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1.接触禁止

 

 とある大陸のとある草原。

 高さが背丈程もある草々を必死にかき分けて、ひたすらに前へ前へと走る者がいた。

 月光に照らされた全身は泥にまみれ、緊張からか、吹き出した汗で衣服は既にべちゃべちゃだ。

 表情からも、疲労は色濃く表れており、一瞬でも気を抜くと膝から崩れてしまいそうな程、その姿は疲弊し精気を失っている。

 それでも、男は足を動かすのをやめない。

 やめることは許されない。

 その鬼気迫る姿はまるで、恐ろしい何かに追い立てられている小動物のようである。

 しかし、追跡者に背を向けて懸命に逃げている男を笑う者など誰も居ない。居やしないんだ。

 何故ならば、男の認識とは裏腹に、追跡者からしてみればその男は野山をかける野ねずみと何ら変わりないからだ。

 それこそ、食べれる肉が“少し”多いかな程度にしか認識していない。

 つまりは、それほどまでに追跡者の体躯は大きいという事だ。


(やばい……やばいやばいやばい!!)


 思考を染め上げる死への恐怖に、男は無意識で歯噛みする。

 報酬の羽振りが良くて受けた依頼。

 内容は簡単な調査とあり、パーティーメンバーも二つ返事で了承した。

 今にして思えば何もかもが怪しかった。

 俺達はまんまと落とし穴にはめられたわけだ。


「クソがァ!!」


 吐き捨てるように叫ぶが、追跡者が歩みを止めることは無い。

 コカドリーユ。

 彼の者を追いかける魔物の名だ。

 形状は蜥蜴を模しており、その体調は三メートルにも及ぶ。

 緑色の液を口から垂らし、爬虫類特有の瞳をぎょろぎょろと左右別々に動かしている。

 男は冒険者であった。

 王都でも少しは名の知れたパーティーに属する、優秀な魔法使いであった。

 欲さえ出さなければ、一生働かずに生活できる位の貯金もあった。

 順調に進めば、貴族に召し抱えられる程の才能もあった。

 不自由のない、幸せな日々をこれまで男は送っていたのだ。

 なのに、ほんの少しの慢心から欲が出た。


(適正ランクの依頼を受ければ、こんなことには)


