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絶望楽園タソガレ島~俺は星、君は月~(3)

 俺から見て一番右に座っているのは胸元までストレートの髪をながし、片側だけ耳を出した清楚な女生徒。姿勢がよく、背中に定規でも入っているようだ。真ん中にはまるでチアリーダー部に入っているような、ポニーテールの活発そうな女生徒。そして、一番左には、野球部をやめて半年ぐらい経ったような感じの男子生徒がいた。髪が短めで爽やかだが、1年生のような初々しさを感じた。皆、腕は白く透き通るようで、と、いうより、透き通っていて、制服は古い感じで、というよりも確実に何世代か前の制服で、足は透き通ってるというよりもまずなくて、声が出なかった。幽霊部員って、そっちの!?


「右から、副部長の前田京子さん、書記の石川綾乃さん、新人の倉池亮君っす」


「え? 暗い毛?」


「倉池です」


聞き間違いを訂正したのは倉池君だ。彼はさっきまで部屋の奥にいたはずなのに、もう俺の隣に立っており、俺は人目を気にせず悲鳴をあげた。


「ぎぃやぁぁぁぁ!」


なんなんだ一体! こんな危ない部活だったんかい! 聞いてない。聞いてないぞ俺は!


「桜橋! ぶ、ぶぶ、部活が桜橋! こ、こんな桜橋!」


もはや自分が何を言ってるかわからない。なんとかしろよ桜橋‼ と、言おうとして、俺の口からは


「なんか桜橋!」


と、言っていた。とにかくヤサを見ると、ヤサもまた俺を見ていた。約束だのなんだの関係ない! 一刻も早く逃げねば!


「こ、これがお化けなんだ!」


いやいや、感動してる場合じゃないよヤサ君!


「まぁ、おかけになってくださいよ。こんな埃っぽいところで申し訳ありませんけど」


と、言いながら、副部長の前田さんという人が、というか元人が、後ろにあった出口を閉めた。まさか、元人のくせに、先手を打っただと!?


「綾乃ちゃん、お茶出してあげてくれる?」


と、微笑む姿はもはや悪魔である。


「はいはーい! 京子さんの頼みとあらば!」


ポニーテールの石川綾乃が手を上げて立ちあがり、俺らに訊いた。


「ムカデ味とトカゲの尻尾味が今ありますけど、どっちにします?」


ムカデ味!? トカゲの尻尾味!? それ聞いたことないんですけど! ってか、なんでトカゲだけ尻尾限定なんだよ!


「いや、俺は……」


「え? 祐はどっちにするの? トカゲの尻尾味って今だけのやつなのかな?」


ヤサ、期間限定商品でもトカゲの尻尾味なんてないよ。


「俺らは朝からスポーツドリンク5リットルぐらいがぶ飲みして気持ち悪いんで、遠慮しときます」


それを言うなり、ヤサは目を丸くして言ってきた。


「え? 祐、僕らの朝ごはんにスポーツドリンクはなかったよ!」


ちょっと黙っていなさい! 素直200%!


 このままだとヤバイ。得たいの知れないもの飲まされる、ヤバイヤバイヤバイ!!


「お茶よりもとにかく本題に入りましょうよ」


桜橋が苦笑しながら言った。読めるじゃん! 頭に謎の角つけてるけど空気読めるじゃん! はい、桜橋の好感度アップ!


「早く仕事内容伝えたほうが働き蟻のように働いてもらえますよ!」


はい! 桜橋の好感度ダウン!


 脱出の機会をうかがっている俺を知ってか知らずか、桜橋はおもむろに頭に付けていた銀の角を取った。右の角のあった場所、つまり、頭のてっぺんから少し右ぐらいということになるが、そこには、全く毛が生えていない。


「いや、円型脱毛症って、中にはそこから始まる人もいると思うよ」


「ハゲじゃないっす! これは、事故の跡なんす。3年前、おいらは事故に遭って、ここに髪が生えなくなったんす」


で、あの角つけて隠してたのか。って、角つけたら余計に目立つだろ。


「それから見えるようになったって?」


補足すると、桜橋は首を横にふった。


「前から見えてたんすけど、それ以来、おいらが望む相手に皆をみえるようにすることができるようになったんす!」


ただの迷惑野郎じゃねぇか!


「おいらはいつも一人ぼっちだったんす! この学校に入った時も、変なやつおかしなやつって言われて……」


いや、角つけてたら言われるだろそれ。


「そんなとき、おいらを慰めてくれたのが副部長の前田京子さんなんす」


あぁ、あの悪魔ね。


「それから、京子さんの友達が来るようになって、おいらの輪が広がっていったんす!」


タソガレ島でいう、他、削がれ状態ですよあなた。騙されてるんですよ。


「そんな僕の仲間が初めて被害を受けたのは1ヶ月前。夜中のことだったんす」


ゴースト3人衆が僕を見る。見ないでください。


「京子さんが、スカートめくりに遭ったんす」


「……」


室内が沈黙した。え? 何これ。


「それは悪質だね」


「ヤサ!? 何言ってんの!? なんかおかしいだろこれ‼完全にタソガレ島イン、スクールじゃんか!」


「いや、なんか親近感あるし、ほっとけないよ」


さすが元都市伝説。ヤサは俺の方を見ると、


「それに祐、スカートめくりされる女の子がどんな気持ちになるか考えてあげて。とっても嫌な気持ちになるよ」


え? なんで俺が説得される構図できあがってんの?


「それに、友達できるチャンスだよ」


「じゃあ、本格的に協力を―」


「もちろん! ね、祐!」


え? ヤサ君、本気なのそれ。


「この人達は全然悪い人じゃないよ! むしろ大変な思いをしてるんだよ!」


「ちょ、ちょっと待てよヤサ。俺はーー」


そう狼狽える俺をよそに、ヤサは桜橋と握手していた。


「一緒に戦っていきましょう!」


「ありがとうっす!」


と、言って握手したまま二人が俺を見る。


「わかった! わかったよ!」


だって、この素直200%には保護者が必要だろう?  だから渋々承諾した。

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