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7話:クソ虫ども!


《設定するシーン。説明シーンは気張らず読んで欲しいです。ふにゃーんって感じで》





 ベットに横たわり、"ヘルム"を被る。ヘルムは頭から首まで覆っていて、前面の鼻から下は開いている。欠けた壷のような形だ。

 スイッチを入れた。たったそれだけ。一昔の前のゲームを起動する並に簡単だった。

 すぐに睡魔を感じて、一分と経たずに眠るように意識が落ちていった。

 そして眩しい光を感じ、目を覚ますと見慣れた天井ではなく大空だった。


 上半身を起こすと目に入ったのは、地平線まで延びる草原。視線を遮る物は何もない。

 こんなにもとにかく広い空間、都会に住む自分には初めてで底知れぬ開放感を感じ、伸びをしながら思わず後ろに倒れた。

 草が生い茂っていて、倒れるときに痛みはなく天然のベットの様だった。草独特の自然な香りも感じることができ、頭では仮想空間とわかっていても体が現実世界だと言っていた。空を見た。太陽もあり、日光の暖かさも感じる。それに穏やかな風も感じれた。

 あまりの気持ちよさに、目を閉じて寝ようと思った。すると


ブウンッ


 音と同時にスーツをビシッ! と着込んだ、いかにも仕事できます! と言わんばかりの女性、眼鏡をかけているが奥に見える瞳は柔和な目をしている。そんな綺麗な女性が現れた。


「もう一つの現実へ、ようこそいらっしゃいました」


 深々とお辞儀され、思わず立ち上がり頭を下げた。


「ど、どうも」

「申し訳ありませんが、会話は出来ません。言語説明が要らなくなったらいつでも拒否のボタンを押してください。ウィンドウにヘルプが表示されますので拒否してもそちらで確認できます」


 本物の人間かと思ったら、機械、NPCのようだ。何ともリアルに出来ている。


ブウンッ


 音と共に目の前に薄青の正方形の画面が姿を現した。PCの極薄画面のようだ。折角なので言語説明は聞くことにした。


「それでは説明を開始させていただきます。この場所は、仮想現実に来ると毎回初めに訪れるログイン地点です」


 毎回来れると聞いて少し嬉しかった。ここに来れるだけでも、買った価値はありそうだ。


「それは"ウィンドウ"と言い、この仮想世界では主にこれで操作することになります。今後のウィンドウの出し方は小指と親指を合わせるだけです。両手どちらでも構いません。"ウィンドウ"の出し方は決して忘れないでください」


 頭の中で反芻して、何度か試してみた。何とも不思議な感覚だった。指を合わせるだけで、目の前にウィンドウが開かれるのだ。SFの世界にでも迷い込んだ気分だった。


「まずは遊ばれるゲームを選択してください」


 画面にはゲーム名がずらーっと並んでいた。


「タイトルを指で押すと説明画面が出ます。遊ぶゲームは"バーサス"をお勧め致します。他のゲームはおまけのような感じです。そしてバーサスは無料ですが、他のゲームは有料となっております」


 バーサス以外は普通にパソコンでも出来るようなもの、ボードゲーム類が名を連ねていた。ゲーム名を指で選択すると横に説明のウィンドウが出てきた。


「もちろんバーサスで!」


 と言いながら、バーサスの決定ボタンを選択した。言う必要はないのだが、つい言ってしまった。


「バーサスですね、了解しました。それではまずはバーサス内での名前を決めてください。名前は変更出来ませんので注意してください」


 ウィンドウの下にキーボードが出てきた。


『Wate』っと


 色々と悩んだけど、ローマ字の和手で落ち着いた。


「『Wate』様ですね、了解しました。次は容姿設定を行います。こちらも後々変更不可です。後、現実の個性を生かすために、容姿調節は限界がもうけてられています。犬が鳥には成れないけど、狼になら成れる。といった感じです。その分髪型は何でもありです」