 依頼には大まかなランク分けがある。

 それは、冒険者として働く者の命をミスミス散らさせないためにギルドが課した制約だ。

 ギルド側も貴重な人材に死なれては困るのだ。

 しかし、いつの時代にも身の程をわきまえない愚か者は存在する。

 そして、この男もその一人。

 冒険者ランクは全部で七段階あり、彼はその中でも上から四番目の強さを誇るC級。

 別名トロール級とも呼ばれる階級であった。

 この階級は丁度真ん中に位置し、強者の登竜門として多くの冒険者が挫折することになる。

 その例に漏れず、一向に上がる気配のない冒険者ランクに男も焦っていたのだ。

 故に、魔が差した。

 今回、男のパーティーが受けた依頼は適正ランク外のB級。

 別名オーガ級とも呼ばれるその階級は、男達のC級よりも一ランク上のものだった。

 たかがランク一つと、受付嬢の静止の言葉に耳を貸さずに飛び出したらこのザマだ。

 仲間は全員死んでしまった。

 酒を飲み交わし、寝床を共にしていた仲間達が、一瞬で肉塊に変えられた。

 その事実への恐怖と怒り、悲しみが綯い交ぜになって、今にも頭がおかしくなりそうだ。

 それでも男は、生き延びるため、ただひたすらに走り続けた。

 涙と泥で顔を汚しながら無我夢中で、棒になった足に鞭をうつ。

 しかし、その足掻きも虚しく男の意志に反して体は限界を迎える。

 パァンと子気味良い音が夜闇に放たれ、男はそれに合わせて前方に倒れ込んだ。

 走っていたこともあり、その勢いで地面に顔を強打してしまう。

 しかし、今はそれどころではない。


「なっ!?おい動けよ!!」


 死に物狂いで足に力を入れるが、どうしてだかピクリともしない。

 その事実に男は顔を蒼白にさせ、恐怖の対象に目を向ける。

 するとそいつは、タイミングよく男に追いつき、見下す形で動きを止めた。

 死ぬ……。

 男は悟った。

 もう逃げられないと。

 こいつは逃がしてくれないと。

 自分が食べられるところを想像し、震えが止まらなくなる。

 終わった……。

 恐怖から目を閉じてしまう。

 現実から逃げるように視界を絶つ。

 しかし、そのせいで聴覚に普段以上の意識がいってしまい、コカドリーユの呼吸音がより近く感じられる。

 男は嫌気がさし、耳をおおった。


「神様……」


 不意に呟いた一言。

 それは、無宗教である男からの神への懇願であった。

 どうか助けてと手を組んで懸命に祈り続ける。

 そして、奇跡は起きた。

 攻撃が来ないことを疑問に思い、男がつぶっていた瞼を開けると、そこには目を見張る光景が待っていたのだ。

 前方に夜月を背景に佇んでいた敵の姿はなく、代わりにこの場には似合わない人物が居た。

 上半分を消失した兎耳、どこまでも透き通る白い肌に、光の加減で輝いてさえ見える白い髪。

 どこまでも見透かすような赤い瞳をした幼女が、血の吹き出るコカドリーユの上に悠然と立っていた。

 あまりの不自然さに言葉が出てこない。

 その間、幼女もこちらを観察するばかりで一言も話そうとはせず、しばしの沈黙が場を満たす。

 得体の知れない恐怖を抱きながらも、男はなんとか声を絞り出した。


「どう、して……子供が城壁の外に…………」


 それは、質問ではなく思考から漏れ出た疑問。

 しかし、よくよく考えてみると内容は男にも理解できるものであった。

 耳があることからして、この娘は獣人だと判断できる。

 ならば理由は想像するにかたくない。

 “奴隷”、なのだろう。

 夜に外にいるということは主の命令で魔物を狩りに来ているのかもしれない。

 獣人とはそおいうモノ。

 奴隷とはそおいうモノ。

 その認識は世界共通。

 だからか、目の前の幼女……奴隷は、不思議そうに首をかしげて口を開いた。


「外に出ちゃダメなの?」


 奴隷はよくわからないと言った表情で、その場(コカドリーユの上)にしゃがみこむ。


「いや、道具ならば関係ないな」


 その言葉に奴隷は益々理解できないと表情で訴えかけてくる。

 しかし、男は教える気がないといった風貌をし、自身の状態を思い出した。


「おいお前!こっちに来て手伝え!」


 明らかなる傲慢。

 仮にも、命を救ってもらった恩人に取っていい態度ではない。

 しかし、この世界ではこれが常識。

 獣人=奴隷=道具が成り立ってしまうのだ。


「……どうして?」

「五月蝿い!!奴隷の分際で口答えするな!部をわきまえろ!」


 男は苛立ちを隠そうともせずに命令口調で怒鳴りつける。

 対して奴隷は男を無視して首にかけられたネックレスを手に取り、あろう事か話しかけ始めた。


「お兄ちゃん、この人どぉしよう」


 ……。


 勿論返事などなく、草原には風になびく葉擦れの音だけがなり続ける。

 そして、奴隷はなぜだか満足そうに一つ頷いて見せると、その場で立ち上がりこの場を去ろうとする。


「ま、待て!!」

「うん?なぁに?」

「何処に行くつもりだ!」

「帰るんだよ?お兄ちゃん何だか疲れちゃったみたい」

「おにい……ちゃん?」

「そう!お兄ちゃん!」


 ……………!?


