24話:初心者(仮)
始まりの場所は広場だった。目の見える範囲に数人居るのが確認できた。
今度は気づかれていてポインターがこちらにも飛んでくる。
まずはポインターを向けてくる相手を優先的に倒していった。
そうこうしていると、いつの間にか広場には自分だけになっていた。
落ち着いて周りを見てみると、どうやら広場がMAPの真ん中で、そこから広がるように狭い路地が広がっているようだった。
路地を覚えきるまでは、広場以外迷路のように感じさせるMAPだった。
わざわざ迷路に入るのも、あれだったので、広場で人が来るのを待つことにした。
少し待ってみるが、来る様子がなく暇だったのでウィンドウを開いてみると、チャット欄があった。
そこには今までのログが乗ってあった。
『Wateがトニーを倒しました』
のようなログが事細かに流れている。
過去のログには、先程の試合のログも残っていた。色々と弄ったり、見たりしていると新しく発言が出てきていた。
『おい! 3人で組んでいるやつらは一体何だよ!』
『俺も見たぞ! 幽霊の時にしっかりと確認したから確かだ!』
ふと、ポインターが視界に入った。
すかさずアサルトライフルを構え、ポインターを向けて来た相手を撃った。チャットを見る事に集中しすぎていた。
安全を確認してから、再びチャットを見ると、
『初心者狩りだぞこいつら! 成績を見てみろ!』
『本当だ、3人ともKILL数1000超えているぞ!!』
『す、すみません、騒ぎのせいで確認しそびれました……』
ホストの謝罪があり、そして後は初心者狩りへの、帰れコールが連なっていた。
もしホストが確認していたとしても、始まる時間ギリギリに入って来る。などと姑息な手を使ってくるのが初心者狩りなので、追い出せたかどうかは分からない。
そこでウィンドウは閉じ、戦争に集中することにした。
初心者狩りという存在は他のゲームでも存在した。和手はその初心者狩りが嫌いだったので、初心者狩り狩りをしていたぐらいだった。
なので、ここでも初心者狩りを倒したいという気持ちになったが、流石に慣れている人達が3人固まって居るとなると、倒せないだろうけど、一泡は吹かせてやりたかった。
広場でそのまま待つことにした。時折現れる者を冷静に倒し、3人が来るのを待った。
3人で固まって動いているということは、広場に来る可能性が高いと判断したのだ。
狭い路地はぎりぎり2人通れるぐらいの幅なのである。3人揃ってチームプレーには適していない。
すると、思惑通りやって来た。
「ハッハッハ!! 弱いなー!! 雑魚どもがっ!!!!」
「悔しかったらかかってこいよ!!!! ほらほら! ナイフしかもってないよー!」
「そう言いながら、来た相手にはアサルトライフルで蜂の巣にするくせに良く言うよな、クズが」
「そういうお前が一番クズだろ! 倒れてる死体にもずっと撃っているこの変態が!!」
「やるのかお前?」
3人が大声をたてていて。遠くからでも分かった。何とも分かり易い標的だ。
物陰から見てみると、狭い通路を3人揃って来ているのが見えた。
しかし、3人ともしっかりと周りを警戒し、アサルトライフルもしっかりと構えている。
そこで手榴弾のギリギリの範囲内に入ってきた3人に、ピンを抜いた手榴弾を玉入れの要領で高く3人に向かって投げ、すぐさまもう1つ、ピンを抜いた手榴弾を今度は勢い良く投げた。
一つ目の手榴弾が自分と3人の間の上空で爆発した。その爆発に目を奪われた3人の丁度真ん中に手榴弾が旨い具合に転がって止まった。
「やばい! 逃げろっ!」
気づいた1人が咄嗟に大声を出し飛び退くが、残りの2人は反応出来なかった――。
「ッチ、2人やられたか。だが俺はクズ二人とは違うからな。出て来いよ。その物陰に隠れているんだろ?」
今の手榴弾を逃れ、さらには場所までばれているとは中々骨のある相手のようだった。
そして場所がバレていたので、すぐに撃ちながら飛び出した。――が当たらなかった。そして広場で対峙する形となった。
