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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
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第5節-春閃・菊波-

「ここでいいかな?」


女性は歩みを止め後ろを振り向くと楓に笑顔で話かける

楓はその言葉に笑顔で『はい』と答えると店の中に入っていく


「いらっしゃい、お客さんは2名でいいのかな?」


「ええ、2人なんだけど広い部屋で空いてる席はある?」


「ありますよー、こちらにどうぞー」


お店の給仕の女性と楓と一緒にいる女性は話をした後……席に案内されると

そこは畳部屋、畳の数は2枚ぐらいで、その真ん中に木のテーブルと座布団が2枚

そして奥の座布団に女性がに座ると、楓は手前の正座で座布団に座ると

雪花は楓の横の何もない所にぺたん座りをする


「……さ、座って」


「あ、はい……」


「ちょっと話をしてみたくなって……ここにしちゃった」


女性は笑顔で楓に言うと楓はその言葉に微笑む

しかし、隣の雪花は女性を睨んでいる


「とりあえず、自己紹介しとくね、私は『椎名(しいな)牡丹(ぼたん)』」


「椎名さん……私は慈心楓と言います」


「楓ちゃんね、あ……敬語いらないのと、私の事は牡丹って呼んで」


「え、でも……」


「いいのいいの、私も楓ちゃんって呼びたいから」


「あ、はい」


楓は牡丹と名乗った女性を見る

髪型は薄い緑のロングヘアー、服装は緑と紫の浴衣らしき物で

浴衣の腕と脚部分は七分しかない

そして先程の短剣は見えないため服の中に仕舞ってあると楓は予測する


「ん? 私の服に何かついてる?」


「あ、いえ……珍しい服だなぁって」


「そうかなぁ? 私は楓ちゃんの服のほうが珍しいと思うけど」


「そ、そんな事はないですよ……」


「どこで買ったの? もしかして港街とか?」


「そんな感じです」


楓は雪花の質問1つ1つに慌てた感じで返していると

店の女性が注文を取りに来る


「頼む物きまりましたー?」


「えっと……この『蕎麦』2つと後はお茶もらえる?」


「はい、しばらくお待ちくださいね」


そういうと店の女性は奥の部屋に行ってしまう

それを楓が見ていると牡丹が楓に言う


「あ、ごめんね……勝手に注文たのんじゃって」


「いえ、大丈夫です……お蕎麦好きですし」


「それならよかった……それで楓ちゃん」


「はい?」


「それ……どこで買ったの?」


牡丹は楓のすぐ傍に置いてある花月を指差しながら笑顔で言うと

楓は慌てながらも牡丹の質問に返す


「えっと、これは……護身用というか、そんな感じの物です」


「そっか、もしよければ私に譲ってくれない?」


「え?」


「というか、そこの『おまけ』はいらないから武器だけでいいかな」


「!」


牡丹は雪花を指差す

それが意味するのは……ただ1つ、牡丹が春夏秋冬のどれかを持ってると言う事

しかし、動揺してる楓を他所に雪花は牡丹を見ながら微笑み、言う


「やっぱり……その短剣は春閃(しゅせん)……」


「そ、春菊(しゅんぎく)から聴いた通りの子でわかりやすかった」


「……」


雪花は牡丹の言葉に何も言わず、ただ牡丹を睨んでいる

そんな雪花に楓は話かける


「ねぇ……雪花、春菊って……?」


「春菊は……春閃(しゅせん)菊波(きくなみ)に憑いている霊よ」


「という事は雪花と……」


その後の言葉を言おうとした時、楓は口元を両手抑える

この言葉は雪花に取って禁句のような物

しかし、その次の言葉を楓の聴いた事のない声が言う


「同じじゃないわよ、そっちは紛い物、こっちは本物」


「え?」


楓がその声のする方向を見ると牡丹の後ろに女性が立っている

その姿は……髪は薄い赤色で服装は牡丹と似たような浴衣で色は白と黄色


「……牡丹、言っちゃっていい?」


「いいんじゃない?」


「……私達は正式に『妖刀』と呼ばれた刀

 で、そっちの紛い物は刀に取りついた亡霊」


その言葉に雪花は下を向き、悔しそうな顔をする

そんな雪花を見た楓は何を思ったのか……春菊に言う


「紛い物なんかじゃないです」


「え?」


「雪花……雪華・花月はちゃんとした妖刀です」


「……あなたがその紛い物の主?」


春菊は睨むような形で楓を見下ろすと楓は春菊を睨み言う


「そうです、私が雪花の持ち主です」


「へぇ……」


春菊はそう言いながら微笑むと牡丹に話かける


「ね、牡丹」


「?」


「この子達と戦おう」


「あら、春菊にしては珍しいわね……」


「なんかあの子の事イラついちゃったのよ」


春菊は楓を見ながら言う……その言葉はもちろん楓と雪花に聴こえている

その直後、店の女性が笑顔で蕎麦と割り箸とお茶を

テーブルに置き笑顔で帰って行く


「まぁ……そんなわけでご飯食べたらやりましょうか」


牡丹は店の女性が持っていた割り箸を割ると蕎麦を食べだす

それを見ながら楓は割り箸を取り、割り箸を割ると両手を合わせ


「いただきます」


その光景を見た牡丹は驚いた


『……この子、胆が据わってるわね、さっきの会話を聴いて動揺してない

 というか……この子の内からなんか……感じる』


そんな状況の中、雪花は食べている楓を後ろから抱きしめる

それに驚いた楓は小さな声で雪花に言う


「雪花?! どうしたの?」


「特になんでもない、食べてていいよ……私はこうしてるから」


「え……食べにくいんだけど……」


「気にしない気にしない」


雪花は笑顔で楓にそう言うと楓は溜息をつき、蕎麦を食べ続ける

それを見ながら雪花は心の中で思う


『さっきの言葉、凄く嬉しかった

 多分……私を思って言ってくれたんだけど……嬉しい』

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