 そこに至って男はようやく思い出した。

 この頃噂されている悪魔のことを。


 曰く、血溜りの上で踊る悪魔と。

 曰く、近づけば四肢を切断され使い魔の餌にされると。

 曰く、喧嘩を売って生きていたものは……いない、と


 男は震えていた。

 歯を鳴らして震えていた。

 死ぬと覚悟したさっきよりも酷く怯え、畏怖の念と共にとんでもない絶望を抱く。

 最初は神への祈りが届いたのだと思った。

 今までの善行が報われたのだと。

 だが、現実は違った。

 現れたのは神の使いではなく、悪魔本人だったのだ。

 男の下半身が生温かい液体で濡れる。

 そのことに気づいたのか、奴隷の幼女は微妙な顔をして去っていった。

 目をそらすようにしてその場を後にした。


「接触禁止」


 それは人間が、恐怖と警告の意味を込めてあの悪魔に付けた名前。

 死にたくなければ決して接触してはならない。

 さもないと┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈。

 その先を想像し、男は小さく丸まった。

 次第に見えなくなっていく小さな背中が恐ろしくてたまらなかった。









 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈







 眠い……。

 光も届かない水の底で、俺はそれ以外考えられなかった。

 朧気に保たれた意識には┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 他のことを考える余裕など、端から何処にもなかったのだ。





