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25話:呼ばれて飛び出て


「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!! 軍曹でーす!! よろしくっ!!」


 奇想天外が現れた。

 軍曹は出てくるや否や、3回転ジャンプをして、その後両手を上げ、足を揃えるというV字ポーズを決めた――両手はピースだった。その場に居た全員が唖然とした。刷り込みの様に教えられた軍曹の想像図とは遠く離れていたのだ。

 そして自分だけは違う意味でも唖然となった。その訳は、この軍曹昨日のGM、そう、チビ助だったのだ。これは非常に不味い展開になった。既に反則君と呼んでくるくらい、決め付けてきているGMとこんな場面で出会ったらこっちが確実に不利になるからだ。というより、不利にしてくるに違いない。

 頭をフル回転させて脱出方法を考えた。


「えーと、ボタン押したのはー」


 と、チビ助はウィンドウを見ながら言った。


「あ、君だね!!」


 指差した先に居たのは芸能人ばりの綺麗な女性だった。


「はい」

「えーと、ご用件はなんでしょう」

「そこの3人がその方を脅して、殴ろうとしてました」


 その方、と言われた時、顔を不自然じゃない程度背けた。顔を正面から見らないようにする。必死に考えた案がこれしかなかった。


「ふむふむ、嘘はないね? 嘘だったら君はーーアウトー!! になっちゃうよ? 他の皆もこの場で嘘言ったらアウトー!! だからねっ!」


 野球の審判のように大きなポーズを取った。ずいぶんと昨日と違うけど、何か良い事でもあってテンションが高いんだろう。少しだけ希望を抱い

た。


「はい」

「ふむ、それでは3人の言い分を聞いてみようじゃないかっ!! うーん、変にイケメン、マイナス点だな」

「なっなんだと!? このチ「やめろっ!! GMだぞ、こっちの分が悪くなる、黙ってろ」」


 ック野郎が暴言を吐きそうに成ったのを、チチ野郎が止めた。

 変にイケメンとは、おそらく整形したということだろう。


「むむむ!! 何だか聞こえそうだったけど、聞かなかったことにしておいてあげよう、で、言い分は?」

「えー、そちらの少年がチートをした疑いがあるんですよ」

「ふむふむ、その理由は?」


 視線を感じる。必死に変にならない程度に顔を歪めて、怪しく思われない程度に違う方向を向く。


「今回の成績がKILL数20でDETH0ですよ? 初心者なのに」

「お、おい、お前初心者狩りのくせに……「黙ってろ!!!」」


 周りに居た人が、勇気をしぼって言ってくれたのをチチ野郎がかき消した。――死ねばいいのに。


「ということなんですよ、どうですか?」

「うーん、チートかー。昨日にも……」


 チビ助は顎に手をやり、何かを思い出そうとしている。

(や、やばい!!)

