20話:コンビネーションゴジラ
「『応用:二人』だ! 今度は二人、コンビネーションアタックを倒せるかな……? スタート!」
ブウンッ
さっきと同じ岩場だった。
とりあえず、背中に岩をつけ、耳を済ませながら辺りを窺う事にした。
場所まではわからないが、黄土マンとは違い、足音がどこからか聞こえてくるのがわかった。
だんだんと近づいてくる。銃を構え、待つ。
……来た!
岩場から素直に黒尽くめが出てきたので、余りの安直さに驚いたが、すかさず頭に三点バーストを決めた。――が、同時に後ろから銃撃され、あっけくやられてしまった。
ブウンッ
「なるほど……、コンビネーションアタックか……うぬぬぬ……」
胡坐をかいて座り、対策を練る。
今度はすぐさま閃いたので、実行に移す。
ブウンッ
銃を構え、待つ。足音が近づいてくるのがわかる。
先ほどと同じ側から一体の黒尽くめが現れた。反対側を見ると、そこにも黒尽くめが居た。
そして同時に撃たれ、やられた。
ブウンッ
「よし! 15秒!」
そう、相手が来るまでの時間を計っていたのだ。
一回目と比べても、ほとんど同じだと思ったので、閃いた作戦は通用しそうだ。
この訓練相手はNPCのようで、鉄ウサギ同様、行動パターンが同じということがわかった。行動パターンがわかると、対処するのは楽なのだ。
今までのシューティングゲームでもほとんどがそうだ。相手の出て来る位置が、時間は大体同じなのだ。
ブウンッ
銃も構えず、目を閉じて、時間を正確に計る。
現れるまで残り10秒の所で、手榴弾を二つ手に持ち準備する。
5秒前、二つとも同時にピンを抜いた。そして左右の黒尽くめが現れる位置に、時間通りに爆発するように投げた。
すると時間ぴったり、手榴弾ぴったり、黒尽くめが姿を現すや否やそのまま爆死してくれた。
『Congratulation!!』
ブウンッ
「……これも立派な作戦だ! たぶん…………うーん、まぁいいか」
何とも味気ない感じがしたが、クリアーしたことに違いはない。気になったらその時また再挑戦したらいいのだ。そして『複数』を押した。
「『応用:複数』だ! 今度は今まで違って、難易度かなり高いぞ! 製作者達も、誰一人クリアー出来なかった程難しい訓練だ! なぜそんなに難しいのか? って? それは、次のアップデートまで時間を稼ぐための物だからだ!! オンラインゲームなら、いるだろ? 倒せない程強いラスボスみたいな存在が。いわゆるそれがこれだ。まぁ、次のアップデートの時は調節という名の元、予定通りに難易度下がるだろうから出来なくてもめげるな! というより、俺もこれをクリアー出来なかったから、クリアーすんなよ! わかったか!? クリアーすんなよ!! 芸人がアイドルに徒競走で勝つようなもんだぞ! 空気読めよな!」
あまりのぶっちゃけ具合に口を開いたまま聞いていた。
ブウンッ
「……誰が芸人で、誰がアイドルだ……。アンタはどちらかいうと、アイドルというより、アイドルをストーカーする人の方だろ」
ブツブツ言いながらもしっかり周りを確認した。フィールドはもう見慣れた所。岩場だった。
耳を澄まさなくても聞こえるぐらい、多くの人数が向かってきている音があちらこちらからしてきた。
今居る位置は、一本道の真ん中辺りの場所で、長さは25Mぐらいだろうか、とりあえず岩に背をつけて左右を警戒しながら待つことにした。
すると、右側から黒尽くめが現れた。
相手が撃つ暇を与えず、3点バーストで頭を撃ち、倒した。は、いいが、すぐに次の黒尽くめが姿を現し、それもすかさず倒したが、その時には後ろから攻撃を受け、振り返った時にはやられた。そこには黒尽くめが二人居た。
ブウンッ
「うぬあーっ!」
その後、『二人』の時と同じく、時間を計り、手榴弾を投げてみた。
初めの何人かは手榴弾で倒せたが、その後に来た敵達によって反撃空しくやられてしまった。
その後、特攻してみるも、物量の前には歯が立たなかった。
その後、この訓練は放置して、次に行こう。と思ったが、軍曹を見ると、ほくそえんでる様に見えて、半分自棄でナイフで特攻してみるが、勿論駄目だった。
その後、幾度となくあれやこれや試してみるが、どれも物量の前には叶わなかった。
その後、「うらああああああ!!!」ほとんど自棄で適当に投げた手榴弾が岩を前回同様、崩して落ちてきた。――その時ピーンと来た。
その後、岩に向かって片一方を封鎖しようとしたが、何度試しても封鎖するぐらいの岩を崩し落とすことは出来なく、砂埃を上げるだけで、ピーンと来た甲斐空しく、失敗に終わった。
「…………無理っぽ。せめて手榴弾が数十個あれば何とかなー」
砂場の上で寝転がりながら――拗ねながら――ぼーっとしていた。
「あいつならどうするだろなー……ナイフ一本で片をつけそうだな……うーん、参考にならない。手持ちの手榴弾を全部一気に爆発させても封鎖出来なかったし……片側だけでも倒せたら後は何とかなりそうなんだけど……それも手持ち全部使っても倒しきれなかったしなー」
考えても良い案は思い浮かばなかった。半ば自棄になり、何も考えることなく地面の砂に指で全く関係ない絵を書いていると
「ん、いや、まてよ……うん、これならいけるかもしれない。後は火種をどうするかだけど……、これを撃てば……うん、いける。いや、駄目か? でも、このゲームの売りはリアル感みたいなことも書いてたし、体感もリアルと変わらないし、出来る可能性の方が高いよな……? うん、ダメ元でもやってみるっきゃない!! きたきたきたー!!!!!」
どうやら、和手の中での一休さんポーズ――良い案が浮かぶ方法――は、寝転がりながら――拗ねながら――地面に絵を書くということなのかもしれない。
ブウンッ!
