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今後の方針

 天秤旅団、その名称が軍部に正式に受理されると、それを笑う存在がいた。

 この国の第二王子であるケーリッヒである。


「我が妹ながら夢見がちな名前を付ける」


 と大いにシスレイアの命名を笑った。


「伝説の天秤の魔術師にあやかったのだろうが、妹が付き従えているやつらはなんだ。図書館で司書をしていたボンクラと、同僚を斬り殺した狂犬だけではないか」


 それにあまたの老兵もいます、とはケーリッヒ殿下の近習の言葉らしいが、その場で聞いたわけではないので真偽は不明だ。


 要は馬鹿にされているわけであるが、まあ、一国の王子、皇位継承権第二位の権力者から見ればそれは仕方ないことか。


 ケーリッヒは軍部にもそれなりの力を持ち、その階級は大将だった。三つの師団を動かせる権力を持っているのだ。たかが旅団規模、それも敗残兵の寄せ集めの軍隊しか持たない妹など、小馬鹿にする対象でしかないのだろう。


 などと冷静に分析していると、メイドのクロエが頬袋を膨らませる。


「レオン様は酷いです。あなたさまはどちらの味方なのでしょうか」


「無論、姫様だ」


「ならばもっと言い返してください。おひいさまが愚弄されているのですよ」


「互いの声の届かないところで言い合っても仕方ない。それにボンクラと狂犬と老兵の集まりというのは事実だ。反論しようがない」


 誰が狂犬だ、とはヴィクトールの言葉だが、そのヴィクトールもボンクラと老兵というところは訂正しなかった。


「図書館での俺のあだ名は給料泥棒だからな。ケーリッヒにも伝わっているのだろう。しかし、それでいい。今、やつにこちらのことを警戒されれば、厄介だからな」


「……たしかにそれはあるかもしれません。先日もケーリッヒの手下によっておひいさまは窮地になりました」


 第8歩兵部隊孤立事件のことを指しているのだろう。第二王子ケーリッヒの策略によってシスレイアは孤立させられ、危うく戦死しそうになったのだ。


「ですが、レオン様はその窮地も華麗に救ってくれました。レオン様がいる限り、兄上を寄せ付ける心配はないと思っています」


「まあ、どんな状況だろうが君を守るよ」


 そうさりげなく言うと、ヴィクトールとクロエは、にんまりと俺の顔を見る。

「レオン様はさりげなく女を殺す台詞を吐きます」


「レオンは天性の女たらしだな」


 連携するふたり、男女を見ればはやし立てるメンタリティはその辺の学生と変わらないな、と呆れると自分の考えを披瀝した。


「今も言ったが、敵が俺たちを舐めてくれるのは僥倖だ。こちらが育つまでの時間をくれるということだからな」


「兄上が本腰を入れて干渉してくる前に天秤旅団を拡張するのですね」


「そうだ。いくつもの戦争に参加し、武勲を打ち立てる。姫様の階級を上げて、ケーリッヒに対抗できるようにする」


「どうせなら元帥まで昇進させて、腐った軍部を改革してくれ」


「それも悪くない」


 とは俺の言葉だった。


「ともかく、近日、行われるであろう戦争に勝ち、准将から少将に出世してもらおうか。さすれば軍を師団規模に拡張できる」


「そのためには前線に派遣されなくてはいけませんね」


「そうだ。ま、それは手を打ってある」


 そう言い切ると、周囲の視線が俺に集まるが、俺は自分が施した謀略には一言も触れなかった。


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