表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/38

32話:黒いシュウ

「お前羨ましいぞ!!」

「え? この姿のどこを見て?」

「全てだ! まず、手を繋いで仲良く帰宅。家で一緒に汗を流して、青春し、その後お泊りで、あの綺麗な人に痛めつけられる。全て羨ましい!」

「……シュウ?」

「知らん。勝手に妄想しだした」


 とシュウは言って、目を背けた。どうやら説明するのがめんどうになって、適当に言った節が見て取れる。


「ちなみに、一番羨ましがってる点だが、これは男にやられた傷だぞ」

「え……。あの美少女、男だったの!?」

「いやちが……あー、うん、そうなんだ」


 自分もめんどうになった。


「……そうなのか……少し考え直させてくれ……」


「で、何があったんだ?」

「それが――」


 ブツブツ言っているカケルはほっといて話を進めた。途中から復活したカケルもちゃんと聞き出した。

 迷惑女に本音をガッツリ言った部分では、シュウ神以上にキツイ言葉が返ってきた


「どうしようもないアホだな。今度からカケル同様に扱うぞ?」

「それだけは許してください……」

「ねぇー、扱い酷くないー?」


 今まで十数年培った生き方を、たかが高校生の言葉だけで全てがひっくり返る可能性は極めて少ない。等と、徹底的に罵られた。

 他にはVSで仮面を購入したことを言うと、2人で何かコソコソと話した後、詳しく説明を求められた。

 何かのヒーローみたいだ。と言うと、再びコソコソ会話し始めた。

 そんな時ふと視界に入る何かが気になり、目をやるとドアの隙間からレイカさんが覗いていた。

 目ががっちり合う


「「…………」」


ガタンッ!!!!


 レイカさんは思いっきり扉を閉めると、必死に逃げていく足音を病院に響かせた。


「……なんだ?」

「何が起きた!?」


 後ろを振り返る2人。


「あー、なんだろ。この病院の七不思議……かな?」

「……意味がわからんぞ」

「気味悪いこと言うなよ……」


 シュウとカケルはそれぞれ言うと、また3人会話に戻っていった。

 数分後、スーッと静かな音をたててドアが開いて行くのが聞こえた。


「来たな」とシュウ。

「ん? どうしたんだ?」とカケル。

「油断したところを一気に行こう。合図をするよ」


 シュウとボソボソと小さな声でやりとりする。カケルは自然な会話の感じを出してくれる。少し会話続けたところで、


「……今だ!!」


 シュウと一緒に勢い良くドアに向かい、一気に開ける。


「ぷぬあ!!」


 変な奇声を発して、ドアから飛び退いたのは――チビ助だった。


「……」

「お前、何しているんだ……?」

「なな、な! なな…………なー!!!!」


 さらに奇声を発するとそのまま逃げていった。


「……和手、あれが七不思議なのか?」

「ま、まぁ、そうかな……?」

「……妖精だ、妖精が居たぞー!! なぁ!? 妖精が居たぞー!? うおおおーー!! ついに発見した、妖精だ、妖精だああぁぁぁああぁぁあああ!!!」


 カケルがチビ助に負けない大声で、はしゃぎ出したのをシュウが拳で止めたところで、廊下の先から鼻歌が聞こえてきた。


「ふふーん、ふふーん、ふふーん、おやー! 和手君じゃないかー! んん!? 友達かいー?」


 何とも白々しく登場してきたのはレイカさんだった。


「これは1人目の方か……」


 シュウは的確に見破っていた。


「美しさダイナマイツ!!」


 倒れていたカケルはすぐに復活し、目を輝かせている。

 今までの一連の流れを考えると……


「なるほど……、チビ助をけしかけたのは貴女ですね?」

「何を言うかー、知らないぞー?」


 棒読みしながら、後ずさりを始めた。


「立ち話もなんですからっ! どうぞどうぞ!」

 

