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34話:友達は嫌


 婦長の登場で少し収まっていたチビ助だったが、自分と目が合うと再び大泣きを始めた。


「みんな私を置いて行ったー! あーん!!」


 周りを見ると、ナースさん達は興味深々でナースルームから身を乗り出して見てきている。

 入院患者達は、ゴッツイ婦長が居なくなったのを良い事に、ドアの入り口や、曲がり角から覗いている。


「あーん!!!! 和手のバカー!!!! シュウのバカー!!!! 変な奴のバカー!!!! みんな嫌いだー!!!!」


 カケルのことを気の毒に思いつつ、声をかける。


「お、おい、リル……」

「リールだバカ!!!!!!!!!!」


 名前を間違え、余計に酷くなってしまった。


「ち、ちがう、そ、そうあだ名だ。あだ名。友達同士がつけるあだ名ってのがあるんだ」


 頭をフル回転させて、機転を利かせた。


「リールだから、リルだ! 友達同士のつけあうんだ。どうだ? リル」

「ううぅ…………リルリルとあまり変わらないー!!!! 適当だー!!!! うわーん!!!!」


 あっけなく見破られてしまった。


「っく……そ、そうだ! 好きな食べ物何でも買ってやるよ」

「ぐすっぐすっ……甘い物……」

「甘い物だな」

「……安物のじゃやだよ……ぐすっ……」

「わかった。高級なやつを好きなだけ買ってやるから」


 お金の当てはあった。逃げた3人だ。所詮子供。ざっとこんなものよ。と思った矢先


「……物で釣られる、薄っぺらい女じゃないもん!! うわーん!! 尻軽じゃないもんー!!」

「お、おまえっ…………」


 どこでそんな言葉覚えたのか……。周りからの目線が、突き刺さり始めた。


「そうか……、泣き止まないならもう置いていくからな?」

「うわーん!! わてのバカー!! バカわてー!! 置いて行っちゃ嫌だー!! バカー!! わてが毎晩やるから私は疲れているんだー!! わてのせいで寝不足だったんだー!! わてのせいで、肉体的疲労が溜まって、入院することとなったんだー!! DVだー幼女虐待だー!! わてが「っだ!! ストップ!!!!」」


 口を塞ぎ、誘拐するように抱きかかえてリルの部屋に走り戻った。

 周りからの突き抜ける視線がとてもとてもとても痛かった。もうこの階には来れそうに無い。


「はぁはぁ……腕が、足が……全身やばい……」


 部屋に入るまでは痛みを感じないぐらい、アドレナリンが出ていたが、部屋に入るや否や激しい痛みが襲ってきた。

 痛む手でドアを閉める。


「もう泣き止んだかな?」

「うーうーうー」


 まだ口に手をやっていたので返事がわからなかった。とりあえず、うーうー言うのが収まるまでこのままにしとくか。何て思ったところ


「いでっ!」


 手を噛まれてしまった。手は全身で怪我が無い貴重なところなのに……歯形がついてしまった。


「ぐすっ……ぐすっ……わてのバカ……ぐすっ……ぐすっ……」

「うぐ……と、とりあえず、泣き止んだか……? えーと、裏切ってなんか居ないぞ? 今でも友達だぞ……?」

「嘘だ! 皆いなくなった……! ……うぅ……」

「そ、それは、皆用事があったんだ。また明日来てくれるってさ」

「……本当に?」


 身長差から上目使いで聞いてきた。――朱利2世の気がした。


「そう、もう俺たちとお前は友達」

「…………嫌だー!!」


 まさか嫌がられるとは思っておらず、地味にショックを受けた。


「うっ、な、何故だ……?」

「友達じゃダメだ…………結婚しろぉぉ!!!!」


 壮大にショックを受けた――。

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