開始と同時に持っている手榴弾を全て右側の曲がり角(T字)にばら撒き、反対側へ急いで行った。
曲がり角に出ると大量の黒尽くめと出会うことになるので、曲がる直前で、時間を待つ。そして開始から10秒後であって、黒尽くめ達が現れる5秒前、膝を着き銃を構え、先程置いた――スタート地点から見て右側、今は正面の曲がり角に置いた――手榴弾を撃った。
手榴弾が一瞬の間に連鎖して爆発し、衝撃波が離れたここまで届いたが、膝をついて体を固定していたので、倒れることは避けれた。
黒尽くめが現れる時間が迫っているので、急いで弾倉を取り出し、爆発地点、大きく砂煙が舞ってる所へ思いっきり投げた。
そして、すぐさまアサルトライフルを構え、弧を描いて飛んでいる弾倉に狙い定め、砂煙の中に入った瞬間を狙って撃った。
当たったのも確認せずに、撃つと同時に体を反転させて曲がり角(T字)へ――黒尽くめの集団の中へ――飛び込み、倒れるように伏せた。
こちらへ黒尽くめ達が狙いを定めようとした時、巨大な爆発――粉塵爆発――が起こり、伏せていた状態でも体が持って行かれる衝撃を感じたと同時に、粉塵爆発で起きた爆風は自分を包み、周りに居た黒尽くめ達も勿論包んだ。もろに爆風を受けた背中は少しピリピリした。
衝撃が来ることは覚悟していたが、まさか爆風が届くとは予定してなかった。自分も巻き込まれて死んだかと一瞬思ったが、伏せていたお陰か生きていた。が、周りの黒尽くめ達も生きている様だった。しかし、黒尽くめ達は立っていた分、衝撃により大きく吹き飛ばされ、地面に無様にへりつくばっていた。このチャンスを逃すわけにはいかない。すぐさま立ち上がり、起き上がろうとしている黒尽くめ達の頭を拳銃で正確に撃ち抜いて行った。
爆風によってダメージを受けたのか、一発で倒せる者も少なくはなかった。となると、自分もある程度ダメージを食らっている事が予想されるので、相手の攻撃を食らわないためにも迅速に倒していった。
しかし数が多すぎたので、倒しきれず、一本道の方に引き返した。そして、後は現れる敵を一体ずつ確実にし止めていくだけという、とても楽なものとなった。反対側からは敵が出てこなかったので粉塵爆発で一掃出来たようだ。
『Congratulation!!』
「……ないわー本当にないわー。お前KYか、KYだろ。KYに違いない。今すぐVSやめちまえ!! 俺の前を歩くな!! ……うぅ負けた……ぐすんっ……」
軍曹は目を擦っていた。変態はほって置いて、次は待ちに待った最後の『おまけ』だ。
しかし流石に一本道に引き返してからの数十体の黒尽くめの退治には疲れたので、少し休憩してから『応用:おまけ』を押した。
「いよいよ、最後の訓練だ! 『応用:おまけ』未曾有の被害を食い止めろ! 蟻vs像! スタート!」
「え? え? え? ……勿論こっちが蟻だよね……?」
ブウンッ
『ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!』
光景が目に入るより先に、獣の叫び声が聞こえた。
そして、目に映ったのは、破壊されいく町と大きな恐竜――ゴジ○。
武器になりそうな物はいつもと変わらず、アサルトライフルと手榴弾。一応、ナイフと拳銃。
(バズーカや戦車でも役に立つかどうかなのに……)
暴れるゴ○ラにとりあえず、届きそうな距離まで近づき、横から左足の小指に――小指と言っても一軒家程の大きさである――アサルトライフルを連射してみる。――反応なし。
当っているはずなのに、何のリアクションもない……。皮膚は鉄よりも硬いようだ。
そして暴れているのに巻き込まれない様に近づいて、手榴弾を届くギリギリの距離から投げてみた。――反応なし。
足元で小さな紙風船が割れても気にしないってことでしょう。
直感が告げる。無理。
しかしここまで来て諦める訳にはいかない、とりあえず一応武器のナイフと拳銃を試してみることにした。
ナイフ、投げてみた。――勿論届かない。届く距離に行くのは自殺行為のように思われたのでやめておいた。
拳銃……
「うわっ!!!!」
小さな銃口からは、有り得ないことが有り得た大きさの、黒くて丸く、そして導火線が出ていて火がついている、古風な爆弾、子供が書くような爆弾(●~")が勢いよく発射された。一見ボーリングの玉にも見えなくはない。しかし大きさは桁外れだ。ボーリングセンターの屋根の上についているピンを倒せそうなぐらいの大きさである。