 そのまま去ってくれてよかったのに、カケルが勝手に自室に招いた。招きやがった。


――


「えー、で、この人が話にもあった、怪しい女医さんのレイカさん」

「あはー、どもどもー」


 怪しいと言ったのに、何故か照れていた。


「……うむ、見るからに怪しいな」

「お姉様! よろしくお願いします! カケルって言います! 以後お見知りおきを!!」

「和手君の友達個性的ねー」

「貴女が一番個性的な気がしますよ」

「まぁそんな褒めないで、照れちゃうわよ」


 本気で顔を赤らめ、体をクネクネしだした。


「……」

「おおぅ、たまらん……」

「はぁ……」


「で、何の目的があって和手に近づいているんですか?」


 シュウがズバッと聞いた


「いやねー、目的なんか無いわよー」

「駄目だ、この人は俺はパスだ」


 シュウがあっさりさじを投げた。


「ちょ、ちょっと! そんな殺生な」


 頼みの綱が切れてしまった。


「カケルに任せる」


 今度の頼みの綱は、綱とは呼べない細い糸だった。


「隊長殿、任されました! お姉様! 今度密着取材させていただきたいんですが宜しいですか!?」

「あらまぁーどうしようかなー、でも君タイプじゃないからいやだわー」

「うぐはっ!!」


 意図(糸)も簡単に切れてしまった。そしてカケルはベットの中に潜り込んで拗ね始めたので、もう頼みの綱たちに任せるのは諦めることにした。


「はぁ……。それでどうしたんですか?」

「えっとねー、リルリルが貴方達のこと気にしてたから、ちょっとけしかけたのー」

「さっきの妖精の話ですか!!」


 カケルが布団から飛び出してきて言った。


「そうよー! かわいいでしょっ!? 私の隠し子なのー!」

「はいいぃぃ!!!!」


 レイカさんは黒髪で、チビ助は金髪の中の金髪だ。隠し子なわけない。……と、一々この人の言葉に乗っていては駄目だ。


「……それで……?」

「面白かったわー!!」


 レイカさんは目を輝かせていた。


「はぁ……」

「あの子友達いなかったのー、頭良いのに……うーん、良いせいからかな? で、日本に連れて来たけど、ここでも友達できなかったのよねー。ってなわけで、帰りあの子の部屋に顔を出してあげてねー!」

「分かりましたー!!!!」

「お、おまっ……」

「それじゃっ! ばいばい〜」

「ちょっと、丸投げかよっ!? あぁ……半殺しフラグ……」

「……お前、軽くトラウマになってないか?」


 と黙っていたシュウがおもむろに聞いてきた。


「成らない方がおかしいだろ……」

「う、うむ、まぁそうか……でも、和手、VS変人と関わりを持たないようにするということは、VS内で友達出来ないってことと同意義だぞ?」

「え? 何で?」

「お前がVS変人だからだ。類は友を呼ぶ」

「えええ?? う、うぅ……ま、まぁ……認めるところもあるけど……」


 はっきりと否定したかったが――出来なかった。


「それにだ! VS変人=トラウマはおかしいぞ。どちらか言えば金持ちお嬢様orボディーガード=トラウマの方が正しいと思うな」

「そ、そうかな……?」

「もっと言うなら、千倉綾=トラウマだろ」


 考えてみればそんなような気もしてきた。


「そっか……。変にこだわってたようだな……。VS変人も寛大に受け止めることにする。ありがとう! シュウ! 来てくれてありがとうな!」

「気にするな」

「……お、俺は?」

「何しに来たんだよカケル」

「ひ、ひどくね?」

「実際、何もしていないからな」とシュウ。

「……うわーん!!」


 泣き真似をしながら出て行こうとし、カケルがドアを開いた。すると


「ぷぬあ!!!!」


 さっきも聞いた奇声が再び聞こえてきた。


「天使!!!!」


 カケルの泣き真似が一瞬して普通に戻った。


「な、ななな…………」

「待て待て、とって食べないから入って来いよ」


 動揺しているチビ助に言った。


「む、むむむ……こ、この男……安全なのか?」

「天使&妖精!!!!」


 カケルは目をキラキラさせながら、チビ助の周りを反復横とびしている。


「そいつはヘタレで手を出せないから安心しても良いかなー。もし手を出すようなもんならシュウがやっつけてくれるよ」

「そ、そうか……、シュウとやら頼んだぞ!」

「うむ」


 そして自分はベットに、3人は椅子に座ったところで自己紹介を開始する。


「えーと、このちっちゃいのが……」

「ちっちゃい言うな!」


 と言いながら、俺に向かって蹴ってこようとしたのを、シュウが止めてくれた。


「怪我人を叩いちゃ駄目だ」

「おお……」


 良いこと言うね! シュウ!


