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8.ネームドとおすそわけ

 ぷみ〜ん、ぷみ〜ん。


 足元でプルプル震えるスライム。

 白く透明で弾力がありそうなところが、杏仁豆腐に見えなくもない。


「どうしたの?」


 カナちゃんはしゃがんでスライムを撫でる。


 ぷみ〜ん、ぷみ〜ん。


『特に何かあるわけじゃないんじゃないか?』

「そうなの?」


 スライムに語りかけるも反応なし。

 いや、この場合反応しないって反応なのか?


『違うのか?』


 ぷみ〜ん。


「違うんだ」


 ぷみ〜ん、ぷみ〜ん。


 正解らしい。

 同一言語じゃなくても、案外会話できるもんだな。

 スライムは発声ずらしてないけど。

 どうしてだか、こいつとは仲良くなれそうだ。

 水流に捕まっちゃうドジっぷりとか、まさに俺っぽいじゃん?

 カナちゃんのおみ足に縋っ……ゲフンゲフン。

 兎に角、このスライムとは、仲良くできそうなのだ。


『スライム君や。君の名前はアンプでいいかな?』


 命名理由。

 杏仁豆腐っぽいから。


「アンプ?」

『そう、アンプ。杏仁豆腐のアンに、豆腐の腐を捩ってアンプ』

「あんにんどうふってなぁに?」

『……また今度教えるよ』


 教えると却下されそうだし。


「えぇー教えてよぉー」

『ほらスライム君も気に入ってるみたいだし、アンプに決定でいい?』


 ぷみん、ぷみ〜ん。


「むぅ。スライムがいいならいいけど」

『決定な!そんじゃ宜しくアンプ』


 ぷみ〜ん。


「よろしくねアンプちゃん」


 ぷみ〜ん。


『ちゃん……アンプって女の子なの?』


 ノーコメント。

 と言うよりノーリアクションか。


『なら、男の子?』


 これまたノーリアクション。


『ま、まさか男の娘!?』

「スライムに性別はないよ?」


 あ、はい。

 すみません。

 よく良く考えればそうだよな。

 スライムだもの。


 ぷみ〜ん。


 床に転がっている俺を、体の一部を細く伸ばして撫でてくれる。

 おおぅ、よしよし。

 慰めてくれるのかい?


『ありがとうな』

「仲良しさんだね♪」


 ぷみ〜ん。


【スライムが眷属になりました】

【スライムに個体名がついたため、ネームドに変異します】

『ふぁ!?』

「お兄ちゃん?」

『カナちゃん!ネームドって何!?』

「ねーむど?カナわかんなぁーい」

『わかんないかぁ、そっかぁー』


 じゃないよ!

 そもそも眷属になったの?

 え?ゴブリンの時の芝居続行すんの?

 何のフラグ立ってたの!?


「アンプちゃんどうしたの!?」

『え……』


 アンプは震えていた。

 何かに耐えるようにプルプルと震えていた。


「お兄ちゃん、アンプちゃん風邪ひいたの?」

『スライムって風邪ひくのか?』

「ひかないよ」


 そうなのか。

 病気しないのはいいことだ。

 カナちゃんがオロオロしているうちにアンプの震えは止まった。

 そして、その身体には明らかな変化が起きている。


『ナイルグリーンだ……』


 アンプの色が白からナイルグリーンに変わっていたのだ。


「お兄ちゃん、ないるぐりーんって?」

『碧と翠をくっつけた色だ』

「じゃぁ、お兄ちゃんもナイルグリーン?」

『そうなの?』

「アンプ、お兄ちゃんと同じ色だよ?」


 衝撃の事実。


『そう、なのか。眷属になったから同じ色になったのかな』

「アンプ、他のスライムと違って白かったから、葉っぱ食べて緑になったのかも」


 その発想はなかった。


『じゃぁ青色は?』

「お空を食べたの!」


 なるほど、その発想はなかった。


『……天才か』

「えへへ」


 やっぱり褒められなれてないな。

 顔がすぐに真っ赤になって隠そうとする。

 隠れてないけど。

 目しか隠れてないけど。


『ところで、アンプって他のスライムと色違うの?』

「違うよ。他の子は青だもん」


 定番っちゃ定番か。

 なら、白い色したアンプってアルビノ種?


 ぷみ〜ん。


 相変わらずカナちゃんの足にひっついてプルプルしてるアンプ。


 まぁ、詮無いことか。

 それにしても、絵になるな。

 もちろんR指定では無いぞ。

 戯れ的な絵だからな。


『あ、そうだ。アンプは汚れを綺麗にできるんだよな』


 ぷみ〜ん、ぷみ〜ん。


『良ければカナちゃんの体を綺麗にしてくれないか?』


 大きな外傷はないが、森を歩いたことで切り傷がいくつか出来ている。

 汚れたままにしておくと化膿してしまうかもしれない。


 ぷみ〜ん♪


 承諾してくれたようだ。

 むしろ喜んでいる。

 汚れがご飯だったりするのかな?

 だとしたら苔を食べるプレコみたいだ。


「アンプちゃんおねがい」


 ぷみ〜ん♪


 アンプがカナちゃんを包み込んでいく。


 消化しないよな?


 そんな俺の心配をよそに、洗浄は無事完了した。


 服まで綺麗にしてくれる心ずかい。マジぱねぇっす。


「ありがとうアンプちゃん」


 ぷみ〜ん。


 こうして衛生面は改善され、その日はリテルフを蔓でぶら下げて就寝した。

 なお、アンプは枕としても優秀だった。



 ミミズク湧き立つ夜遅く。

 隙間をくぐる小さな影が二つ。


「見てみろ供え物がしてあるぞ」

「誰への?」

「そんなの決まってんだろ俺達にだよ」

「そうなの!?」

「あぁ、殊勝な奴らだな。仲間かもって考えも的を得ているのかもな」

「でしょぉ!」

「ご丁寧に床にじか置きせず、吊るしてくれてらぁ」

「優しぃ〜」

「そんじゃ、遠慮せず持っていくとするか」

「残すのは悪いしね!」

「そういうこった」


 こうして影は去っていった。

 吊るしていたリテルフを二つ盗んで。


 別に二つくらい持っていってもいい。

 むしろ、敵対的になられるよりはマシだ。

 それに、干して保存できるかも不明だし。

 失敗したら食べきれずに腐らせることになる。

 余剰分を有効活用できるなら、こちらとしてもありがたい。

 ご近所付き合いは大事だね。


 ……。


 声……かければ良かったかな?

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