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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
55/61

第55節-だらしない一時-

「ただいま」


楓は離れの部屋の障子戸を開け声を発すると

中から『おかえり』と3人の声が重なるように聴こえる

それに微笑みながら楓は中に入る……

しかし、そこで楓はやっと気づく


『ここ……土足でいいんだ』


普通部屋の中には靴を脱ぎ部屋の中に入るのだが

ここは玄関のように靴を脱がず、中に入る

しかも、床は畳なのだが……汚れた靴で踏んでも汚れる様子はない


「どうしたの?」


雪花は楓の様子が気になり話かけると

楓は『なんでもないよ』とで答えると

それに雪花は『そう?』と聴き返すと『うん』と楓は笑顔で答える


「あれ? まだご飯来てないんですね」


「ええ、そうね」


布団の上で未だにゴロゴロしてる春菊が答える

その行動はまるで朝が弱い人が布団の上に左右に動いているそれなのだが

時間はもう夕刻……朝からどれくらいの時間が立ったのだろう


「まぁ、まだお腹空いてないから大丈夫」


そんな楓に牡丹は布団で上で春菊と同じようにゴロゴロしながら答える

それを楓は少し哀れみの眼で見ながら雪花を見ると……

雪花も同じように布団の上で横になっている


『……何この感じ』


明らかに朝から夕方まで布団から動かず、ひたすら横になっていた

と思わせる行動を3人は楓の前で行っている


「皆さんは朝ご飯食べたんですよね?」


「食べたよ」


牡丹は楓の質問に答える

その時の図が楓には想像できた

布団の前にお膳を置いてもらい、布団の上でご飯を食べ、そしてまた横になる

楓からしたらその行動事態……もの凄く恥ずかしそう光景である


『……だらしない』


そんな話をしていると女将が部屋の障子戸を叩き中に入ってくる

そして楓の横にお膳を持ったまま立つと驚き、楓に小さな声で話かける


「ねぇ……まだ横になっていたの?」


「……はい」


「なんなのこの人」


女将からしたら牡丹だけしか見えないのだが

その光景は牡丹が楓の布団2つの上でゴロゴロしていただけに見える


「た……たぶん、旅の疲れが溜まっていたと思います」


「そっ……まぁ、私があなたならこいつを叩き起こしたわね」


「あはは」


女将の睨むような素振りを楓は横で苦笑をする

そして女将は何事もなかったように笑顔で御膳を牡丹の前に置き

もう1人、女将の後についてきた浴衣姿の女性も

布団を見て驚きながら牡丹の横に料理を置く

だが、そこで女将は牡丹に笑顔で言う


「布団を畳ませてください、テーブルが置けません」


「朝はテーブル使わなかったわよ?」


「それは気を使わせていただきましたが……夜はそうはいきません」


「えーでも……」


「いいから! あなたはお風呂にでも入っていてください

 その間に私達が準備しておきます」


そう言いながら女将は牡丹を無理矢理起こし、背中を押すと

露天風呂前の障子戸まで押していき、中に入るように促す


「あ、あの……服脱ぎたいんだけど」


「別に女しかいません、ここで脱いでとっとと中にどうぞ」


顔は笑顔なのだが、明らかに言葉に棘がある女将の言葉に

少し怯えながら牡丹は服を脱ぎ、胸と下を抑えながら露天風呂に入って行く

それを見た後、溜息を付きながら布団を畳み、楓に話かける


「さぁ、あなたも風呂に入ってきなさい」


「あ、はい」


布団を畳んでいる最中は春菊と雪花は律儀にも隅の方により

その光景を見ている、それを余所に楓は近い置いてあった

タオルを2つ取ると服を脱ぎ、その1枚を体に巻く


「……すみません」


「いいですよ」


女将は準備しながら牡丹の脱いだ服を拾い

楓の服も預かる……そいて横眼で隅にある花月を見ながら小さな声で言う


「もしも……この刀だったら……私はもっと悲惨な事になってたのね」


「え?」


「なんでもないです、あなたに貸していた刀は返して貰ったかどうか

 それを思い出していただけです」


「え、あ、はい……戻る時ちゃんと戦理さんに渡してあります」


「知ってますよ」


女将は最後の言葉だけ楓に聴こえないように小さな声で言った後

部屋をもう1人の女性と一緒に出て行く

それを確認した雪花は服を脱ぎ捨て楓の腕を掴むと笑顔で言う


「さ、お風呂入ろっ」


「う、うん……そうだね」


しかし、春菊はその場から動かず外を見ている

そんな春菊に雪花に絡まれながらも楓は話かける


「春菊さんは入らないのですか?」


「……私は後で1人で入るわ」


「わかりました」


そう言うと楓達は障子戸を開け、露天風呂の中に入って行く

その障子戸は風呂から離れており、湯気などで障子が破れない作りになっている

そんな障子戸を一度見た後……

春菊は1人、牡丹が置いていた『春閃』を手に取り刀を抜こうとする

しかし、何かに引っかかってその刀が鞘から出る事はない


『自分が憑いた刀だってのに……』


それを確認した春菊は春閃を元の場所に戻し、また外を眺める

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