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31話:時々ドS。


 久しぶりのVR、盛大にストレス発散をして、そして朝。レイカさんが来るよりも早くヘルムを隠さなければならない。


 病院の電気が一斉についた――行動開始だ。


 隣のチビ助にもう関わりを持つのは止めたかった。迷惑女の件で懲りたので、変なやつとは関わることを控えることにしたかったのだ。

 チビ助なんかは、まさに変な奴の典型的な例だからだ。朱利の様に小さいかと思ったらVSの製作者で、GMも兼ねている。しかも外人のようなのに日本語を話す。そして友達が居ない。さらに、軍曹で2重人格。……軍曹で2重人格を考えると、友達が居ないのも……。


 なので、ヘルムを逆の隣の部屋の人に頼みに行くが、長いこと入院している様で、ロッカーがいっぱいで断られた。

 その更に隣、更に隣、更に隣……個室は全滅だった。

 個室以外の部屋のロッカーでは小さくて入らなく、結局このフロアの人のロッカー全て駄目だった。――あのチビ助以外。

 フロアが違うのは論外だった。階を跨ぐにはナースルームの前を通らないと行けないので、消灯時間が過ぎた後と、朝にコソコソ動いていたら、怪しまれるのは必須であるからだ。

 仕方なくチビ助の元へヘルムを持って行った。


トントン


「どうぞー」

「悪いんだけど、また俺」

「むぅ、朝から何の用ー?」


 突っかかって来るのではなく、可愛らしい雰囲気に突っ込みそうになったけど、関わりを持ったら半殺しにあう。半殺しにあう。半殺しにあう。と言い聞かせ、突っ込みを止めた。


「ヘルムまた入れておいて貰っていい?」

「好きにすればー」


 どうやら、本に夢中のようだった。


「助かるよー」

「ふむぅー」


 ベットの上でゴロゴロしながら読んでいた。

 日本語の本じゃなかった。何読んでるのか聞こうかと思ったが、半殺し半殺し。とストップをかけた。


「それじゃあ、また夜取りに来るなー」 

「はーい」 


 昨日とは打って変って普通の対応になったので……何とも変な感じである。

 しかし、その様子は自分にも当てはまるので良く分かる。シューティングゲーム中に話しかけられても全く耳に入らないのだ。

 おそらくチビ助の場合は本なのだろう。



 その後ダメ元で病院を抜け出し、朱利の家に行くが――鍵が閉められており入れなかった…………。


 ついでに自宅から、生活必需品を全て持って病院に帰ってきた。

 1週間位入院予定とのことだったからだ。


 そして、病院の自室のベットでのんびりテレビでも見ながら過ごす。 

 すると、ふと思い出した。学校やシュウに連絡しそびれていたことに。 

 ヘルムと一緒に持ってきた携帯を見ると、電池切れだった。

 しっかりと、生活必需品は全てついでに持ってきていたので、その中に充電器も入っていた。

 自分に賛辞を送り、充電し電源をつける。


「えーと……うわっ!」


 画面に表示されたのは――50件の受信メールだった。

 一つ一つ見ていくと……9割がカケルで、内容は殆どがあの迷惑女のことだった。とりあえず迷惑アドレスに登録しておいた。これでカケルからのメールは送られてこない。

 学校へ電話をかけた。階段から落ちて、約1週間ぐらいの入院予定だと伝えた。

 真面目な生徒をしていたので、問題なく受理された。


 そして休み時間を見計らい、カケルへ電話をかける。

 あの女のことをワーッと聞いて来たので、即切って、シュウにかけ直した。

 シュウに今までの経緯を簡潔に話すと、今日見舞いに来てくれることになった。

 朱利に追い出され電話はかからない。さらに鍵閉められとことを話し、朱利の様子を尋ねると少し間が空いた後、俺から伝えておくから明日朝起しに行ってやれ。とのことだった。

 そして電話を切ったところで、レイカさんが入ってきた。


「あれー? 誰に電話してたのー?」

「友達ですよ」

「ふーん、で、何で携帯電話を持っているのかなー?」


 ずいずいと顔を寄せて聞いてきた。……しまった。外出禁止令が出ているのを忘れていた。


「……あー、友達に持ってきてもらいました」と、苦し紛れの嘘をついた。

「そうなの? ふーん…………和手君の嘘つきー!! そんなんじゃ将来、浮気者ー!! になっちゃうわよー!!」


 朝からテンションの高い担当医に困惑する。カケルと良い友達になれるんじゃないか? などとも思う。


「はぁ……」

「次黙って、外に出たら注射ねっ」

「明日の朝出ます」と即答した。

「なにー!?」


 ほっぺを両手で挟んできた。


「言ったから、注射なしですよね」


 剥がしながら言った。


「む……もうイケズなんだからー。っめ! ――そうだ。ところでリルリルが貴方のことばかり話すのよー」

「え、どんなことですか?」

「お、気になる? 気になっちゃう?」


 にやにやしながら、聞いてきた。その面に豆腐を投げつけたい。


「そんな風に言われたら、どんなことでも気にならない人間は居ないと思うんですが……」

「まぁ……そうかな? ぬぬぬー! 上手く逃げたわね!」


 子供の様にホッペを膨らませながら言って来た。18歳だから実際には子供なのかもしれないが、大人びた顔付きと、身長と、職業からは18には見えない。

 しかし、態度は子供としか言い様がない。


「誘導尋問されてる節が……」

「でね、あの子が入院した理由も貴方にあるって言ってるのよ」


 華麗にスルーされた。…………え?