 心臓がバクバクなる。


「んー、とりあえずそこの少年、チートしたのかい?」


 声を必死に変えて、低い声で


「し、じでまぜん」

「ふむ、まず一試合見させて貰おう」


 というと、ウィンドウを何か操作しだしたら、草原の空に大画面で先程の試合が流れ始めた。


「皆のもの! 苦しゅうない! 寝転がって見よ! チートをしたと思われる部分があったら言うんだぞい!」


 と言うと、チビ助は草原に寝転がった。言われた通り、皆も寝転がった。

 その中で、3人の顔は青ざめていった。

 空に映っているのは、Wateを常に捕らえている動画だった。

 始まりから、広場の者達を一気に倒していく姿には皆が歓声を上げたので、恥ずかしかった。

 が、そんなことより今後の事が気が気じゃなかった。


 そして、動画のWateはウィンドウを開き操作し始めた。


「ぬぬ! これで何かやっているのか!?」

「ヂャッドを見ているだげです」


 必死に低い声を演出する。しかし、


「む、何言っている聞こえないぞ」


 と言いながら立ち上がって、近づいてきてしまった。


「ち、チャットを見てるだけです!!」


 言い直すが、時既に遅かった。

 寝転がっていた顔の上から、油断していたので顔を歪めるのも背けるのも忘れていたところへ、チビ助が覗き込んできたのだ。


「む!」


 終わった。――と思ったら


「んーむ、どこかで見たことある顔だな……。どこだろうか……。まぁいっか、それに変にイケメンじゃないから中々ポイント高いぞ!」

「あ、あ、ありがとうございます」


 予想外の展開だった。重度の天然ボケなのだろうか? とりあえず助かったのでそのことは横においておいた。


「うむ!」


 とチビ助は言うと、どっか行けばいいのに、真横に寝転がった。

 念のため、顔はいがめ続ける必要があった。顔が戻らなかったら訴えてやる。


 すると、動画は3人組みが現れる場面になった。

 そう、暴言の数々を吐きながらやってくる場面だ。

 3人を見てみると頭を抱えて、終わった。って表情をしていた。


「これはアウトー! だな! 成績とログも見てみると……さらにアウトー! だな! うむ!」


 た、たすかったー。と思ったが、甘かった。


「しかーし! チート問題とはまた別だな! うむ!」


 まだ動画は続いた。自分の頭から血の気が引いて行くのが分かった。

 そして手榴弾を2つ投げた時は、


「3人のど真ん中で手榴弾止まったぞ!」

「1個目のは失敗じゃなくて囮じゃないのか!?」


 等と口々に歓声が上がった。

 その中でもチビ助は


「ふむ……」


 何故か納得してない面持ちだった。チートしてませんからっ!

 そしてチチ野郎を倒し、その死体の前に立って、例のWateのセリフが流れた。


『弱いですねー、それでもチン『ピー』付いているんですか? 広場に居るんでリベンジ待ってます』


 今までとは違った歓声が上がった。

(終わった。ああ、何であんな事言ったんだ……はぅ……)

 その時、犯罪をして後々後悔している人の気持ちが分かった)


「ふむっ!」


 そして、そこで何でチビ助は笑顔なんだっ!

 3人と同じ様に頭を抱えるはめになった。

 後は一方的に3人がやられる動画が続き、終始歓声と、チビ助の納得していない顔が続いた。


 動画が終わった後は続けて草原での様子も流れ、3人は決定的にアウトだった。

 動画が全て終わり、チビ助が声を高らかに上げ、立ち上がった。


「さーて! 判決をくだそうではないかー!」


 チートはしてないし大丈夫なはずだ。しかしチン○発言……。これがどうなるか……。


「まず! そこの3人! まず殴ろうとした君は、3感覚の罰!! 後の2人は2感覚の罰!!」

「……その感覚の罰ってのは何なんだ?」


 唯一無気力になっていないチチ野郎が答えた。


「それはだね……。5感の内の、幾つの感覚の罰があるかってことだよ!」

「だから、それは何をされるんだ?」


 少しイライラしているのかチチ野郎が不躾に聞いた。


「そーだなー、例えば味覚なら、ワサビ1kg食べ続けるとかだよ!」


 想像をしてしまって、吐気を覚えた。


「ほ、他のはどんなのなんだ……?」

「もうっ! しつこいね君はっ! 聴覚なら人間が嫌うありとあらゆる音を24時間聞かされるとかだよ! もういいかい!?」


 チビ助はほっぺを膨らませて言った。


「な、なんの権利があってそんなことを!!」

「ふふん、私は軍曹なのだよきみぃー!」


 チビ助はチッチッチと言いながら指を左右に振って言った。その動作が勘に触ったのか


「ック!! このチビグ『ピー』野郎!!」

「ッハ!! そんなことされてたまるか!!」


 ッチ野郎とハハ野郎は2人でチビ助に飛び掛って行った。

 横目で見ていた和手は思わず飛び出した。

 しかし、チビ助の前に立とうとしたのに立った場所の後ろにチビ助は居なく、チビ助は目の前で2人の野郎を打ちのめして立っていた。


「君ィ!! 言っては行けないセリフを口にしてしまったねぇ!! 2人とも4感覚の刑だねぇ!!」


 その声は、気を失っている二人には届かなかった。


「さて、後は少年! 君の判決だけだね!」

「うっ……」

「君は無罪! 女の子も本当の事言ってたので勿論無罪! 勇気を持って私を守ろうとしてくれた君と、勇気を持って軍曹ボタン押した女の子には後で何か送るよベイベイ! 周りの人達もお金1000ゼニー送っとくよ!」


 いいぞ譲ちゃん〜、わかってるね〜。なんて歓声が飛んだ。


「よ、よかったぁ〜」


 大きくため息をつき、草原に倒れこんだ。

 そして周りから、良かったなボウズ! 等と労ってくれた。


「しかーし!! チートが発見された時は5感覚の刑だからねぇい!」

「ええええええええええええええ???????」


 勢い良く上半身を上げた。


「何だね、やってるのかね?」

「い、いえやってませんが……」


 チートではないと思うけど、今はポインターのことを言うのは保留にしておいた。

 どうせ言うならチビ助以外が良いというのもある。


「では、これにて解散!」


ブウンッ


 チビ助が言うと、元通りの明るい草原に戻った。


「ちょっと、聞いていいか? その感覚の刑は絶対に受けないといけない物なのか?」


 と、黙っていたッチ野郎がおもむろに聞いた。


「それはだねぇ! 受けたくないならバーサスにもうINしなかったらいいんだよ!! 追放か、罰を受けるか。どっちかだよ!! まだバーサスやりた

かったら受けることだよ!」


 実質上の永久追放の様だった。


「ふむ、そうか、わかった。寝ている2人は受けないだろう。しかし俺は受けてお前にリベンジをする! 覚えておけよ……」

「おおう! 受けるというのかね! 今まで受けきった者は居ないから楽しみだね!」


 勝手にライバル意識を持ち出したチチ野朗に、チビ助は目を輝かせていた。サディストかこいつ!