 目覚めた場所は森の中だった。

 愚直なまでに真っ直ぐと伸びた大樹が悠然と居を構えている。

 その幹は太く、大人の両腕でも抱えきれないほどだ。

 そんな壮大な有様に、普段であれば心うたれ、情けなく口なんか開けながら、放心していたかもしれない。

 人間、驚くことがあれば放心もする。

 この光景も例外ではない。

 しかし、今は違う。

 なぜなら、俺が呆けているのは美しい景色に魅せられたわけじゃないからだ。


 俺の視線は、その先一点に釘付けにされていた。

 鮮明になりつつあった思考が停止する。

 理由は明快。

 頭上で羽ばたく蝶が、あまりにも馬鹿げているせいだ。

 黒を基調とし、ピンク、紫で描かれた幾何学模様。

 一見、魔法陣のようにも見える鮮やかな羽は、いかにも「毒を撒きますよ」と、吹聴しているようだ。


 威嚇にも用いられるのか、その高圧的な迫力は十分に猛威を奮った。

 近くに居た鳥は、一目見ただけで恐慌状態に陥ってしまい、枝から転落してしまった。

 蝶はその鳥に反応を示し、急旋回。

 口を開いて、一呑みで喰らってしまう。

 それは、日本では……いや、俺が今まで生きてきた世界ではありえない光景。

 通常じゃ考えられない大きさをしていた化け物の姿だった。


 昔、どこかの映画で似たようなのがいたな。

 確かモス……。

 いや、やめておこう。

 これ以上は思い出せそうにないし。

 それに、どうしてだろう。思い出してはいけない気がする。

 いや、そもそも問題はそこじゃない。

 今気にするべきは、映画の化け物を目前にしているということだ。


 そこに思い至った瞬間、俺は血の気が引いた。

 今まで積み上げてきた常識の積み木が、音を立てて崩れる。

 それは、思わず頬を抓ろうとしてしまうほどだ。

 その行動に、特に意味は無い。

 ただ、夢から覚める民間療法として、よく知られているから、咄嗟にしてしまっただけのこと。


 しかし、その行動が幸いして、俺はようやく自身の状況を認識した。

 驚いたことに、俺は手足を失っていたのだ。

 比喩表現や言葉遊びの類ではなく、忽然とその存在を消したのである。


 感覚がない。

 寝そべっているのに、土の感触も、風の流れも、何一つとして感じられない。

 そして、驚愕なのは、その現象は四肢に限らず胴体にまで及んでいることだ。


 そのせいか、どうしてもそこに何かがあるとは思えなかった。

 胴体がないのに俺は何故生きていられるのか。


 重要器官が欠落している。

 生命保持の部位が欠損しているのだ。


 いや、実際には胴も手足も健在で、単に動作不能なだけなのかもしれない。

 生きられている以上、その可能性が一番高いと思う。

 呼吸をしていないのは不可解だが、自律神経系が何とかしてくれているに違いない。


 そう思うしかない。

 楽観的になってみると、少しは気が楽になった。

 まずは冷静に、だ。


 だいたい、俺は何故森に倒れている。


 ばらばら殺人……。

 いや、まだ死んでいないのだから誘拐の類か。

 推察するに感覚器官が機能しないのは、誘拐の過程で毒でも盛られたのかもしれない。


 ……。


 もしそうなら、一時的なものであることを願うばかりである。


 まぁ、症状が緩和されたらされたで、色々と問題がありそうだけどね。


 瞬きすらできないこの状況。

 神経が麻痺しているからなんともないが、長時間同じ体制で寝ていると、寝違えたりしていそうで怖い。

 角膜剥離とか痛いって聞くし、何事もないといいな。


 これは、斜に構えているのではない。

 もし症状が緩和された時、逃げるのに支障が出るかもしれないことを危惧してだ。

 痛いのは嫌だからな。

 足が縺れて誘拐犯に再確保なんて死んでも死にきれない。


 ……。


 ここはあえて、そうあえて、認めようじゃないか。

 ぶっちゃけ、冷静に考察する余裕がないだけだ。


 今起きている事柄に気持ちが追いついていない。

 だって、本当はわかっているんだ。

 自分の体の大半が、間違いなく消失しているんだって。

 分かっていて目を背けている。

 確信があるからこそ、頑なに理解を拒んでしまう。


 誘拐じゃない。

 目を覚ます前、最後に見た光景はエメラルドに輝く深い水の底だった。

 誘拐に関連のない景色だ。

 では何故、俺は森の中で倒れているのか。


 脳裏を掠めるのは、少し前に読んでいたライトノベルの題材。

 異世界への転生。

 何かを起因に、違う世界へと迷い込むファンタジー物だ。


 何を馬鹿なと、本心を言えば一蹴してしまいたい。

 しかし、それはできなかった。

 虫の知らせか、俺には、とある予感があったからだ。

 きっと、この憶測は間違いじゃない。

 頭にこびりついて離れない非現実が、これでもかと、訴えかけてくる。


 真実を受け入れろ。

 お前は、あのエメラルド色の棺に身をやつしたのだ、と。

 後悔ばかりを残して、哀れに惨めに、一人で死んでしまったのだと。


 胸を貫くような幻聴の数々が、現実逃避を許さない。

 受け入れろ。

 そして、認めろ。


 お前はただの、無能な厨二病なんだ!


 その瞬間、何かが胸にストンと収まった。

 不思議なまでにあっさりと、俺は真実を受け止められた。

 そうか……死んだのか、俺。


 ◇


 ステータス。


 ……。


 ダメか。


 もし仮に俺が転生してしまったのなら、本に書いてあったようなゲーム画面的なにかが浮き出てくるかと思ったのだが。


 結果は何も起きなかった。

 残念と言うべきか、やはりと言うべきか。

 童心を忘れられない己が恨めしい。

 どうしても、まだ諦めきれないでいる。


 何か制約があるのかもしれないと思う辺りに苦笑いしていまう。

 表情筋も動かせないけどね。


 例えば、手を使わないといけないとか。

 こう、よくあるのだと上から下へスライドする感じで………。

 って、俺には手がないんだったな。


 となると、だ。


 ステータスの開示は諦めた方がいいかもしれないな。

 そもそもな話、ステータス画面なんて出るわけが無い。

 何を期待しているんだ俺は。


 昔、と言っても転生する前。

 つまりはついさっきまで、俺は妖精や魔法なんかを意識してしまう少し痛い少年だった。

 この言い方だとちょっと夢見がちな少年程度に取られてしまいがちだが、俺の場合はだいぶ外れている。

 魔法や妖精が実在したら楽しそうだ、なんて、そんなことを思ったことは無い。

 どちらかと言えば、右腕が闇の精霊によって乗っ取られる的なことを、人前で惜しげも無く連呼する痛々しい奴だった。


 だからこそ、この状況に困惑はするが、内心ウキウキしてしまっている。


 これが冷静でいられるか!

 なんたって異世界だぞ!

 やはり俺には時空渡りの才能があったのか!