 ウィンドウ画面が変わり、左側にパレットや文字や自分の顔が表示されてる。

 そしてウィンドウ右側に、実寸大の半分ほどの大きさの見慣れた顔、自分の顔が3D表示で出てきた。


「へー、こんな事も出来るんだー」


 科学技術の高さに感激した。


ブウンッ


「っひ」


 急に、自分の右前方に"実寸大の自分"が姿を現した。

 思わず悲鳴を上げてしまった。鏡で自分を見るのとは全然違うくて、物凄い不気味な感じだった。ドッペルゲンガー? 双子ってこんな感じ? などと思いながら眺めた。


「自分の容姿を調節方法は色々あります。一つ目がウィンドウ右端の手前に出ている顔を直接触って形を変える。二つ目はウィンドウ左端に表示されているパレットで色の調節や、他には"全体的に美形化"や"全体に優しくする"や"耳をエルフ化"や"幼くする"などのボタンが色々ありますので、そちらで簡単に調節することも出来ます。そして変化を右手の"自分"を見て、よりリアルに確かめることが出来ます」


 「へー」、「すげー」、「黒人だ」、「爬虫類……」などと呟きながら"整形"を楽しんでいた。


「身長や体形も変えることが出来ますが、この二つは余り変えない事をお勧めいたします。現実世界と仮想世界の体が違えば動作に支障をきたします。実験ではまともに歩くことも出来なくなった人も多く居ます。そして激しい動作をするバーサスではとても不利になります。変更する場合は覚悟の上でお願いします」


「……危ない橋は渡らないでおこう」

「筋力に関しては、現実で物凄い筋肉を持っている人も、やせ細っている人も力は同じです」

「おおぉぉー!! それは助かったー!」


 考えてみれば、自分は全くといって筋肉はないので、戦争をしようなんて無謀にも程があった。このシステムには感謝せねば。


「容姿調節において重要な説明をさせていただきます。調節しなければ、現実世界の顔と全く同じなので、特定されたりする危険性があります。顔は変えなくてもせめて髪型等を変える事をお勧めします。そして逆に顔を変えたから悪事を働けるか? と言ったらそれも違います。悪事を働けば相応、ではなく相応以上の重い罰がある。五感、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、痛覚って知ってるか? この世界では全て感じれる。マナーなどには注意しろ!! クソ虫ども!!」


 声色がどんどん低く、野太く変わっていく声を聞いて、ウィンドウで整形を楽しんでいた手が止まった。そして怒鳴った女性を、恐る恐る見る。とても美しい笑顔だった。笑顔が逆に怖いです、お姉さま。


「明日の0時から正式に稼動ですので、まだ時間はたっぷりあります。ごゆっくり設定をお楽しみください。これで私からの説明終わりです。ありがとうございました」


ブウンッ


 女性は深々とお辞儀をすると、音共に消えた。


 最終的に、傷痕だけは調節して消し、顔は変えないことにした。現実の知り合いと出会った時の気まずさを考え、そのままにすることにしたのだ。

 後は髪型も変えることにした。アフロからモヒカンからスキンヘッド、色々悩んだ挙句、前髪は眉毛にかからない程度の短髪にした。よって変えたのは傷痕と髪型だけだった。


 そしてログアウトボタンを押した。

 すると睡魔の様なものが襲ってきて、すぐに意識が遠のいた。


 夢から覚めたように目を覚まし、ヘルムを取ると見慣れた天井が姿を現した。

 時間は晩飯時、お腹も良い具合に空いており牛丼を作って食べた。

 正式稼動まで、まだ時間は結構あったのでパソコンを使って色々情報を集めたり、説明書を読んだりした。


 そして11時30分からログイン地点に行き、0時まで待機することにした。

 その間に、このVRとVSのシステムについて少し考えをまとめておく。


 現在、VRを出来るのは1日3時間だけである。後々時間が延ばされるかは未定のようだ。

 睡眠時間を設定しておけば、3時間という制限時間が終わった後も目が覚めず睡眠し続けれるし、さらに目覚まし機能もある。その上睡眠にヘルムがサポートしてくれて、気持ちよく寝れるそうだ。


 と考えていると0時が過ぎていたので、ドキドキしながらバーサスのボタンを選択した。





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