落ち葉が所々に引っかかっているのが見て取れるんだ。

 そんな有様を見れば、門番の衛兵も納得するだろう。

 驚愕しながら馬車の車列を見渡した衛兵は、静かに俺に近寄った。

 

「直属騎士としてのお前に問いたい。規則では門番の仕事として宮殿行きの馬車は全て名簿を精査せねばならないんだが、この車列に時間の余裕はあるのか?」

「できれば、すぐにでも宮殿に逃げ込みたい。できるなら、そのまま素通りさせてほしい」

「に、逃げ込みたいだと?」

「ああ、すぐにでもメナリ様を宮殿へ避難させたい」


 俺の言葉に門番の衛兵は少し考え込み、意を決した表情で俺の乗っている馬車の扉を閉めた。

 門番の衛兵が号令をかける。


「今すぐに車列をお通ししろ! 今すぐにだ!」


 門の方角から驚きの声が聞こえてくるが、門番の衛兵は構いなしに号令をかけ続けた。

 開門の鈍い音が聞こえてくる。

 慌ただしく走り回る衛兵たちに先導され、馬車の車列は街の中にを進みだす。

 中世の街並みを進む車列と、物珍しそうに集まってくる野次馬達。

、集まってくる野次馬を注視しながら、サクラに聞く。


「この中に敵意を持っている奴はいるか?」

『今のところは居ないね』


 耳のインカムから聞こえてくるサクラの声。

 少なくとも、この周囲に危険人物は居ない様だな。

 俺たちの緊張なぞ知らない野次馬達は、呑気な顔で車列を眺めている。

 野次馬達の様子を注視しながら、車列は宮殿へと向かう。



●●



 馬車の車列は無事に宮殿へと到着した。

 メナリ様は騎士たちに連れられ皇族の居住区に向かった様だ。

 俺はというと、騎士と役人たちに宮殿の応接間に案内され、帝国政府の役人から報酬を受け取った後、宮殿を追い出される様に敷地のゲートまで案内されたのだった。


 今回の報酬として宮殿から渡されたのは、十万ゴールド。

 メナリ様をライランド・シティまで護衛した時の報酬より圧倒的に少ない。

 宮廷政府がライランド伯爵より予算が無いなんて事はあるわけない筈で、まあ冒険者である俺を信用していないからだろう。

 それもそうだよな。

 ライランド伯爵は危機的な状況だから俺に護衛の依頼を頼んだが、宮殿は人材も警備の質も高く、何より宮廷の役人達は見ず知らずの冒険者を宮殿に入れたくないだろうからな。

 

 今は行く当てもなく、中世ヨーロッパな街並みを当てもなく歩いている。

 さて、どうしたものか。

 悩む俺の耳から、インカム越しにサクラの声が届く。


『とりま宿屋を探そうよ』

「それもそうだな。冒険者ギルドの近くなら宿屋もあるだろう」


 サクラに同意する。

 宿屋を探すため、先ずは冒険者ギルドの位置を知らないとな。

 辺りを見回して冒険者ギルドの位置を知っていそうな人を探し、近くを通りかかった犬の散歩をしているスキンヘッドの屈強そうな男に聞く。


「おう、冒険者ギルドは西門の近くだぜ。でも残念だったな、今の時期は依頼が少ないぜ。俺もやる事ねぇから、こうして愛犬の世話をやってるってところだ」


 屈強そうなスキンヘッドの男は、そう答える。

 なんでも、今の季節の帝都には討伐依頼も採取依頼も少ないらしく、あるとしても高難度の討伐依頼ぐらいで、この季節に帝都に来る冒険者は少ないらしい。

 今日来たばかりな新参者の雰囲気を俺から感じ取ってか、屈強そうなスキンヘッドの男は去り際にこちらを見て言う。


「残念だったなぁ。まあ、薬草採取でもやりながら次の季節まで待つんだな」


 去っていく屈強そうなスキンヘッドの男に「ありがとな」と伝え、西門を目指す。

 西門の近くまで来ると、大通りの一角に大きな冒険者ギルドの建物が姿を現した。

 とりあえず、中に入り掲示板に貼られた依頼の確認だけしようか。

 冒険者ギルドの中に入ると、吹き抜けの高い天井と、奥に並ぶ長い受付カウンターが俺の視界を出迎えた。

 右側には大きな依頼掲示板が何台も並び、左側には丸い机と椅子が沢山置かれた休憩スペースになっている。

 感心して呟く。

 

「流石は帝都の冒険者ギルドって感じだな」

『そうだねー』


 俺の独り言にサクラが同意してくる。

 ライランド・シティの冒険者ギルドとは何もかもの規模が違うみたいだ。

 早速、右側の掲示板に向かう。

 討伐依頼や採取依頼を探すも、確かにさっきの屈強そうなスキンヘッドの男の言葉通り、採取依頼も討伐依頼も簡単な依頼しかない。


 唯一、依頼が複数貼られている掲示板を発見し、そちらに行ってみたところ、どうやら高難易度用の掲示板のようだ。

 目の前の掲示板に貼られた依頼を見るが、本当にここの高難易度用の掲示板だけがより取り見取りの選び放題って感じだった。

 高難易度の依頼を受けるのは、ごく限られた一部の冒険者だけで、大多数の冒険者たちにとっては無縁の依頼。

 この掲示板だけが沢山残るのも当然と言えば当然か。

 

 さて、一通り確認したから、宿探しをするか。

 冒険者ギルドを出て、辺りを見回す。

 この冒険者ギルドの入口付近からも、沢山の宿屋が立ち並んでいるのが見える。

 さて、どの宿屋にしようかな。



 七話の投稿は完了しています。

 次の七話の冒頭は超巨大美少女のサクラとの、馴れ合い的な話から始まるので、乞うご期待です。



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