二人とも銃からポインターは出ていない。それに気づいた相手は
「な、なんだお前! 初心者じゃないな!」
「初心者ですよー」
落ち着いた声で返事を返した。
「ッチ、ふざけやがって、死ね!」
相手はアサルトライフルを構えると直ぐに連射してきた。
今までの相手とは違って、ポインターが出てない分弾を避けるのは難しかったが、相手の精度が悪いのか足に一発貰っただけだった。そして再び物陰に隠れた。
「チッ、逃がしたか。こっちは一発当てたぞ?」
「そっちは爆発でダメージ被ってませんか?」
「チッ! うるさい餓鬼が! さっさとかかってきやがれ!」
本当だったようで、顔が真っ赤になってるのが想像出来る。
「3人の内の唯一のポインター無しの、上手そうな人と対戦出来ると思って倒さないように様子見てたけど……。興醒めですねー」
「なんだと!? 口だけの餓鬼が!! やれるもんならやってみろ!」
「はい」
物陰から拳銃をサイドスローで投げつけると、すぐに飛び出し拳銃に目を奪われている野郎に、アサルトライフルで頭に三点バーストを決めた。
倒れていく体の前に立って
「弱いですねー、それでもチン『ピー』付いているんですか? 広場に居るんでリベンジ待ってます」
そしてその後、3人揃ってリベンジに来た初心者狩りを計3回狩った。
『20KILL達成者現れたので、帰還します』
ブウンッ
『お疲れ様でした。Wate様が20KILL達成しましたので帰還しました』
『3分後にまた戦場に戻ります』
「ふう、中々楽しかった」
今回も前回と成績は同じで、
――『Wate』KILL 20 / Deth 0
とパーフェクトなスコアだった。
「おいおいおい!! どこだチート野郎!!」
どこかで聞いた様なセリフが聞こえてきた。
そっちを見てみると、3人が草原にいる人間を1人1人名前を確認していた。そして、こっちを見ると揃って向かってきた。
「おい! お前か!?」
「はいー?」
「とぼけてんじゃねぇ! その声、お前がWateだろ!」
「そうですよー」
淡々と返事を返すと、顔真っ赤な3人が猪の如く、突っかかって来た。
「お前、チートしただろ! じゃないと俺があんなに負けるなんざありえねぇ!!」
「してませんよー証拠はあるんですかー?」
「ック! なら、軍曹呼んでも良いんだな!?」
「どうぞー」
と言うと、相手はウィンドウを開いた。しかし、それを止める様に横に居た男が言った。
「まて! 軍曹はまだだ。……さて、小僧、調子に乗りすぎたな。痛い目見たくないなら、有り金全て出せ。それなら許してやらんこともないぞ」
「ハハハ! そうだ、今なら金で許してやる」
「嫌ですー、軍曹呼んでくれていいですってば」
淡々と言う。
「ック! 減らず口を叩きやがって! 痛い目見たいんだな!?」
急に胸倉を掴んできた。こいつはック、ック言うので、ック野郎と名づけることにした。
もう1人はハハ野郎。もう1人はチチ野郎。
ひ弱な自分が、こんな状況になっても怖くなかった理由は、まず戦場で普通に勝てていたことと、度胸試しで殴られることに耐性がついていたからだった。
「痛い目は見たくないです」
「なら金を出せ!」
「嫌ですー」
「ック! この野郎!!」
ック野朗が腕を振り上げた所で、アナウンスの音なんて非じゃない程の音が響いた。
ビービービービービービービー
『鬼軍曹コールが押されました。よって、この場所は隔離されます』
するとゲートは消えて、昼のように明るかった空が一気に赤黒くなった。
「だ、だれだ! 押しやがったやつは!」
「クソッ!」
ハハとック野朗は急に慌て出し、ック野朗は胸倉をつかんでいた手を離した。
「落ち着け、こいつがチートしたんだ。俺らは悪くない」
とチチ野郎が言ったところで、
ブウンッ
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!! 軍曹でーす!! よろしくっ!!」
奇想天外が現れた。