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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
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第51節-嫉妬、その限界点-

しかし戦理は女性……女将に抱き付かれたと言うのに

嬉しい顔1つせず、抱き付いている女将を睨みながら言う


「悪いが……興味ないな」


その睨みは明らかな物で優しさがある声でもない

それを知っている女将は戦理から手を離さない


「……どうしてですか?」


女将は上目遣いをしながら微笑む

だが戦理を首を横に向け、顔は別の方向を見ている

それは恥ずかしいから向いているのではなく

明らかに『拒否』している顔


「……言ったろ? 興味がないと」


「あんな子より私のほうが付き合い長いんですよ?!」


「ああ、そうだな……だが、それでもお前さんは楓に勝てんよ」


「勝てない? ……何を馬鹿な事を……あの子よりも胸があって

 容姿も勝ってる、剣技をある程度できて……なのに!」


「そういうのじゃない……それがわからないのか?」


戦理は抱き付いたままの女将の顔を悲しそうな顔で見る

すると女将は離れ、イラついた顔で戦理に言う


「じゃ、じゃあ……私があの子に勝ったら私と結婚してくれるのですね?!」


「……は? 結婚?」


「そうです、それほどまでにあの楓と言う子を褒めるのなら

 私が……あの子に勝ったら、戦理様は私と結婚してください」


「……どうしてそうなる」


「……私が戦理様の事が好きだからです」


「……だから、俺はお前……菊花の興味はない」


「それでも……興味を持って貰います」


そう言うと女将はその場から姿を消す

そこに1人取り残された戦理は右手で頭の裏をかき溜息を付くと

急いで楓のいる部屋に向かう


そして戦理が楓のいる別館の部屋の前に辿り着くと

既に女将の声が部屋の中から聴こえる

戦理はその話を部屋の外から聴き耳を立てる


「楓さん」


「え? あ、なんでしょうか?」


「私と戦ってください」


「……え?」


その言葉、女将の正体に気づいてる牡丹と春菊は黙り

楓にべったりな雪花が女将を睨んでいる


「……戦理様の許可は頂いているので私と戦ってください」


『いやいや、俺は許可だしてないぞ……』


「あ、あの……女将さんはその……刀を使えるのですか?」


「はい、ある程度はできます」


「……どうして戦いたいのか教えてください」


「戦理様と結婚するためです」


その言葉に楓以外の者はその意味を理解した

しかし……楓だけはその言葉に質問する


「あ、あの……」


「なんですか?」


「どうして戦理さんと結婚するのに私と戦わないといけないんですか?」


楓のきょとんとした表情でのその言葉は女将……菊花のイラつきを触発し

菊花はこめかみを動かし……今にも楓に切りかかるような顔をしている


『……何この子、まさか戦理様の好意に気づいてないの?』


「……あ、あの……」


楓が女将に話かけようとした時

牡丹が楓の肩を叩き首を横に振るそして小さな声で楓に言う


「楓ちゃん、女将さんと戦って」


「え?」


「いいから……この先、戦理と特訓するうえで大事な事だから」


「そんなんですか?」


「うん」


楓が春菊と雪花の顔を見ると2人も頷く

それを確認した後、楓は女将に話かける


「女将さん、その勝負お受けします」


「……それはどうも、では準備してきます

 あなた1人……場所は中庭で待っててください」


その言葉に楓は立ち上がり、中庭に行くため部屋を出る

すると入口の前で戦理が立っており、申し訳ないように頭を下げる


「すまない……」


「え? どうして戦理さんが謝るのです?」


「いや、俺が菊花……女将を止められなかった」


「……気にしないでください」


「……楓?」


戦理がその言葉に頭を上げると楓は微笑みながら

『大丈夫ですよ』と力強く言った後、戦理の横を通って行く


そして楓が中庭に付くと1人の女性がその場に立っている

その姿は上下薄い黒服、口元を黒い物で隠している

そして両手には苦無を持ち、楓を睨んでいる


「……あなたは?」


「ここの女将……本当の名前は菊花」


楓はその視線を浴びながら立てかけられている刀を取り

元の場所に戻ると、楓の後ろから戦理が現れる


「……戦理様」


「俺のせいでもあるんだ、見てもいいだろ?」


「はい、どうぞ……さぁ、楓さん、いきますよ」


菊花は苦無を構えると楓もそれに合わせ刀を構える

しかし、お互いが動く事なく……数分の時間が立つ


その直後、菊花が楓に向け走る

それに合わせ、楓が臨戦態勢に入ると菊花が空中に飛ぶ

そんな菊花に目をやると空中から苦無を投げる

それを間一髪、楓が後ろに避けると菊花はその後ろに着地


「……貰った」


菊花は腰から新しい苦無を出すと楓の後ろから突き刺そうとする

しかし……それは楓に届かない


「っ?!」


楓は空中からの苦無を避けた後

すぐさま後ろに体を反転させ居合の構えに入る


「隼」


楓の高速の剣技が菊花の前に通り過ぎる

それに臆した菊花は後ろに少し体を下げた直後


「隼・(つう)


楓が『隼』を放った後

その剣先が鞘に戻らず

引いた刀が上段から高速で振り下ろされる

つまり……隼による速さからの追撃


その追撃を予測できず、菊花の目の前に刀が通る

それを避ける事に成功したが、掠めた苦無が地面に叩きつけられ吹き飛ばされる


『……やるわねっ』


「……上手く行ってよかった」


その楓の小さな言葉を菊花は聞き逃さなかった


『上手くいって? まさか未完成でやったと言うの?

 だとしたら……できない可能性もある、ならばっ!』


菊花は腰に隠した苦無を抜き、両手に持つと楓に走り込む

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