33話:黒いシュウ2
「よし、ついて行くぞ」
とシュウは小さな声で言った。
「あぁ……な、なるほど……」
「はぁー、考えたなー」とカケル。
後をついていく。階段を1階上がると、小部屋に入っていった。どうやら職員専用の個室みたいだ。
ドアを開けると、もう見慣れてしまった美人の女医とチビ助が居た。
「ん!? あらー、もしかしてばれちゃった?」
「レイカさんが上司かい……」
関係者だとはわかっていたけど、まさか上司とは思わなかった。
「やはり……」
シュウは眉間にしわを寄せて言った。どうも生理的ににあわないらしい。
「お姉様、相変わらずお美しい!!」
もうこいつは知らん。
「な、なんで3人がここにいるんだ!?」
チビ助は動揺しまくりだった。
「いいよいいよ、リルリル。何時かはバレる感じだったからねー。にしても……このポインター具現化ってのは興味深いねぇ……これは私でも判断つかないよー。さらに私の上に報告だねぇー」
珍しい思慮している顔で、ポインター具現化について今書いたっぽいレポートを見ていた。
「綾ちゃん、リールちゃんに、お姉さん、次はどんな美人が……」
とカケルが言った。……確かに興味はなくはない。
「残念ながら、これ以上は言えないし、姿現さないと思うよー。とりあえずまた対応決まったら教えてあげるわー。判断が出るまで、今まで通り使っててOKよー」
「はい。……ん、ってことは、レイカさんが色々と俺のことを何かしようとしてたのは、このこと繋がり?」
「まぁそうだねー。後は純粋に興味持っただけかなー? あははー」
「……まだ何かあるな」
とシュウが呟く。
「あははー……」
と目線を逸らしながら苦笑いするレイカさん。まだ何かあるのかと思うと、ついため息が出てしまう。
と、微妙な空気をチビ助の声で断ち切られ、支配された。チビ助が大泣きし出したのだ。
「3人が裏切ったぁぁぁー!! 友達になったと思ったのにぃぃー!!」
「シュ、シュウ、お前が追跡しようなんて言うから……」
「う……くっ……こういうことは門外漢だぞ俺は……」
シュウが動揺するという、珍しい姿が見れた。
「リリリリールちゃんっ!? ……シュウのせいだー!!」
と言いながらもカケルは手をカメラの形をして、撮るようなそぶりを見せ始めた。いや、しかし泣いてる姿も可愛い……などと言いながら。もうこいつは消えたほうが世の為のように思える。
「お、お前達2人して…………こ、ここは和手だろ!! そ、そうだ!! 朱利で慣れているだろ!!」
「え、ちょっと待てっ! 慣れてないっ! 朱利がそんなに泣くたまか!」
小さい時は覚えてないが、最近朱利が大泣きしたのは数年前の一度きり、慣れているわけがない。
「あらまー……あんた達3人で何とかしなさいよー! 私、あんた達のせいで仕事増えたんだから。しーらなーいッ!!」
レイカさんはそう言うと、レポートを持って飛び出していった。
それがこの場の流れを決めてしまった……。
「俺は無理だ……。あー、消灯時間がもうすぐだな。うん。面会はここまでだな。すまんな和手……頑張れ!!」
「ちょ、ちょっとシュウ!?」
「和手! 俺はシュウと違って手伝うぞ!」
「お、おお、カケル……助かる……」
下心が見え隠れしたが、そんなことは気にしてられない。すでに何事かと周りを取り囲む群衆が出来始めていたのだ。
そこで本当に消灯時間だったようで、一気に暗闇となった。
「はいはいはいー!! お開きですよー。ほら、皆さん部屋に戻って戻って。面会者は早く帰りなさい!」
恰幅の良い婦長らしき人が場を制覇した。
「ああ……嫌だー! そうだ! 俺はここに泊まる!!」
しかし、カケルが勇敢に立ち向かってくれた。が、婦長は甘くなかった。
「駄目です。下までお送りします」
「そういうことだ。俺もここに残りたかったが……」
何て心にもないことをシュウが言い、カケルは担がれて連れ去られてしまった。
「リールちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんーーーー………………」
「よし、伝記に書く面白事件が増えそうだ……明日の報告が楽しみだな……クックック……」
カケルの叫び声が響く中、シュウは誰にも聞こえない小さな声で呟いた。