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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
40/61

第40節-旅館発見-

そして……しばらく道を進むと一つの旅館を見つける

そこは、どこの村や町からも離れており……周囲に旅館以外何もない

外観はとても綺麗な作りで高級な木を使っている事がわかる

それを見つけた駿斗は後ろを振り向き、楓達に言う


「今日は疲れただろうから、あそこで一泊しないか?」


「私はいいですよ」


「楓が良いなら私は文句なし」


楓に抱き付いたまま歩いている雪花は笑顔でそう言うが

その後ろを歩いていた牡丹は呆れた顔で言う


「どうせ、楓ちゃんのお風呂覗く気でしょ」


「覗かねぇよ」


「なるほど、楓ちゃんに魅力がないと

 楓ちゃん、駿斗って最低よね」


牡丹は雪花が抱き付いている反対側の肩に両手を置くと

微笑むように楓に話かける

しかし、当の楓は聴こえていなかったのか

はたまた聴こえていてスルーしたのか首を傾げる

そんな行動に駿斗は両手を広げ、慌てて謝る


「い、いや……違うぞ? 俺は楓ちゃんに魅力がないってわけじゃなくて

 女性の風呂を覗くなんて変態行為はしないって言いたいだけで」


「……普通覗きませんよね?」


楓の当り前のような言葉に駿斗は頷く中

春菊は楓の後ろから首に両手を回し楓に言う


「まぁ、駿斗『達』も所詮男、これだけ女だらけなら覗くわよ」


春菊が言うように女2人と刀霊の女2人

男性はその半分、男1人に刀霊の男1人


「……それは俺も含まれているのか?」


駿斗の横で腕を組み、今ままで無言を貫いていた夏戦は

駿斗の1歩前にでると春菊を睨み付ける


「達って言ったでしょ、夏戦、あんたもそうよ」


「……俺は覗きはしない」


「だ、だよな、夏戦も俺もそこいらの男と一緒にするな」


駿斗は夏戦の顔を見、頷くと女性達の顔を見る

しかし……楓以外の目線が痛いほど突き刺さるのがわかると

駿斗は後ろを振り向き、旅館めざし歩く


「く、暗くなる前に中入ろうぜ」


夏戦は溜息をつくと駿斗の後を歩く

それに微笑みながら女性達は楓にくっついたまま歩く


「お……重いんだけど」


「楓、頑張って!」

「楓ちゃんならできる!」

「大丈夫よ、私軽いから」


右腕の雪花、左腕の牡丹、真後ろの春菊

普通なら牡丹だけの重さなのだが

触れる影響から、雪花と春菊の体重も楓に圧し掛かる

結論から言えば……楓は3人を引っ張りながら歩く事となる

しかも、その3人は悪気は感じない素振りで笑顔で楓に話かける


「……」


「楓? どうしたの?」


何も言わず、その場に立ち止る楓を心配してか雪花は楓の顔を覗き込んだ直後

雪花は慌てて楓の腕から手を離し、楓の前を歩き出す


「わ、私は1人で歩くから……だ、大丈夫」


その歩幅は速く、楓との距離を一定に保っているが

明らかに何かに動揺してる素振り

だが……そんな雪花を気にする事なく、牡丹と春菊は楓にくっついている


「……せっ」


「せ? 楓ちゃ……」


楓の言葉に牡丹が首を横に向け、楓の顔を見て

それに気づき、慌てて楓の腕から離れ、少し離れた位置に移動した直後

牡丹の前髪が少し地面に落ちていく

それを見た牡丹は明らかな殺気を感じた


「……楓ちゃん……私は味方だよ?」


「……一の太刀・閃」


「ちょ」


牡丹の位置に楓の居合が飛んでくる

それを間一髪、後ろに避け避ける

しかし……その速さは牡丹が前に楓と戦った時より明らかに速い


「……楓? もしかして怒ってる?」


そんな楓の背中から未だに離れない春菊はそのままの状態で楓に話かける

だが、楓は後ろを振り向き春菊の顔を見た時、楓は『笑顔』だった


「いえ、怒ってませんよ、いきましょうか」


「そ、そう? 私はこのままで大丈夫?」


その笑顔に動揺しながら春菊は何時でも逃げれるような態勢に入るが

楓は笑顔で春菊にそう言う

そんな楓に牡丹は怒鳴るように言う


「ちょ、ちょっと! 楓ちゃん、春菊に甘くない?」


「……春菊さんは別に歩き辛い位置にいないので大丈夫です」


たしかに楓の言っている事に間違いはない

春菊は楓の首に両手を回し

その手は楓の胸付近にあるが両足は浮いており

実質、春菊をおんぶしてる程度の重さになる


『ま……まぁ、たしかに両手使えるからなんとかなる……』


そう考えた牡丹は『そこ』で気づいた


「ま、まさか……春菊、始めから気づいてて」


「何のこと?」


春菊の『何も知らないわよ?』と言った顔に溜息を付きながら

牡丹は前を歩いている雪花の横に付くと雪花に話かける


「ね、ねぇ……まさかだと思うけど

 楓ちゃんって両腕を拘束されるの嫌う……?」


「多分そうね、『片方』な・ら、大丈夫だったみたいだけど」


「片方を強調しなくてもいいでしょ……」


「あんたのせいで楓を春菊に取られちゃったのよ?! わかる?!」


雪花は本気で牡丹に詰め寄るようにそう言う

そんな雪花に驚きながら牡丹は言う


「……ほっんと、雪花は楓ちゃんの事好きよね」


「当り前でしょ、今更何言っての?」


「……楓ちゃんが危なくなったら雪花はどうするんだろうね」


「さぁね、私は他の人に見えないんだし、あんた達が楓を助けてよね」


「それはもちろん」


そんなやり取りに耳を傾けてた春菊は楓から離れる事なく考えを事する


『……やっぱり、楓に聴いた話の最初から最後まで覚えてないのね

 しかし、その時の剣技……少し気になるのよね、だけど、本人覚えてないし』


「春菊さん」


「え? 楓、何かしら?」


「服がずれていってますよ」


楓の言葉に春菊は顔を首元に向ける

楓が歩く毎に春菊の体が少し揺れ……それを何度も行う事で

春菊の服は下へ下へと落ちていき、現在は胸付近まで落ちている

そんな春菊に駿斗が後ろを振り向き言う


「全員いるよな?」


それに合わせ、夏戦も後ろを振り向いた時

『それ』に気づき、溜息を付くと駿斗に話かける


「先に行ってる」


「ん? 夏戦どうした?」


夏戦は前を歩きながら後ろを指さす

その指さした先には服がはだけている春菊

そんな春菊と駿斗は目があった直後

春菊は楓の肩から降り……駿斗の目の前まで距離を詰める

そして……駿斗の腹めがけ殴る


「ふ……ふか……抗力……」


その場に倒れ込む駿斗に春菊は呆れ顔で見下ろすと

驚いている牡丹達をスルーし楓の左腕を掴むと言う


「そいつはそこで寝るみたいだから先にいきましょう」


「え? いいんですか……?」


「良いのよ、こいつはここがお似合い」


牡丹達が旅館の入口の門構えから中に入り

その後、楓達が続く

だが、夏戦は1人、門構えの横に寄りかかり倒れている駿斗を見て言う


「……まったく、たいした男だよ、お前は」


それだけ言うと楓達の旅館の中に入らせ

夏戦は1人その場で倒れている駿斗が起きるのを待っていた

そして……駿斗が起きたのはそれから10分後の事だった……

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