表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
43/61

第43幕-戦理の心意-

「では、ここになります……」


女将は楓達を戦理の部屋の前まで案内し

一礼するとどこかへ行ってしまう

それを見送りなら楓は襖をかるく叩く


「楓です」


「ん? ああ、入ってくれ」


その言葉に楓はゆっくりと襖を開け中に入って行く

その動作に牡丹は小さな声で雪花に話かける


「ねぇ、楓ちゃんってどこかのお嬢様?」


「違うと思うけど……」


「そっか、なんか慣れてるように感じたから」


そんな話をコソコソしながら中に入ると

広い部屋で1人、中央でお酒を飲んでいる戦理と眼が合う


「お酒、注ぎに来ました」


「これはこれは……随分と可愛らしい浴衣だ

 そちらの『おまけ』は馬子にも衣裳だけどな」


「あっそ」


戦理のからかうような動作に牡丹はそっぽを向く

そんな中、楓の戦理の横に正座で座ると

お酒が入っているであろうと白い瓶を両手で持ち言う


「では、注ぎますね」


「あ、ああ……感謝する

 それにしても……随分と慣れた手つきだな」


「え? あ、お爺ちゃんが家にお客様を呼ぶ事が多かったのでそれで」


「なるほど……それはお爺様が素晴らしい人なのだろうな」


「……そうですね」


戦理の言葉に楓は微笑みながらお酒を注ぐと瓶を元の場所に戻す

その最中、牡丹と雪花は少し離れた位置に座り、楓と戦理を見ている

すると戦理はお酒の注がれた椀をお膳の上に置くと

楓の顔を真面目な顔で見る

その光景に牡丹は少し微笑みながら隣にいる春菊に言う


「ねぇ、もしかして……告白?」


すると春菊は両目を瞑ったまま、呆れるような声で言う


「だったら私達の前でしないでしょ

 楓の勧誘かなんかじゃない?」


「……勧誘されるのは私的には困るんだけど」


「まぁ、そうなったら楓にぼこされて牢屋行きね」


「私が負けるのが前提なんだ……」


牡丹が苦笑している横で雪花はその場でウズウズと座っている体を揺らし

今には戦理に飛びかかろうとする感じなのだが、楓の事を考えて我慢している


「まぁ、その……なんだ……」


「はい?」


「頼む! 俺に君の剣技を教えてくれ!」


「……え?」


戦理は胡坐で座ってる肘に両手を付き頭を下げる

その行動に驚いている楓を余所に戦理は話を進める


「俺にできる事があれば全力で協力する、1つでも2つでも

 教えてくれるなら……何個でも言う事を聴こう」


その言葉に楓ではなく牡丹が大声をあげながら立ち上がる


「え?! それほんと?!」


そんな牡丹を頭を上げた戦理が睨むように言う


「……お前に頼む事は何もない」


「そ、そうよね、楓に頼んでるのよね」


「ああ、その通りだ」


戦理がそれだけ言うと牡丹はその場に座りなおす

それに春菊は溜息を付いている


「無理にとは言わないが……どうだ?」


「えーと、教えると言うのは技のほうですか? それとも居合ですか?」


「どちらともと言いたいが剣技は門外不出とされている事が多いから

 その『いあい』と言う物を教えてくれるだけで十分だ」


「そうですか……」


楓は戦理の真面目な顔に頷きながら考える


『技は別に門外不出でもないんだよね、お爺ちゃん曰く

 できるのであれば誰に教えても構わないって……』


「わかりました、居合ができたのなら技を教えます」


「それは本当か?!」


「あ……はい」


戦理は楓の言葉に体を乗り出し、楓の両手を握り嬉しそうにしている

その行為に後ろで黙っていた牡丹が春閃を抜き、戦理の首にあてる

それに至るまでの動作は今までで一番速かったと春菊は思っている


「なんの真似だ?」


「とりあえずその手を離しなさい」


「……ん? 手?」


「楓ちゃんの手から手を離せって言ってるのよ!」


「……あ! ああ……これは失礼した」


牡丹に叫ばれ慌てて手を離して謝ってる戦理に楓は

『別にいいですよ』と微笑み返す

その動作に少しだけ動揺したのか戦理は咳払いをする


「牡丹さん、私は大丈夫なので……待っててください」


「りょーかーい」


牡丹は鞘に春閃を納めると春菊の隣に座る

それを見送った後、楓は戦理に言う


「あの戦理さん」


「……なんだ? 師匠」


「師匠……」


「教えて貰うのだから、師匠と仰ぐのは当然だろ?」


「それは恥ずかしいのでやめてください」


「ふむ……それなら、先生でどうだ?」


「……もうそれでいいです」


楓の溜息を付いている顔を余所に戦理は嬉しそうに微笑む


「で、なんだ?」


「あ、えっと……教える変わりにお願いを聴いてくれるんですよね?」


「ああ、もちろん、先生の頼みなら何個でも大丈夫だ

 ただし、自分にできる範囲の事で頼む」


「はい、でしたら……」


楓は戦理に頼み事を始める

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