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創作捜査!  作者:
かぐや姫の野望
1/2

かぐや姫の調査

「姫様、こちらが『火鼠の皮衣』でございます。」

豪華な着物を着た男が、目の前の十二単を着た女にうやうやしく頭を下げる。

男の手には、なにやら布が入った黒光りする箱がある。

布は高価なものらしく、光を反射してキラキラと輝いていた。

女は箱からその布を取り出すと、じっくりと観察し始め、やがて口を開いた。

「とても美しいですね…これが私の頼んだ火鼠の皮衣で間違いないのですね?」

小鳥の囀りのような美しい声。

男は、女の問いを深く頭を下げて肯定した。

「では、これが本物であるかどうか…火の中に入れてみましょうか。」

女は立ち上がると、部屋の隅にあった灯火の火を布に近づける。

その途端、火は布に燃え移り、布はメラメラと燃えだした。

しばらくして火が消えた後には、真っ黒に焦げた布の残骸が残っている。

「そんな馬鹿な!大枚はたいて買ったというのに…!」

「残念ながら偽物だったようですね…」

女は端正な顔を歪めると、男に背を向け部屋を出て行った。

姫様、姫様、と叫ぶ声を背に受けながら、女は自室へ向かう。

「…あいつが持ってきたものも偽物か…」

女は呟くと、自室の畳の下から手鏡を取り出した。

誰にも見つからないように隠してあったのだ。

そして、手鏡に向かって言う。

「月よ、応答願えますか?」

すると手鏡の中に、黒い霧のようなモヤモヤしたものが浮かび上がり…

それは徐々に人の形を成していった。

『おお、かぐやか?どうだ、調子は。』

鏡の中から、しわがれた声が響く。

「好調です。ですが、火鼠の皮衣は偽物だったようです。これがあれば燃えない鎧も作れるかと思ったのですが…」

『まあ仕方なかろう。しかし、月の力をもってすれば地球を支配するなど容易いことよ!』

「ふふ、そうでございますね…では、私はこれからも調査を続行します。」

鏡は1つチカッと瞬くと、ただの何の変哲もない手鏡に戻った。

愚かなものよの、人間め…地球は、もうすぐ我ら天人のもの…!!

「フハハ…フハハハハハ…!」

「あのう…独りで盛り上がってるとこ申し訳ないんだけど、あなた、そういうことしちゃいけないよ?」

「フハッ!?」

クルッと振り返った女が見たのは、黒縁眼鏡をかけた1人の青年だった。

20歳前後のその青年は、パラパラと手帳をめくりながら、

「えーと、まず危険物所持、無断輸出入品持ち込み。あと侵略も企ててません?それだともっと罪状追加されるんですが。」

言葉を並べ、ぱたんと手帳を閉じた。

「きっ…貴様、何者だ!?」

女が取り乱した様子で叫ぶ。

「僕が何者かなど、どうでもいいですよ。それより、あなたはかぐや…かぐや姫で間違いありませんね?」

女ーーかぐや姫が動揺したのを見逃さず、青年は満足げに微笑む。

「そうでしたか…しかし、姫…」

小さく呟くと少年はかぐや姫にぐっと近づいた。

「あなたはやはり、話に聞く通りお美しい…その漆黒の髪も、白い肌も…」

「なっ…!?なにを言い出すか!?この無礼者っ!!」

叫んで後ずさるかぐや姫の手をそっと握り、青年は彼女の目を覗き込んで続ける。

「どうですか?これから一緒にお抹茶でもって痛っ!?」

スパンッ、といい音がして青年が前につんのめった。

「なに言ってんのよ、バカ!お前の方が犯罪者じゃない!」

怒号と共に現れたのは、二十代前半くらいの女性。端正な顔を怒りに歪ませている。

その女性が、青年の頭を手に持った雑誌で叩いたようだった。

「すいませんね姫様、このバカが…」

「え、ちょっとひどぶっ!?」

反論しようとした青年の頬をぐさっと指で突きながら、女性は苦笑いする。

「貴様ら…貴様らは何なのだ一体!!」

叫ぶかぐや姫に、女性はうっすらと笑って答えた。

「私たちですか?私たち、ただの警視庁の者ですよ。」

「け、けいしちょう?なんだそれは!」

「この時代に警視庁なんてあるわけないじゃん。」

「…そうだったわね…」

じとっとした青年の目線を避けて女性が呟く。

「フ、フハハハハハ!けいしちょうだかなんだか知らんが、貴様ら人間なぞに我ら天人が止められるとでも言うのか!無理であろうの、天人の前には手も足も出ないだろう!」

自信満々で高らかに言い放ったかぐや姫。

しかし、青年と女性は顔を見合わせ、頬を引きつらせた。

「天人の方に行ったのって…」

「あの2人…よね。」

「なんというか…ご愁傷様というか…」

ぽつぽつと喋る青年。

さらに困惑顔をしたかぐや姫に、女性は言った。

「あー…ボロボロにされてるかも…しれませんね…」

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