第33節-刹那-
雪花が賊の1人と打ち合いを始めた
しかし……相手の賊もそこまで刀を使うのを上手くないと言うのに
誰が見ても雪花の方が押され、防戦一方に見える
だが……実際は違っていた
『おい、俺に無理させないように戦っているな?』
「だって……折ったら持ち主に悪い……でしょ」
雪花は相手の刀を刀で受け止めながら独り言のように言う
それを知らずに相手の男性は調子に乗りながら刀を乱雑に振る
「なんだこいつ?! 弱いな!」
「っ……まだまだ」
『……構わないさ、俺が折れてもあいつを倒せ
それが俺を持ってた持ち主の思いだろ』
「でも……それだとあなたは……」
『気にするな……全力行け』
「……わかった……ごめんね」
雪花は相手の攻撃を一度受け止め、弾くと
両手で持っていた刀を右手で持ち直すと上段から男性に斬りかかる
それを男性が刀で受け止めると鉄と鉄の鈍い音が周囲に響き渡る
だが……その瞬間、相手の男性の刀にヒビが入る
「……あ?!」
『俺は他の鉄より硬くできている、その程度のなまくら如きに……』
そして雪花の力が籠った一撃に相手の刀が半分に折れた直後
雪花の刀にもヒビが入る……それを気にしながら雪花は無防備な男性に斬りかかる
「……だ……ん……な」
だが……その直後、雪花の持っていた刀もヒビからヒビが広がり砕けていく
それを見ながら雪花は悲しそうな顔をすると楔が笑いだす
『ははは、流石にオンボロの俺じゃ持たなかったか
だが……嬢ちゃん、良い振りだ……頑張れよ……』
「……ありがとう、楔」
『じゃあな……』
その言葉と共に楔は持ち手を残し砕け散る……
それを微笑みながら相手の男性が刀を構え、雪花に突撃する
それに気づいた雪花は後ろに飛び退き、刀の1本を取ると相手の攻撃を止める
すると雪花が右手で持ち受け止めたのは『小太刀』
『今度は私ね、よろしく……お嬢ちゃん』
「……うん、よろしく」
『私の名前は那岐、少しの間だけど……覚えててね』
「どうしてあなた達は刃こぼれを……」
『私達は……出来が良くないから……』
「でも……!」
『あなたはそんな事気にしなくていいわ、あの子を助けるために全力で行きなさい
それが私とあの子のためになるのだから……』
「わかった……」
そこまで会話をすると相手の刀は弾き
後ろに2歩下がると雪花は左手で小太刀を構える
その構えは小太刀を中段で横に構えている
「へっ、さっきと違う構えで俺を挑発してんのか?
構えなんてなんの役にも……」
だが、相手の男性は口だけで雪花に斬りかかろうとしない
それを見ていた大男は叫ぶ
「さっさとやっちまえ!」
「……へ、へい!」
男性が大男に言われ雪花に突撃すると……
雪花はまるで踊るように男性の刀を避ける
それは先程の果敢に攻める戦いとは違い、今度はまるで踊るような戦い
それを口を押えられ、話す事のできない楓が雪花の戦いを見ながら思う
『……雪花凄い……さっきと全く違う……』
「なんで……! あたんねぇ?!」
男性が息を切らした直後、雪花は男性目がけて突く
しかし、それを理解していたのか男性はその突きを刀で受け止める
「へっ、そんなオンボロ……こっちが防ぎ続ければいいだけじゃねぇか」
「……っ」
それに気づいた男性は刀を構えたまま後ろにじりじりと下がって距離を取る
すると那岐が雪花に向けて話かける
『……さぁ、反撃よ……あなたの実力を私に見せて
そうじゃないと、私は成仏できなくてあなたに憑りつくわよ』
「……それも楽しそう」
雪花は刀に向けて微笑む
そしてもう一度小太刀を構えると男性に向けて突撃する中
雪花は小さな声で小太刀の那岐に向けて言う
「……少しだけ頑張れる?」
『ええ、まかせなさい、女の意地……見せてあげる』




