#3 浜松旅行-1
夏休みといえば海である。ボクにとって夏休みといえばキャラメルアイスである。二つの利害の一致が重なった結果、ボクは柊念達と浜松に行くことを決めた。
今日は当日だ。ボクはそもそもテレポートで忘れ物を回収できるから準備もクソもないのだが、万が一に備えて完璧な荷造りを完了した。さてと、家族全員寝てるしダル絡み前にさっと出発するか。鍵をかけて、と。
「よォダークドラグーン!」
下からアホの声が聞こえるがボクには聞こえていない。聞こえていない。
「音聖の家凸ろうぜ!」
勝手にしてろ。しかしお前らその格好は舐めすぎだろ。公共交通機関に乗るんだぜ?せめてもの短パン。
「そういう隆斗もその犯罪者みたいな格好怪しすぎるぜ」
「EPS細胞?」
「それは黒歴史!」
自分で言うなし。
音聖の家にはボクと柊念で行くこととなった。ボクはテレポートで侵入したのが1回きりだし、柊念はそもそも完全初見だ。
インターホンを押すと、聞いたことない女子の声が応答した。
『音聖のお友達?アイツ今朝シャンしてるから入って待ってなよ』
「「はい」」
懇親のポーカーフェイスならぬポッカンフェイスをしていると、中からドアを開けてくれた。
あ、お姉さんか。にしては音聖と声の質がまるで違う。音聖の部屋は、予想だと歌い手グッズとかで溢れかえったバイトの控え室みたいな部屋。実際はそこまで酷くなかった。
「なんだこのノート?『神人ノ掟』?厨二病かよ!」
お前が言うと説得性に欠ける。
「1、神の下では隣の人とも皆平等である。」
キリスト教!
「2、愛を慎み、黄金律を讃えよ」
キリスト教!
「3、節制こそ美徳」
イスラム教!
「てかこれ仏教じゃね?」
流石は宗教史満点。
「おまたせ…それ読むな!」
「お前仏教好きなんだな!」
「「仏教のことどこにも書いてなくね?」」
やれやれ、IQが下がる。
浜松にはJR東海道本線や小田急を使って到着した。ボクが全員をテレポートさせた方がよほど早いが、柊念と音聖と凪那以外には超能力を隠しているからダメだ。
浜松駅からタクシー数分。柊念が選んでくれたリゾートホテル。実際のとこ全員自腹だから有難みはないのだが、コスパとセンスは賞賛に値する。
「いらっしゃいませ。」
「8名で予約しました、堂春です。」
やけに高ぶってんな。
「10階のダブルで4部屋様、2泊で間違いないでしょうか?」
「はい」
「こちらがルームキーでごさいます。こちらのチェックインカードを御記入の上、身分証明書と共にもう一度お越しくださいませ。」
さてとキャラメル…キャラ…あった!まさかホテルの自販機に『キャラメルスイートコーン』があるとは。てか皆何話してんだ?
「りゅうちゃん!部屋に荷物置いてビーチ直行!いい!」
マジデスカ。てか音聖、りゅうちゃんってなんだよ。
「じゃあ超」
内密にな。ルームキーのデザインが厨二感あってよき。
「なぁスポーツマン、お前泳げるのか?」
「一応得意だぜ?」
「へぇー意外!先にプールで競走しないか」
望むところだ。本気だしたら地球数週はしてくる。
「おもしろそうだ。オレも混ぜてくれェ!」
バタ足できるのか?
「一応スイミング習ってたからな!」
それはめでたいな。1週間だけなのが笑える。
「俺もプール行きてぇ!」
男子勢集まったな。因みに女子勢は見物してるらしい。ホテルの最上階。普通の25mプールだが、仕切りの隣には小規模なウォータースライダーが配置されている。ボクは黙々と潜水していよう。
「傭兵2人は凄いな…。オレのガタイとは次元が違う」
お前はもやしだからな。
「スポーツマン意外と普通の体型なんだな。脚だけ太いとかだと思ってた。」
お前はどんな想像してんだよ。
「そこのもやし腕筋だけやべぇ!」
「一応超ニズムやってるからな。」
なるほど。
さて、一番乗りで無人のリゾートプールに…。
「やあ!息子よ」
いやなんでいるんだよ。
(俺はその辺のおっさんマッチョでいいから、気にせんで遊んでくれ。)
まさかこっそり着いてきたのか?
(実は車で来たんだよ。彼女さんについても知っておきたいし)
なるほど。隆奈のリア充化を手伝ってくれ。
(そっちもだな!さて、ウィンドウから見てるから楽しんで泳げよー)
適当なときに帰ってね。
(勿論だぜ)
その後、ボクは普通に25mプールをクロール(息継ぎなしver.)で遊泳し続けた。瑠車は柊念のヘタレをコーチングしてて忙しいから、真弦くんとボクで軽く競走(?)をしていた。
女子もたまに参加してきたけど、根岸以外男子の相手はできなかったようだ。因みに根岸はダンス部である。
「どうしたの?りゅうちゃん」
今ボクの父親が来てるんだけど顔合わせない?みんなには言わない。
(き、着替えたらね!)
