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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
45/61

第45節-男同士の語り合い-

「では……失礼しますね」


「ああ、明日から頼む」


楓は頭を少し下げると部屋の障子戸を閉める

そして……その部屋に残ったのは戦理のみ


「……しかし、覗きは良くないぞ?」


「あら、バレちゃいました?」


楓達が出て行った反対側の入口から女将が笑顔で口を右手で抑え入ってくれ

それを横目で睨んでる戦理に怯える事なく、笑顔で真横に座る


「しかし、戦理様……が女性に教えを請うとは……」


「以外か?」


「いえ……ただ私がいるのに教えを請うのはどうかと思っただけです」


「……女将……いや、お前は『いあい』ができないだろ?」


「できませんけど、ある程度はできますよ? 例えば暗殺とか」


その時の女将の眼はまるで獲物を殺すように

眼を細め……遠くを見つめながら口を抑えている


「結構だ、もし楓達に危害をくわえるのなら俺は容赦しない」


「……さすが天皇様から頂いた大事な通行書をあげただけありますね」


「別に余りだ、構わないだろ?」


「あれは……戦理さんの妻宛なのですが」


「俺に妻はいない」


「……そうでしたね、では私『達』は仕事に戻りますね」


そう言うと女将は立ち上がり、一礼すると戦理の部屋から外へ出る

その時、屋根裏から足元のような……そんな音が戦理の耳に入る


『なるほど……監視していたか……』


「……暗殺部隊の旅館に楓達を泊めるのが気にくわなかったのか?」


「そうではありませんよ」


戦理の独り言に部屋の外から優しい声が部屋の中に響く


『……まだいたのか』


戦理は部屋の外……障子戸を睨むがそこにもう人影はない

そして戦理が前を向き直すとそこに合った御膳と料理はなく

布団が綺麗に敷かれていた

それに驚く事なく、戦理は立ち上がり部屋の外に出るとある場所に向かう


そこは露天風呂、男女混浴ではなくしっかりと男と女が分かれている

楓達のいる特別室とは違い、こちらは元旅館のままの露天風呂


『……とりあえず、風呂入るか』


戦理が暖簾(のれん)を潜り中に入るとそこには脱衣所がある

木の籠が数個置かれているだけの小じんまりとした場所に

裸の駿斗と眼が合う

しかも、駿斗の右手には夏染・戦浪季が握られている


「警戒しなくても俺は手ぶらだぞ?」


「……そうかい」


「ちなみに俺『達』はお前さんの刀を盗む気はない」


「俺達?」


戦理は後ろを横目で少しだけ見た後

服を脱ぎながら駿斗に言う


「……いや、なんでもない」


「……?」


戦理はそう言い服を脱ぐと風呂の方へと足を進める

それを横目で見送った後、駿斗は誰もいないはずの暖簾の外に喋る


「誰かいたか?」


「いや、誰もいない……変な気配もしないから安心しろ」


暖簾の外の真横の壁に寄りかかり、両目を閉じている夏戦は

眼を開け……周囲をもう一度見直すと駿斗にそう言う


「悪いな、そんな事させて」


「気にするな、お前に死なれたら俺が困るからな」


「……わかってる」


それだけ言うと戦理は脱衣所の籠に刀を置くと風呂の方へ歩いて行く

その状態に夏戦はさらに気を張る、だが……気配はまったくない


『あの時……一瞬だが殺意的な物を感じた

 だが今はそれがない、あの男のお陰なのか?』


夏戦はまた眼を閉じ、壁に寄りかかり両目を閉じる

その頃、風呂場の駿斗と戦理は木の桶で体を流し

風呂場の中に入っていた


「……葛茅駿斗だ」


「ん? ああ、お前さんの名前か、俺は硬葉戦理だ」


「硬葉さん、あんたは……楓達の知り合いか?」


「戦理でいい、まぁ……そんなところだ」


「じゃあ俺の事も駿斗でいい」


「了解した」


それだけ言うと2人は黙って風呂に使っている

その空には月と星が出ており、絶好の露天風呂なのだが……


「男2人で……これか」


「……酒でも飲むか?」


「遠慮しておく、風呂場で死にたくはないんでね」


「‥…うちの部下の酒をかなり飲んだと聴いたが?」


「ん? あの程度はたいした事ない」


『20人分の酒を飲み干してあの程度か……』


「で、駿斗……お前さんはどうして楓達について行ってる?」


「まぁ、成り行きで護衛に付いてる」


「護衛?……あの2人に必要なのか?」


「必要なんだよ」


「…‥護衛ではなく別の何かを目的にしてないか?」


「……」


その戦理の言葉に駿斗は黙る

駿斗が黙った理由は『あの刀』の事を気づかれたと思ったからなのだが


「なるほど……どちらにほの字なのだな」


「…‥あん?」


「そうじゃなかったら付いてく意味がないだろ」


「……戦理、お前……顔に似合わず恋愛話好きなんだな」


「そうじゃない、同じ男として気になっただけだ」


「あんたは好きな女はいるのか?」


「ああ、いる」


「へぇ、誰か教えて貰ってもいいか?」


「いあいと言う謎の剣技を使う女だ、若いが実に良い」


「そっか……ん?」


「どうした?」


戦理は駿斗の顔を見ながら疑問の声をあげる

しかし、駿斗はその言葉に反応せず、考えこむ


『居合って楓ちゃんのあれだよな? 楓ちゃん以外居合って見てないぞ?

 戦理は他に居合を使ってる女を知っててそれで……ああ、なるほど』


「い、いや……俺の知ってる子かなって思って」


「たぶん知ってるぞ? 楓と言う女性だ」


「……」


「どうした? そんなに口を開けて、口に湯が入るぞ?」


『マジかよ……楓ちゃんどれだけ倍率高いんだよ……

 見た目だけなら牡丹達のほうが全然いいと思うが……』


「な、なぁ……もう1人、女がいただろ、あっちはどうなんだ?」


「ん? 牡丹の事か? あれは論外だ

 お前さんはあんな奴がいいのか?」


「いやいや……そんな事はないけど」


『……何が合ったか知らないけど

 戦理は牡丹の事を女として見てないなというより興味の1つもないな』


「まぁ……お前さんには迷惑はかけんよ、ゆっくりしていけ」


「あ……ああ、感謝する」


それだけ言うと戦理は風呂から出て脱衣所に向かう

それを見送った後、駿斗は心の中で思う


『これは俺も頑張らないとやばいな

 楓ちゃん、若いけど魅力だらけ……いや、違うな』


雪花は雪花で楓以外に興味なし

牡丹は牡丹で元気はいいが、あの服から恥じらいはない

春菊に至っては俺と関わらない


『楓ちゃんの周りが魅力なさすぎて必然と優しい楓ちゃんに

 視線と感情が集まるわけだな……うん、絶対そうだ』


そう思うと駿斗を風呂から出て体を拭くと脱衣所から刀を持ち

暖簾を潜ると夏戦が壁に寄りかかったまま、立っている


「悪い、またせた」


「いや……以外に短かったな」


「そうか?」


「駿斗、お前……あれだけ酒を飲んで

 よく平然としてられるな」


「ん? ああ、俺は酒には強いぞ

 酒自体はそこまで好きじゃないけどな」


それだけ言うと駿斗は歩きだす

そんな駿斗の後ろを黙って付いていく

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