そして、その勢いは地上からゴジラの頭に届くほどだった。反動は普通の拳銃と変わらなかった。そうでなかったら、反動で腕が引きちぎられて、体は大きく吹っ飛んでいたと思う。
爆弾はゴ○ラの小指に直撃し、ゴジ○はこちらを見るやいなや向かって来た。とりあえず体や頭目掛けて連射するが、それでも○ジラは向かってくる。――大きな顔が近づいてきた。
ブウンッ
反撃虚しく食べられてしまった。ジュラシックパークの方が格段に易しいと思われる。
「うーん……小さいものが大きいものに勝つパターンは、やはり有名なのが一寸法師かなー……あまり気がすすまないけど、やるしかないかっ」
気合を入れて、リベンジを開始した。
ブウンッ
適当に撃ちゴジラを引き付ける。先ほど同様、ゴジラの口が近づいて来る。そして限界まで引き付け、こちらを食べようと口が開いた瞬間を狙って連射した。
しかし口の中も強固に出来ているのか、全くと言って良いほど効き目なく、呆気なく食べられてしまった。
ブウンッ
「ぬう、トラウマになりそう……。考えてみれば口から光線出す化け物が、口の中弱い訳がないか……」
少し凹みながらも、もう一つのセオリー通りに挑んでみることにした。
ブウンッ
ゴジラの足にひたすら連射。そう、足元から崩していく作戦だ。すると黒色だった足が徐々に灰色に、そして白色になった時、こちらに向かってくる途中で壮大に、コケタ。
チャンスとばかりに、無防備な頭に目掛けて連射する。何十発と撃った時、ゴジラが動き出し立ち上がった。
すると、頭の部分が少し灰色に近くなっていた。しかし、足は白から再び黒色に戻っていた。
これらのことから、推測される倒し方が確立した。なので、あとは何度か繰り返すだけで倒せてしまった。
最後の方では、口からビームが幾度となく発射されたのには冷や汗ものだったが、運良く直撃せず生き延びることが出来た。
『CoCoCoCoCongratulation!!』
「おめでとう! まさか応用もクリアーしてしまう輩がいるとはなー! ……ッケ、このKY野郎……今すぐログアウトしてしまえ。そして二度と来るな。そうだ、そうしろ! ………………うぅ、ダメ? ねぇダメ? どうしても?? …………称号の授与します……」
「……どんだけ悔しがってるんだこの人……」
男の泣き落としなんてものには動じない。むしろ虫唾が走る。
『称号『応用:見習い』を授与する!』
「何とも微妙な名前どうにかならないのかなー……」
「早速つけて置いてやろう」
『称号『応用:見習い』を装備しました』
肩を見てみると、絵柄は今まで全ての絵柄が合体した様な絵だった。人が右手に拳銃、肩からアサルトライフル、腰にはナイフ、胸辺りには手榴弾三兄弟となっていた。
「『応用:見習い』の効果は、拳銃、アサルトライフル、手榴弾、ナイフを使う時、反動が小さくなったり、飛距離や威力が増えたりするぞ。それにスタミナも減りにくくなる」
「おえっ!? 何その性能!!!! チート? ねぇ、これチート?」
あまりの性能の良さに、今までの訓練あってこそ応用がクリアー出来たわけだが、応用以外しなきゃ良かった何て考えてしまうほどだった。
「しかーし! 『拳銃:見習い』等の称号の2分の1程度の+補正だ」
「そ、そうだよなー……。となると、より使分けが必要になりそう……。うわぁ、めんどくさそう……」
そう、和手は今まで貰った称号を訓練毎に付け替えるなどせずに、付けて貰ったままのにしていたぐらいだ。
「それじゃあ、今後も訓練に励むんだな! 頑張れよっ! ちなみに、見習いの称号を全て揃えた時、新しい称号が手に入るからなっ! その性能は手に入れてからのお楽しみってもんだ……。ふふふ……」
「おぉぉ!? フラグ立った!? ん……? まてよ、もう見習い全て手に入れたんじゃ……『Congratulation!!』『Congratulation!!』『Congratulation!!』『Congratulation!!』『Congratulation!!』『Congratulation!!』『Congratulation!!』『Congratulation!!』」
辺り一面からコングラチュレーションが連発で響き渡り続けた――。