 うち震える心情とは裏腹に、体はピクリとも反応を示さない。

 転生して嬉しくはあるが、身動き出来ずに森へ放置されるのが、いかに危険なことかも重々承知している。

 まさか、こんな役立ち方をするとは思わなかったが、森へ通っての魔術研究は無駄じゃなかった。

 夜の森は、驚くほど何も見えない。

 そのくせ一歩でも踏み外せば木の根に足を取られて転んでしまう。最悪死ぬ。

 震えながら朝を待ったあの屈辱は一生ものだ。

 墓を作るなら森は避けると、心に誓う程度には心臓に悪い体験だった。


 ……。


 ともかくだ。

 夜の森はとても怖い。

 野生の獣は、大抵夜目が効く。

 なれない山道でさらに不利になってたまるか。

 どうにかして行動しなくては。

 まず、今の俺に何が出来るのかを確かめる必要がありそうだ。


 手、足、胴体が機能しないのは確定として……。

 呼吸、不明。

 口は、動かない。

 瞬きは、していないな。

 視界の移動だけでも……ひぃっ!


 何これキモい!

 三百六十度見渡せるんだけど!


 視野は今までと変わらないが、視界が全方位見渡せてしまった。


 どうしよう。

 控えめに言って、吐きそう。

 身体が健康な状態なら吐瀉していた自信がある。


 いや、そんな自信こそどこかに吐き捨てて来た方がいいのだろうが。

 本当に気持ち悪いんだよ。これ。

 これまで、頭だと思っていた所に目が移動するんだ。

 もう何処が顔で、何処が頭なのか、既によく分かってない。

 あれ、今は側頭部に目があるんだよ……な。

 俺は一体全体何に転生したんだ……。

 人である以前に形が定まっているのか?

 ひょっとして、不定形でお馴染みのスライムだったりして。


 世間からあまり強いイメージを持たれていないスライム。

 普通なら落胆してしまう。

 なんせ、序盤の経験値タンク。

 切って捨てられるのがオチだ、と。

 だが、俺はそうは思わない。

 だって、今一度考えて欲しい。

 物理攻撃が効かず、形にとらわれない動きで強襲をかまし、抵抗もさせずに消化する。

 そんな化け物を相手にしたら、人間は為す術もなく餌と成り果てるだろう。

 魔法が存在しなかったら最凶だ。


 つまり、だ。

 俺は強キャラになったのかもしれない。

 心中小躍りしたい気持ちでいっぱいだった。

 強くてニューゲーム。

 最高じゃないか。

 日本ではやれ厨二だやれぺドフェリアだと馬鹿にされたが、ついに俺の時代が来たか。

 ビバ最強、ビバファンタジー。

 俺はストレスフリーな人生を送るのだ。


 と、意気揚々にも自堕落宣言をしたはいいものの、身動きが取れないのだから強キャラもクソもない。

 よく分からないモノに転生してしまったのだ。

 移動手段がないといまに死んでしまう。

 適応能力の高低も判明していない。

 一刻も早く森から出なければ。


 しかし、焦ってはならない。

 急がば回れとも言う。

 まずは落ち着いて、現状で出来ることの確認を続けよう。


 自力で動かせるのが視界だけなのは分かった。

 聴覚も生きている。

 実質使えるのは視力、聴覚、思考だな。


 よし、次は魔法の有無だ。

 俺がスライムだろうがその他だろうが、魔法の有無は今後の行動指針に大きく関わってくる。

 可能なら戦闘前には知っておきたい。

 確認方法は不明だが、何もやらないよりは色々と試していた方が精神衛生上も良さそうだし。


 そして、なにより憧れでもあった。


 手から火の矢とか出して「ふっ、雑魚が」なんて言ってみたい!


 小学生の頃から力が欲しかった。

 馬鹿にしてくる奴らの鼻を明かしてやる力が。

 その糸口がついに……。

 これはチャンスなんだ。

 かつての弱い自分とグッバイする、またとない好機なんだ。

 オープニングで生身とグッバイする訳には行かない。

 変わるんだ、すぐにでも!

 だがしかし、こればっかりは片っ端からそれっぽい方法を試すしかない。

 メジャーなのだと、体内に流れる魔素?を制御するのが鍵だったりするよな。

 瞼が動かないから目は潰れないが、集中出来るだろうか。


 ……。


 やるだけやってみようか。


ここまでお読みくださりありがとうございました。

そして、お疲れ様でした(。_。*)

マイペースにやっていくので宜しければ気長にお待ちください。

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