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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
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第7節-居合-

『悪いけど……すぐ終わらせるから』


牡丹は楓へ向かい春閃(しゅせん)菊波(きくなみ)を自分の前に構える

しかし、楓はその場から動かず武器を構えているだけ

そんな楓の近くにいる雪花は落ち着いていない


『……相性はあんまり良くないみたいね

 なら……折角会ったのに……さよなら、楓ちゃん』


そう思いながら牡丹は春閃(しゅせん)菊波(きくなみ)で斬りかかる


春閃・菊波

その長さは短剣と同じかそれよりも少し長い短刀

雪花が説明したように、春閃には『血液毒』菊波には『神経毒』

その2種類の毒は春に咲く花々からの毒の誘いのように……


しかし、牡丹の斬りかかりは楓の目の前で鉄と鉄のぶつかる音と共に弾かれる


「……っ」


牡丹は自分の攻撃が弾かれた事に驚きながらも短刀を構え

楓を見るが楓は先程の位置、そして武器すらも構えたまま

そんな光景に牡丹は楓を警戒する


「楓……今何をしたの……?」


牡丹が楓を警戒して攻撃してこない隙に雪花に楓に話かける

すると楓は左手で構えている花月を離さず、前を向きながら答える


「これは『居合』って言う武術なんだよ」


「居合……楓はそれができるの?」


「うん……私のお爺ちゃんが『慈心流』の免許皆伝者なんだ

 そのお爺ちゃんにいろいろ教えてもらったから……少しはできるよ」


『少し? 今の攻撃は私にも見えなかった……

 そんな速い攻撃ができるのに『少し』って……この子は一体……』


雪花が楓に驚いてる間に牡丹がまた楓との距離を詰め短刀を振りかぶる

しかし今度は右手のみ、左手は下に下げ、明らかに楓の攻撃を警戒している


「楓!」


「大丈夫……」


楓は花月を握る手を強めると刀を一瞬抜くが刀は鞘に収まっている

その瞬間、牡丹の右手の短刀は上に持ち上げられている

だが、牡丹はそれを予測して、左手の短刀、春閃で突き刺す


『大丈夫』


「弐の太刀……撃」


楓の言葉と共に牡丹の左手の持っている春閃と花月なのか

鉄と鉄がぶつかる音だけが聴こえる……だが楓と牡丹

2人の様子は違っていた


楓は最初と変わらずその場から動かず武器を構えて立っている

牡丹は左手を右手で抑えて苦痛の表情をしている


「楓……今の撃って……」


「今のも『慈心流』の技」


「最初に使ったのと違うの?」


「うん……最初に使ったのは……」


楓が最初に牡丹に放ったあの技の正式名は『一の太刀・閃』

慈心流の技の一つで居合の知識と鍛錬により速さのみを追い求めた技


そして2回目の撃の正式名は『弐の太刀・撃』

こちらも慈心流の技の一つ、一の太刀と違い、こちらは力を込めた一撃よる衝撃

相手の持ち手部分を狙っての攻撃で相手の手を痙攣させる技


「……楓ってもしかして……その居合の才能があるの?」


「ないと思うよ」


楓は笑顔で雪花にそう言うが雪花はそう思わなかった

それは先程の2回の攻撃でそれはわかったのだが……

雪花の中で1つ、わからない事があった


「ねぇ……今の速さと攻撃があれば牡丹を殺せたんじゃ……」


しかし、楓は首を横に振った

もちろん楓自身が『殺す』殺人者になりたくないと理由もあるのだが

楓は雪花に向かって笑顔で言う


「雪花、慈心流は殺さないを極めるんだよ、自分のできる最大限の力で

 相手を無力化して戦いを終える……それが、慈心流の(ことわり)


「そうなんだ」


雪花は笑顔で楓の言葉に返す

それは雪花の取って何故か『楓らしいなぁ』と思ったから

しかし、その会話をしてる間に牡丹の手の痺れが弱まったのか

また武器を両手で構え、こちらを睨んでくる


「楓……牡丹から殺気が感じ取れる、さっきのようにはいかないかも」


「……うん、怖いね……これが殺陣……なんだね」


雪花が楓の顔を見るとどこか冷静な顔をしているが

刀を持っている右手、そして柄を持っている左手は震えていた

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