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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
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第61節-牡丹の厄日-

「ねぇねぇ、楓ちゃん、ここ入ろ」


「え? え?」


町の中で駿斗達を探していた最中

牡丹は突然、楓の手を引きお店の中に入って行く

その後を無言で夏戦は付いていく


「おばちゃん、あんみつ2つね」


「はいよ」


お店の中に入り、木の4人席の反対側に牡丹

手前に楓と夏戦が座り、楓は周囲を見ていると牡丹は笑顔で言う


「ふふ、ここは甘党ってお店で甘い物がいっぱいあるのよ」


「……えっと、よく知ってますね」


「旅の途中、いろんな人からこのお店の名前聴いたからね」


「なるほど……でも、駿斗さん達を探さないと」


「そのうち見つかるから大丈夫、大丈夫」


「……は、はい」


牡丹の笑顔に楓は頷くと夏戦は腕を組んだまま楓に話かける


「……無理して合わせる必要はないぞ?」


「え? 無理してませんよ?」


「そうか? 何か合ったら俺に言え、力を貸そう」


そう言うと夏戦は組んでいた手を解き

微笑みながら楓の頭を撫でる

それを見て、牡丹はにやにやしながら夏戦に言う


「楓ちゃんの頭って撫でやすいよね」


「ん? そうだな」


「私も撫でちゃお!」


牡丹は身を乗り出し楓の頭を撫でようとした時

先程の店の人が現れ、笑顔であんみつを2つ置いていく

その時、牡丹に向かい『行儀が悪い』と言い、席につかせた


「なによ……別にいいじゃん」


ほっぺを膨らませながら牡丹はあんみつを口に入れていく

その光景を微笑みながら見た後、楓はあんみつに目をやる


『……私の世界と同じ? さくらんぼは入ってないけど

 ほとんど一緒みたい……味はどうなのかな?』


楓はあんみつを木の小さなスプーンですくう口に運ぶ

その味はどこか懐かしく、楓の世界と同じ味がした


「美味しい」


その笑顔を見て牡丹は嬉しいに楓に言う


「でしょ?」


「はいっ、美味しいです」


「うんうん、食べよ、食べよ」


牡丹は笑顔であんみつを口に運び笑顔を浮かべている

そんな牡丹を見た後、楓は隣で目を閉じている夏戦に話かける


「夏戦……あんみつ食べます?」


「ん? 俺は甘い物は好きじゃない

 だから、遠慮する」


「そうですか……美味しいのに……」


楓の言葉に片目を開け答えたはいいが

楓のしょんぼりとした顔を見ると、すぐさま言い直す


「いや、あんみつは好きなほうかもな……」


「そうですか? じゃあ一口どうぞ」


楓はなんの動揺もなく、笑顔で夏戦の口に

あんみつを乗せたスプーンを持って行き笑顔で言う


「はい、あーん」


「……あ、ああ」


夏戦はそれを口の中に入れ、少しだけ顔を拒めながら言う


「美味しい……な」


「ですよね、もう一口いります?」


「いや、楓が食べろ、俺は一口貰ったから大丈夫だ」


「わかりました」


楓は笑顔であんみつを食べるのを横で微笑み見ていると

牡丹の睨むような視線に気づき、夏戦が牡丹に目をやると

牡丹は目を反らし、楓に笑顔で話かける


「ねぇ、楓ちゃん、こっちのあんみつも食べてみる?」


「え? 同じのですよね?」


「そ、そうだけど、ほら……味の染み込みとか違うかなぁと」


「あんみつは同じだと思いますよ?」


牡丹のぎこちない笑顔に楓は首を傾げながら答える

そのやり取りに夏戦は気づき、首を突っ込む


「楓、あんみつは染み込みで味が変わる

 ただ、お互いの皿に置くのは悪いから、さっきと同じようにやるといい」


『と言っても、黒蜜と白蜜の違いだ

 どっちを見ても黒蜜だから、蜜の濃さぐらいしか変わらんけどな』


夏戦横目でお互いのあんみつの蜜の付け方を見るがさほど変わらない

その目線に気づいた牡丹は、はっとした表情でスプーンで蜜を掬いかけていく

楓は『そうなんですか?』と夏戦に顔を向け聴くと夏戦は『ああ』と言いながら

牡丹を横目で見、その行動を終えるのを待っている

そして、牡丹がそれを終え、笑顔で楓に話かける


「はい、楓ちゃん、あーん」


「あ、はい……あ、本当、牡丹さんの方が味濃いですね」


楓は牡丹にあんみつを口に運んでもらい食べると

驚いた表情を一度した後、それを食べ終え笑顔で言うと

今度は牡丹が口を開け、笑顔で言う


「じゃあ、今度は私の番、はい、あーん」


「あ、はい」


楓がスプーンにあんみつを掬い、牡丹の口に持っていこうとした時

何かが飛んできて楓のスプーンを吹き飛ばし、それは壁に当たり

あんみつは地面に落ちる、その飛んできた方向を見ると

大柄な男性が店の中で暴れている


「この店のせいで前の店の客いなくなったじゃねぇか!

 どうしてくれるんだよっ!」


その男性はそう言いながら木のテーブルの上のあんみつを手を薙ぎ払い

それを地面に落としていく、お客は叫びながら店の外に出

店の叔母さんは腰を抜かしてその場に座り込んでいる


「こんなばぁさんに売れて…俺の焼肉が売れねぇわけがない!」


男性は手を振り上げた時、それの腕を牡丹が掴む

それに気づいた男は牡丹を睨むと

牡丹は視線を上にあげ、その男性の顔を見る


「ほぅ……可愛いじゃねぇか、俺の店ではたらか……ぐふ」


途中まで笑顔で話していた男性の顔はゆがむ

牡丹はその男性の腹は反対の手を殴る


「牡丹さん……」


楓が心配そうに見ている横目は夏戦は牡丹を一度見た後、両目を瞑る


『あんみつの恨み少しと、楓との大事な時間をつぶされた恨みだな

 女の恨みは恐ろしいというが……まぁ、結果は見えてる』 

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