「む、むぅ……」

「しかし、怪我していない所なら怪我人じゃないから叩いていいぞ」

「どんな理屈だよ!」

「話が分かるな奴だな!」

「お、おい、ちょっ、真に受けるなって! イタイ、イタイ……」


 チビ助はホッペを両方つねってきた。


「お、俺にもやってくれー!」


 とカケルが間に強引に入ってきた。


「ぬ……、こいつ変な奴だな……」


 手を離して、引いてくれた。勿論シュウがカケルに拳を送った。


「えーと、改めて自己紹介だけど……………………名前…………名前……何?」

「お、お前! 私の名前を知らなかったのか!! 私はシュトレー・リール・プレットシラだ!」

「シトレーリループッレトラ??」


 早口に思わず聞きなおしてしまった。


「ぐ、ぐぐぐ……」


 チビ助は拳を握り、プルプル震えてる。


「和手……お前、その様子なら千倉とやらにやられたのも無理はないぞ……」


 シュウがため息をつきながら言った。


「うぬ……悪かった……えーと……」

「リールでいい!!」

「リールちゃんか! よろしく!! 俺はカケル!」


 カケルは手を出し握手を求めた。


「う、うぬぅ、よろしくだ! 変な奴!」

「お、おれカケルって……いうんだ……」


 ヘナヘナと倒れていった。


「シュウだ。よろしくリール」


 シュウとリールは握手を交わした。


「俺は知ってると思うけど、和手」


 リールと握手を交わした。カケルを除いて


「何でリールは入院しているんだ?」


 とシュウが早速聞いた。


「そうだ! 和手のせいなんだ!! こいつが毎晩毎晩私を虐めるんだ!!」

「「え……?」」


 珍しく、シュウとカケルが声を合わせた


「待て、激しく誤解を生むセリフはやめてくれ……お前日本語所々変だ!」

「ふんだっ! 今思えば私がいっぱい大変なのも、和手のせいだ! 和手がどんどんやってくるから、私は追加に大忙しなんだ!」

「和手、お前って奴はこんな子に手を出していたのか……それも毎晩毎晩……」


 カケルが軽蔑の目をして言って来た。お前だけには言われたはない。


「……ああ、そういえば話に出ていた例のGMっ子か? この子」

「そ、そうだ! 流石シュウ。わかってくれた……」

「それで、この子にポインターのこと言ったのか?」

「あー、そういえばまだ言ってなかったよ」

「何だ? ポインターがどうしたんだ?」


 リールがハテナマークを浮かべて聞いてきた。


「ああ、それなんだけど――」


 カケルがまだ変な目を向けてきたけど、ほって置いて話を進めた。


――


「なに!? そんなことが出来るのか!? ……やっぱり不正していたんだな!! この不正野郎和手!」

「な、なにを! このチビ助!」

「リールだ!!」

「まて2人とも、GM的に見てこれは不正にあたるのか?」


 一発触発のところを、シュウが仲介に入ってくれた。


「む……むむぅ……むーん……」 


 リールは険しい顔をして考え出した。


「わかんない。こんなケース初めてだから上の指示を仰ぐことになりそう」


 ほら見ろ! とすかさず突っ込んでやろうと思ったら、シュウが遮るように言った。


「そうか、それなら上に報告したら遊ぼうか」


 珍しくシュウから遊ぼう何て言い出した!!!! 子供だから優しい一面が出たのか!?

 カケルと2人でシュウをまじまじと見る。


「お、おお! わかった!! ちょっと待ってろ! 言って来る!!」


 チビ助は満面の笑みを浮かべ、そういうと飛び出していった。


「よし、ついて行くぞ」


 とシュウは小さな声で言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