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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
46/61

第46節-賑やかな夜、そして朝早く-

戦理の所から楓達が部屋に帰ると

その部屋は既に木のテーブルをどかされ布団が綺麗に2つ引かれていた

しかも、布団と布団の間に隙間はなく……まるで夫婦布団のようになっている


「……えっと、牡丹さん」


「なに?」


「私達、夫婦じゃないですよね?」


「お互い女よ? 楓ちゃん」


「ですよね……」


しかし、牡丹はその布団を動かす事なく

1つの布団に飛び込み笑顔で楓に両手を伸ばす


「でも、いっか……私のお嫁さん、楓……おいで」


「よろしい、では」


「え」


牡丹の手伸ばした位置に雪花が飛び込む

それに対応できず、牡丹は手を伸ばしたまま固まる

しかも……時間は止まってくれない

牡丹に向かって勢い良く飛び込んだ雪花は牡丹に飛び込む


「……」


「何? 牡丹、私じゃ嬉しくないわけ?」


「むぅむぅ」


雪花に押しつぶされた形の牡丹は息ができなく

雪花の胸付近で何かを叫んでいる


「……」


「牡丹? ぼたーん?」


牡丹を押しつぶしたままの雪花はそこから退かず

牡丹に話かけるが一言も反応しない


「雪花……そこ退いたほうがいいかも……」


「そう?」


楓に言われ、雪花が牡丹の上から退くと

両手で顔を抑え、沈黙してる牡丹が出てくる


「牡丹さん、大丈夫です?!」


「だめ……死にそう」


「え、え……どうしよう」


牡丹の言葉に慌てだす楓に両手を顔に当て口元だけが笑っている

それに気づいた雪花が楓に話かけようとするが、それを春菊が止める


「今回は牡丹に譲りなさい」


「い・や」


春菊が気を効かせ牡丹に楓を譲るように言った直後

春菊に向かって雪花は舌をだす

しかし……その動作に春菊は怒る事なく微笑んでいる


「嘘よっ」


牡丹は春菊の作った時間を無駄にせず

楓を抱きしめるとそのまま布団に飛び込む


「楓、一緒に寝よっ」


「え、えっと……牡丹さん、大丈夫なんですか?」


「え? なんも問題ないよ」


「だってさっき……雪花に潰されて……」


「大丈夫、両手で抑えてから」


雪花の飛び込みに合わせ、牡丹は両手を前にだし雪花を受け止めた

それは、なんとなく楓にも理解できるが……1つわからない事があった


「でも、さっき何かを喋ってたような……」


「ああ、あれはね、雪花の胸が……」


そこまで牡丹が言いかけた時

雪花が笑顔、それも無言で楓の横に飛び込むと牡丹に言う


「それ以上何も言わないで、さっさと寝ましょう」


「言うわよ、雪花の胸が……」


「はいはい、寝るわよ、明日から楓『だけ』忙しいんだから」


春菊も何かに気づき牡丹の横に寝ると

その光景は川の字のように綺麗に寝ている

そんな状況の中、楓が雪花に話かける


「雪花」


「どうしたの?」


「……聖破一身流って知ってる?」


「聖破……一身流? 何それ?」


楓の質問に雪花はきょとんとした顔で答える

その表情は『本気』で知らないと言う顔だった


「そっか……で、雪花の胸は……」


「そ、それに関しては何も言わないで」


「そうなの?」


「そ、だから寝よ、明日から楓『だけ』頑張らないといけないから』


その雪花の言葉に牡丹が『だけって言うのは!』と叫ぶが

誰1人反応せず、牡丹以外……目を閉じ、寝てしまっている


そして次の日の朝…

楓が眼を覚まし体を起こそうとした時……体が動かない事に気づく


「雪花と牡丹さんが重い」


しかも、両腕を掴まれている

だが……そこで楓は1つの案を思いつき実行する

それは雪花の掴んでいる手を握り離すとその反対牡丹の手も離す

そして、その離した手同士をくっつけると

それは見事にその手同士は握り合う


「よし、今のうちに……」


楓は花月を雪花の枕元に置くと着替え始める

そこで楓は気づく……昨日、脱ぎ置いたままの制服

それが綺麗に畳まれ、まるで洗濯したような匂いがする


『女将さん……いつも前に……後でお礼言いにいかないと……』


そう思いながら楓は着替え、他の3人を起こさないように部屋を出ようと

入口の方へ移動すると後ろから小さな声が楓の耳に届く


「頑張ってきなさい、この子達の面倒は私が見とくから」


楓が後ろを振り向くと春菊が部屋と入口付近の柱に

寄りかかり笑顔で楓の方を見ている


「春菊さん……もしかして起こしちゃいました?」


「違うわよ、楓よりも速く眼が覚めただけ」


「……そうですか」


「ええ、そうよ、だからいってらっしゃい」


「はいっ!」


楓は笑顔で部屋の外へ飛び出して行く

ただし、何も持たず、手ぶらで……

それを心配そうな顔で見た後、欠伸をしながらまた布団に入る


そして楓が自分の寝ていた離れと本館を繋ぐ場所についた時

戦理も既に着替え、その場に立っている


「あ、おまたせしちゃいました?」


「いや? 俺は何時もの素振りをしていただけだが?」


「……なるほど、じゃあ私も……」


しかし、何も持っていない楓に戦理は笑いながら言う


「ははは、さすが先生だ、まさか手刀の練習するつもりか?」


「いえ、その……あの……」


恥ずかしそうに下を向く楓に戦理は笑いながら近くに立てかけて置いた

木刀を手に取り、楓に渡す


「俺のでよければ使ってくれ」


「でも、戦理さんが……」


「先生の素振りを拝見しようかと」


そう言いながら戦理は石の上に座る

そこは砂利道で、近くに大きな石が並んでいる

その石の上で微笑みながら楓を見ている


しかし、楓はそんな戦理を見る事なく集中し素振りを始める

その1回、一素振りは無音の中、まるで刀で切るような音が響く

それも体が振れる事なく、正確に頭上からまっすぐと降ろされる


「すごいな……」


戦理の独り言のような声にも耳に入っていないのか

楓は素振りを続け、木刀を下に降ろした時その数は500を超えていた


「ふぅ……」


そう言いながら頭を揺らし髪を左右に降っている楓

それに見惚れた戦理は何も言わず、楓を見ている

そんな戦理に気づいた楓は近くに近寄り、話かける


「すみません、ありがとうございました」


「え?! あ、ああ……どういたしまして」


驚き体を後ろに下げた戦理に楓は首を傾げた後

恥ずかしそうに戦理に言う


「あ、あの……よければ鞘がある刀を1本、貸してください」

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