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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
54/61

第54節-居合vs居合-

「ふぅ……」


「おつかれさまです、戦理さん」


「ああ、おつかれ、楓」


戦理は楓に言われた通り500本を終え息を付く

そして刀を納めた鞘を地面に置き、戦理を地面に腰を下ろす


「疲れるな……普段の訓練より良い特訓になる」


「そうなんですか?」


「ああ……しかし、素振りしかやってないがこれでいいのか?」


「はい、十分です……基礎ができなちゃ他なんてできませんから」


「そうか……まぁ、楓に技を教えて貰おうかと思ったが

 居合ができるようになるまで時間がかかる、技はまた今度だな」


「そうですね」


「……なぁ、楓」


「はい?」


戦理は座ったまま空を見上げ楓に話かける

今まで立ったまま両膝に両手を置き

腰を屈めるように戦理の顔を見ていた楓は両膝から手を離し空を見上げる


「……一度、俺と居合だけで勝負してくれないか?」


「え?」


「たしかにまだまだだと思う……だが、一度だけやってみたいんだ」


「わかりました」


戦理は楓の言葉に驚いたまま楓の顔を見る

しかし、楓は微笑み頷く


「……いいのか?」


「はい、やってみましょう」


それだけ言うと楓は刀を腰に構え、戦理から距離を取る

それに合わせ、戦理も楓から距離を取り構える


「……よろしく頼む」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


「……だが、どうしたら勝ちにする?」


「えーと……じゃあ、刀が相手を捉えたら勝ちにしましょう」


「わかった」


楓の言葉に戦理は頷く

しかし、その戦い方には1つだけ戦理に不利な事があった


『捉えるか……まだ実戦で使った事のない居合

 どこまで本家に通用するか……試させてもらう』


「ではいきますよ?」


「ああ」


楓のその言葉に頷き刀を構える

静かな風の音、足音一つしない空間

だが、そんな空間にピリピリと戦理は肌に感じている


『……あいかわらず恐ろしい、全力ってことか……だがっ』


戦理が踏み込もうとした直後、楓はすでに体を屈め戦理の懐に潜っている

そして戦理の顔目がけ居合を放つ、それを間一髪鞘で受け止める事に成功するが

その鞘は半分に両断されている


『おいおい……』


戦理の驚きを無視し、楓は後ろに少し飛び退くとその場に構え

戦理目がけ、もう一度居合を放つ

それを避ける事に成功した戦理は半笑しながら冷汗を流していた


『なんとか……見える……これも特訓の成果?

 だが……このままだと楓の一方的な展開だな……なら』


戦理は楓の居合を避けたと同時に1歩踏み込み居合を放つ

その一撃は楓よりも重く、一撃に賭けた居合

楓の居合技『撃』にも等しい一撃が楓に襲いかかる

しかし、その速さは遅い

楓は平然とした顔で戦理の一撃を避ける


『やっぱり……居合同士だと、お爺ちゃんと比べちゃうなぁ

 こんなに楽で……こんなに懐かしく思うんだもん』


その時の楓は微笑み、どこか懐かしい素振りを見せる

だが、その顔に戦理は畏怖した

楓の微笑んだ理由がわからないだけではなく、戦理にはその微笑むが怖かった


『……嘲笑った? いや、楓はそんな事はしない

 これは俺を煽ってる笑顔なんだ、きっと』


戦理は鞘のない刀を腰に持っていく

しかし、鞘から放つ居合に鞘のない刀は違和感を感じさせる


『問題ない』


戦理はそのまま刀を抜き、楓めがけ伸ばす

しかし、その伸ばすよりも速く楓はその場から離れており

既に次の構えに入っている


「しま……」


振りぬいてしまった戦理の刀を丁寧に楓は刀だけ吹き飛ばし

刀は少し遠くの地面に回転しながら突き刺さる


「勝負ありですね」


「……ありがとうございました」


「ありがとうございましたっ」


お互いがお互いに礼をした後、戦理は刀を抜き楓に話かける


「なぁ……先生」


「楓でいいですってば」


「……最後の一撃、どうして読めたんだ?」


「あれは、刀の軌道が見えていただけです」


「軌道……?」


「はい、鞘のない居合はほど読みやすい物はないんです

 たしかに最初の私の一撃、鞘で受け止めたのはいいんですけど

 あの瞬間、戦理さんの負けはほとんど決まっていました」


「……なるほど、居合は防ぐのではなく、

 避ける事そして、鞘と刀を守るのが第一なんだな」


「そうですね、1歩間違えれば折られやすい戦い方ですから

 刀で刀を防ぐ、それも難しいかもしれません

 それでも、戦理さんは『居合』を?」


「ああ、極めて見たくなった

 そして何時か……楓先生に技を教えてもらうように」


「そうですか……」


戦理は嬉しそうに刀を右手で持つと楓に笑顔を見せる

それに楓は微笑む、その直後タイミングよく着物に着替えた女将が近寄ってくる


「そろそろ夜ご飯のお時間ですよ?」


「もうそんな時間か」


「はい、楓さんはどうします? 戦理様と? それともお仲間さんと?」


「牡丹さん達と食べます」


「そうですか、ではお食事をお持ちしますね」


「はい、あ……戦理さん」


「ん?」


「明日あたり、出発しようと思います」


「そうか……了解した」


楓の言葉に何も言わずに戦理は頷き

それを確認した楓は一礼し、刀を戦理に返すと牡丹達が待つ部屋に歩いていく

その背中を見ながら女将が戦理に話しかける


「いいんですか?」


「ああ……十分教えてもらった

 後は俺次第って事だろ」


「……楽しかったですか?」


「ああ、とても……今までで一番楽しかったのかもしれないな」


「そうですか……それはよかったですね」


女将が戦理の顔を見ながら微笑むとそれに頷き、2人は旅館の中に戻る

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