「…………ええええええ!? ど、どういうことですか!?」


 チビ助に何かした覚えはない。必死に思い出すも、現実であったのはここが初めてだ。


「毎晩毎晩、ベットの上でおかしなことしてくる貴方の対処で寝れなかったんですって」

「え?」

「貴方、あの子に何してるのよー?」

「ええ?」


 俺って夢遊病なの? 等と考えうるあらゆる可能性を考える。


「その疲れから来た過労で入院しているのよー? 日本の基準だと、ギリギ小6の12〜3才くらいだったかな?」

「えええ?」


 朱利で見慣れていることから、小さい=若いという思い込みは無かった。それにGMしていることから、同い年か上だとさえ思っていた。確かに子供っぽい言動が目立つこともあるが……。というより、この人が本当の事いっているかも怪しい。しかし、本当だとしたら小6でGMというのには驚きだ。


「まだあんな小さい子を毎晩毎晩……」

「ちょ、ちょっと!! 何か誤解してませんか!?」


 顔を赤らめて反論する。


「え? 何のこと? 何想像してるのよー! 言って見なさい! もうっ、いやんっ! やらしいわよ!」


 体をクネクネさせて、こっちの反応を楽しんでいる。――納豆乗せた豆腐を投げつけたい。


「うぐ、知っててハメようとしてますねっ!!」

「ハメるだなんて、いやんっ」

「も、もう下ネタはいいですって!」


 だんだん疲れてきた……。カケルの場合はシュウを横に配置すれば、解決するが……この人の天敵は居ないのか、と唸る。


「まぁ、それは置いておいて、リルリルが貴方のことばかり話すのは本当よー、珍しいことだわ」

「はぁ……もうVS変人とは関わりを持ちたくないんですが……」本心がつい出てしまった。

「ってことは、私は大丈夫なのね〜」

「自分が変人って自覚ないんですか。というより、レイカさんもVSに関わりがある人でしょう?」


 ここが攻め時と、少し攻めてみる。

 

「あらー、何で分かったの? 鋭いわねー!」


 とぼけると思ったが、あっさり白状した。とりあえずもう少し攻めてみることにした。


「レイカさんの苗字は気斗。分厚い説明書に気斗っていう名前が載っていましたし、チビ助も貴方のこと尊敬してるって言ってましたし、それに、自分が倒れた位置からここより近い病院が1つあったのに、こっちに運ばれた。それにチビ助の隣という偶然。更にチビ助もここに入院している。証拠がボロボロ出てきますよ」

「あらまー……、お見通しねー。……いやんエッチ」


 顔を赤らめながら誤魔化された。これ以上聞けないと判断して、この疲れる人からの脱出を試みてみる。


「そういえば、仕事に行かなくていいんですか?」

「な、なによー! 遠回りにシッシって言うなんて! ちなみに貴方のその怪我、VS絡みなんでしょ?」


 こっちの意図が理解出来ているのなら、素早く去って欲しかった。


「シッシ」

「直接でもダメー。じゃなくて、話を反らさないのっ!」

「ちょっとした交通事故ですよ」

「もうっ! いいわよ、大体はわかってるんだもんー」


 この人の底が見えなかった。――というより、自分は話反らすことが多々あるのに、それは酷いんじゃないかと思う。


「はぁ……まぁ、本当に交通事故の様なものですよ……。ただ、自分で赤信号を渡ってしまったような感じです。自分の考えの足りなさが招いたんで、身から出た錆ですね。警察に行く予定もありません」


 警察なんて行こうものなら、何されるかわかったもんじゃない。それだけお金あるところなら、警察の一つや二つ、手玉に取っていてもおかしくない……。考えれば考えるほど、二度と関わりたくない。


「時々ドSだもんねーっ!」

「う、たまに口が悪いのは分かってます……で?」

「いえ、別に何でも無いわ。そういえば、貴方の治療費と入院費、足長おじさんが出してくれたわよ」

「え? どういうことですか?」

「さー私にも分からないわ、心当たりないの? それじゃあねー」

「ちょっと、VS絡みなんでしょ? って聞いたのはどういう意味ですかー? 足長おじさんと関係あるんですかー? 話反らしているのはレイカさんですよーっ!」

「さぁ! お仕事お仕事〜!」


 出来てないスキップをして行ってしまった。レイカさんは悪い人には見えないが、何か目的があって自分をここに入院させたようだ。怪我のことまで関与はしてないようだが……。いや、本当はボディーガードの中にレイカさんの手下が居て、怪我をさせて、手下のホームレスの下に送って……。救急車を通報してくれた通行人の女性も手下で……考え出すときりがない。


「うぬぬ……早く直してここからさっさと出よう……身から出た錆とはいえ、あんな経験、一生の内に一度で十分だ」


 そして、足長おじさんについて考えてみたが、そのような人物は出てこなかった。


「それにしても、昔から言われている言葉は正しいことが多いな。知らない人について行っちゃダメって、本当にそうだったよ……」


 この言葉は、主に幼稚園から小学生の低学年に当てられた言葉だったと思ってたが、まさか高校生にも……。などと、どんどん脱線してブツブツと独り言を始めた。


 そして、夜

 シュウとカケルがクラブ帰りに寄ってくれた。

 カケルはシュウから経緯を聞いてたらしい。そしてカケルが一言目に言ったのが


「お前羨ましいぞ!!」


 今すぐ回れ右して帰れ!!

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