「もう面倒事は勘弁です。2度と話しかけてこないでください」と言うが

「なにっ!? それはだめだね! 男らしくないぞ! よってリベンジを許可する!」

「う、うぐぅ……」


 何故、お前が決める? と言いそうになるが、GMだ。言い返すことが出来なかった。


「さて、それではこの3人を連行する! シュワッチ!!」


ブウンッ


 3人とチビ助が消えた。


「ふぅー……やっと終わったよ……休憩しよっと。…………疲れた…………」


 もうこりごりだ、とばかりに肩を落としながら立ち上がり、自室へ戻ろうと歩き出した時、


「待って!!」


 軍曹ボタン押した綺麗な女性に呼び止められた。


「あ、どうも、押してくれてありがとうございます。それじゃあ」


 早く休憩したかったので、そそくさと立ち去る。しかし、それは許してはくれなかった


「待ってって言ってるでしょ!!」

「何か用事……?」


 怪訝な顔で返事を返す。


「あ、あの、私と、友達になってくれませんかっ!?」

「ええええぇぇぇ?」


 周りからはヒューヒューと声がかかる。

 こんな、さながら告白シーンに近いような状況にはなったことない和手は戸惑った。

 相手を良く見ると、女性というより少し年上ぐらいのようだった。しかしとても綺麗だ。タレントとなんら遜色は無い。ここまで綺麗なのは整形したからかもしれないが、元も綺麗だろうと予想できるほどだ。


「え、えっと……こんな俺でいいなら……」

「あ、はいっ! ありがとうございますっ!」


 はいっ! の後にはハァトマークが付いている様な声で、嬉しがっていた。

 そんな声にこっちが赤面してしまった。


「友達登録送りますねーっ」


 するとウィンドウが勝手に開き、真ん中に『あや様と友達になりますか?』と出ていたので、YESを押した。


「これでいいのかな……?」

「OKよ、で、貴方Wateでしょ?」


 急に声が可愛くなくなった。雰囲気も可愛さオーラが全くなくなった。代わりに、面倒ごとを持ってきましたオーラを展開した。それを直感的に感じ取り、やっかいなのにからまれたことが分かった。


「名前見たら分かるだろ……?」


 溜息をつきながら返事を返す。


「私の訓練に付き合って!!」

「えーと……。えっと、訓練は1人専用ですよー。それじゃあー!」


 めいいっぱいの引きつった笑顔で言った後、猛ダッシュで逃げた。


「なっ! そうなの!? あ、ちょっと、ちょっと待ちなさいよっ!!」


 後ろから声が聞こえるが無視してゲートに飛び込んだ。



 そして、自室のソファーで横になり休憩しようと倒れこんだ。

 しかし、またしてもそうは許してくれなかった。


『ピンポーン』


 音と同時にウィンドウが勝手に開いたのだ。

 ウィンドウに表示されていたのは


『綾様が自室への入室を求めています。許可しますか?』

『NO』


 迷わず押した。


『ピンポーン』

『綾様が交信を求めています。許可しますか?』

『NO』

『綾様を友達から削除しますか?』

『YES』


「何だよもう……俺みたいに平凡じゃないカッコイイ奴に頼めばいいのに……あれだけ可愛かったら幾らでも頼んでくれる奴はいるだろうに……」


 何てブツブツ言いながらソファーに顔を埋めた。

 さっきの、綾っていう女の子は、和手が顔を赤らめるぐらい可愛く綺麗だったのだ。しかし、今は疲れていた。それに訓練なんて手伝うとこっちの遊ぶ時間がなくなるのは目に見えている。絶対に避けなければならない。

 その後10分程度休憩すると、ストレス発散に無性に体が動かしたくなったので戦場に出ることにした。

 戦場は適当に選んで入った。その適当の中には初心者部屋は含まれていない。もう入らないと心に誓ったのだ。初心者部屋=面倒ごと。と和手の中で半ばトラウマになりかけていた。

 その後の戦争は、鬼の形相で(見えないけど)、撃たれても気にせずとにかく突っ込んで戦い、嫌いな接近戦も好んでこなした。その日の強制ログアウトなるまで、休憩なしで連戦に連戦を重ねた。



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