そうだな。スッポンポン。
(あれはメスガキのせいだよ)
お、そうだな(適当)。
結局先にでてるー宣言で音聖と父さんのもとへと向かった。今10階の休憩コーナーにいるらしい。てか髪びしょびしょ音聖なんかいいね。
「彼女?かわいいじゃん。」
おい、お前豹変やばいな。
「隆斗くんとお付き合いさせて頂いてます、芦原音聖です。ご無沙汰しております」
「そんな丁寧に…いいよ、もっと馴れ馴れしくさ!」
おい、顔赤いぞ。
「そんなそんなとんでもないっ!彼には随分とお世話されっぱなしでして…」
何気自覚してんのやばい。
「こちらこそうちのバカがなにかやらかしたらすぐ言ってくださいね!警察でもこちらでも!ほんとに頼みますよ!」
おい、警察沙汰にするようなことあったっけ。
「警察に言いますね!」
親父には言えんのか。正解だな。
ビーチ。太平洋。青い。クラゲ。
てな訳でビーチにきました。ナンパしてくる人の人数を数えよう。お、早速きたな。ピチピチギャルねーちゃん。
「あなたぁ、すごぉくかっこよいじゃない。どうだい?私と」
「彼女いる」
清楚系非リアねーちゃん。
「よければ一緒に遊びませんか…?」
「彼女いる」
剛腕系ヤリマンねーちゃん。
「アタチとヤんない?」
「彼女いる」
外人ねーちゃん。
「Shall we play?」
「I have a girlfriend」
4人。歴代とれたかも。因みに皆さんはナンパに気をつけましょう。ボクは超能力があるからマインドコントロールという保険もある。
皆楽しんでるな。ボクはキャラメルアイスを呑気にペロリ。
「ダークドラグーン、泳ごうぜ!オレやっとクロールできた」
そうか。じゃあ向こうの与那国島まで競走な。
「せめてライフセーバーの制御可能範囲だろ…。」
ボクもライフセーバーの資格持ちなんだな。
「ライフセーバー、恐るべし。」
黒い剣士コスの厨二病サーフボーイはサーフィンできるのか?
「一応…できるぜ。今日の波なら乗れるかも」
よし、一緒に波に乗ろう!
ボクはサーフィンが大好きだ。超能力を使えない頃からサーフィンに没頭してた。あの潮風を浴びながらのスケーティングが最高なのだ。
「キャーかっこいいー!みてみて!二人でサーフィンしてる!」
パリピ女子根岸。
今日のパフォーマンスは絶好だった。温暖化で波が押し寄せてきているのだ。因みに温暖化は南極を溶かすから一概にいいとは言えない。しかし柊念、サーフィンにおいてはなかなかやるな。
昼食は海の家で軽く済ませ、その後は水族館に行った。ホテルに戻り、夕食のバイキングだ。キャラメルスイーツ!
多種のパスタにイタリア料理、日本料理もある。キャラメルデニッシュは開店と同時にキープした。キャラメルアートケーキ。
「じゃ、今日一日お疲れ!いただきまーす」
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
夕食か。ボクは黙々と食べよう。
「りゅうちゃん!写真撮ろ」
はいはい。
「はい、ち⚪ちん!」
やめてくれ。
「ねみちゃんエッチー!」
「てへへ」
ボクはどう反応すりゃいいんだ?腹ァ抱えて笑ってやるのが正解かァ?マゾ田クゥン。
「楓織、写真撮ろうぜ」
「別にいいけど…」
お前セルフィーできんのか?柊念。
「待て柊念くん。あのさ、普通snew使わない?」
snewとは、自撮りを可愛く盛れるARアプリのことである。
「あとアングル下手すぎ!もっと上よ。」
「すんますん…」
無理もない。てかすんますんは柊念語なの?
結局ボクが全員のセルフィーを納めて解決した。それにしてもここのバイキングは絶妙に美味い。普段以上に食べてしまうな。
部屋に戻ったボクは音聖が来る前にベットに転がった。てか音聖と寝るの初めてだな。疲れたぜ。
「ひみつのじかん…」
あ?怖いから目を閉じていよう。因みに千里眼で外側から確認済みだ。
「目開けろやカス」
お前何様だよ。
「目開けてね!」
口調崩しても意味ねえよ。寝ろ。因みに今ボクは音聖にベッドにドンされている。エスカレートしてきたらテレキネシスでどかす予定である。
「…」
ちょ、ボクの上で寝やがった。まぁいい。掛け布団として使えるしそっとしておこう。ん?誰かくる?オワタ。
「やあやあダークドラグーン、夜のゲームといこっ…」
悪いが夜のゲームなうである。
「おい瑠車、夜のゲームもうしてるっぽいから真弦のとこ行こうぜ!」
「明日は絶対突入な!」
やれやれ、夜のゲームとは一体なんなのだろうか。ん、眠気が…。施錠。
「…寝てた…。あれれ?なんでりゅうちゃんの上に?」
今がチャンス。流石の超能力者でも睡眠中は無防備なはず。ファーストキスを奪うぜっ!(残念ながら意識はあるんだな。)
「ひみつの…じ・か・ん」
「やけにディープだな?お前ほんとに処女?」
「起きて…?ああいやそうじゃなくて…VR。」
黒い剣士効果、恐るべし。
次回「浜松旅行-2」




