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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
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第39節-その全てを駆けて-

『聖破一身流』その技の1つは1つは小さく、威力もない技

だが……それを全て『繋げる』事で聖破一身流は1つの技となる


『……私の体、持ってよ……千払に見せてあげるんだから』


雪花は大男の前まで走り込む

それに合わせ、大男は大太刀を構え直し臨戦態勢に入る

それを見ながら雪花は体を屈め低空姿勢で脇差・千払の鞘に手を置く


「……いくよ」


その速さは『隼』のように……

飛び上がり相手の頭上から切り裂く『南雲』それは雲を両断するように……

雷が一直線に通り過ぎる速さは隼よりも速く、まるでそれは『雷光』

その『放』たれた刃は拡散するように相手を切り裂き

そして……それを全て終結して終わりを見せる『破刃』


「その全てを合わせ、放つこと……それが聖破一身流の理よ」


大男の男性を雪花が通り過ぎただけのように見えた

その直後、大男は前に倒れ込む

その技は……聖破一身流の全てを『繋げ』合わせた技

その全てを叩き込んだ後、雪花は鞘に千払を納める

その瞬間……鞘の中でひび割れた音が鳴る


「……どうだった千払?」


『見せて貰った、まさか……女子ができるとはな……』


「この連携技の名前は?」


『無いな、元々……成功した者なんかいないんだから』


「え?」


『だから……この技の名前は『雪花(せっか)繚乱(りょうらん)


「雪花は私の名前よ?」


『そうか……冬から春になる一瞬を駆け抜ける

 実に……良い物を見せてくれた……感謝する』


「……うん」


それ以降、千払が喋る事はなく……

雪花は脇差の入った鞘を地面に置き空を見上げる

そんな雪花に楓が駆け寄る最中

雪花の足元に今まで合った水色の粒子が塵となる


「雪花っ!」


「……楓、よかった」


「今の凄かったね!」


「……え? なんの事?」


「え……?」


きょとんとした表情で楓の顔を見る雪花に

楓は今までの内容を両手を広げ説明する

すると雪花は後ろを振り向き、殺していった男達を見た後

楓の方へ向き直り楓を抱きしめ言う


「……え? 本当にこれ私が?」


「……うん、あの人達、雪花が見えてたし……」


「嘘でしょ?」


「嘘じゃないよ」


「それに私……剣技なんか知らないよ?」


「居合できてたし……何本も刀使ってたのに?」


「居合は楓のでしょ? それに何本も刀使える人間がいるわけないじゃん」


雪花は楓の言葉に笑いながらそう言う

その笑顔は嘘偽りない顔で、それは楓にわかった


『じゃあ……あの時の雪花は……何なの?』


「んー……楓の言ってる事、良くわからないけど

 今の今まで誰かと話をしていたような記憶はあるんだよね」


「誰か……? そこで倒れている男の人達とか?」


「いやいや……流石に殺した人と話ができたら私もう亡霊確定じゃん」


「一応霊でしょ……」


「そうなんだけど……んーなんなんだろう」


「……?」


「まぁ、収穫は……誘拐された人達だけだね」


「……そうだね」


「楓? どうしたの?」


「んーん、なんでもない、行こ」


雪花が楓の言葉に頷き歩き出した

それの後に続かず、倒れている男の人達を見た楓は両手を合わせ祈る

それを後ろ振り向き見ていた雪花は少しだけ微笑む

だが……どうして微笑んだのかは雪花もわからない


そして村の入口に戻った楓と雪花に駿斗と牡丹が駆け寄る

その後ろで春菊と夏戦は両腕を組み、欠伸をしている


「さ、誘拐された人がどこにいるかわからないけど先を急ごっか」


雪花は笑顔でそう言い、それを続く形で他の皆が続く中

楓は春菊に先程の話をすると春菊は腕を組んだまま右手を顎に当てる


「それは本当?」


「はい、はっきりと見ました」


「……雪花が生きていた時の記憶? いや……それでも……」


「春菊さん?」


考え込んでいる春菊を心配してか楓が顔を除き込むと

『……なんでもないわ』と驚いた表情で言う

それに首を傾げながら楓は春菊の隣を歩く


『……雪花、あなたは何者なの?』


楓の前を歩いている雪花は笑顔で駿斗と話をしている

その内容を後ろを歩きながら春菊は聴く


「だから、何もしてないって」


「じゃあなんで笑顔なんだよ」


「さぁ?」


「さぁ? って……楓ちゃんに変な事したんだろ」


「してないわよ」


『あほらし』


春菊がその内容に呆れ溜息をつくと

駿斗の少し後ろを歩いていた夏戦と眼が合おう

しかし、夏戦は欠伸し、それを右手で隠す


『なんなの……この連中……』


「春菊さん、楽しそうですね」


「……は?」


隣を歩いていた楓に突然変な事を言われた春菊は変な声をあげる

その声に前を歩いていた3人が立ち止り、後ろを振り向く


「……楽しくないわよ、たんに頭の中がお花畑ばかりだなって思っただけ」


「何それ……それって私のこと?!」


その言葉に雪花がほっぺを膨らませながら春菊の目の前まで歩くと怒鳴る

それを呆れた表情で見ている夏戦と笑ってる駿斗

だが……楓だけが空を見上げ思う


『……あの時の雪花、かっこよかったなぁ』

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