第32節-村そして-
そして4人が山を降り、村に到着した
しかし……
「え……?」
楓は驚きの顔をしたまま村の入口『だった』場所に立ち尽くす
そこは小さながらも村に港があり、人通りが多かった村だと言う事は
潰れた木の家達の光景わかり……奥の海には木船が潰れて置いてある
「……一体何が……」
「……俺が山を登る時はまだここに……」
「駿斗が山を登ってしばらくしてから賊に襲われたのね……」
「……」
牡丹の言葉に雪花と春菊は下を向く
人の死骸などが無い当たり……楓に取っては良い光景なのだろうが
今の今まで『一江の月』に来てこんな現実的な事を突き付けられた
楓はその場に座り込んで仕舞う
そんな楓に誰1人として声をかけない、楓の気持ちが痛いほどわかるのだから……
だが……雪花だけは村の入口だった場所に立つと
滅びた村の中を見ながら楓だけに聴こえるような小さな声をあげる
「声が……聴こえる」
「……え?」
「楓……付いてきて」
「え、雪花?」
座り込んでいる楓の手を取り起こすと雪花はその手を引っ張ったまま
滅びた村の中に入って行く……しかし、牡丹達は追いかけない
この光景をどこかで見たことがある牡丹と駿斗は村の中に『何も』ない
事がわかっているからこそ……合えて楓と雪花を追いかけずその場にいる
「……牡丹、いいの?」
「……いいよ、楓ちゃん達はすぐに戻って来るから……」
「駿斗もそう思うのか?」
「ああ……俺の住んでいた近くの村もこうなってた時があったから
わかるんだよ……何も残っていない事が……」
駿斗は空を見上げながら夏戦にそう言うと
夏戦は『そうか……』と言い腕を組み、両目を閉じる
そして雪花がある場所で立ち止まると楓は雪花の背中に顔をぶつけ
片目を閉じながら雪花の背中に話かける
「どうしたの……?」
「この辺から聴こえた……はずなんだけど……」
「え?」
楓が辺りを見回すが崩れた家……だけで他に何もない
しかし……『それ』だけはそこにあった
「わかった……この子達ね……」
雪花は懐かしそうな顔をしながら地面に突き刺さっている刀を1本取る
その刀は脇差より少し長い……女性でも使えそうな刀
そんな刀とそれよりも長い刀が地面に突き刺さっている
「この刀……は?」
「多分だけど賊に抵抗してた人達の……武器ね
血も付いてないから……殺し合いじゃなかったのかしら?」
「じゃあ一体何が……」
「さぁ……私にもそれは……わから……」
そう言いながら雪花は地面に刀を刺し
楓にわからないとまで言いかけた時
雪花の後ろから男らしき声が雪花に耳に入る
「旦那! まだいましたぜ! 生きのよさそうなガキが!」
雪花が慌てた感じで後ろを振り向くとそこには男が6人と大男が1人いる
それも男2人が楓の口と両手を抑え、暴れる楓を抑えている
「へへ、そうだな……この村の奴らは船と陸で連れてったと言うのに……
まだ若い奴が……それも旨そうな女じゃねぇか」
大男が口を右手で拭う
その態度、そして服装から雪花はこの村を襲った賊だと言う事はすぐにわかった
その服装は汚れた服の上下と首に黒く長い布を棚引かせている
「……あれだけ連れてったんだ、こいつは俺達が貰ってもいいよな」
「そうっすよね!」
「じゃあ早速……」
抑えてる男何人かが楓に近寄ろうとした楓は雪花の顔を見ながら
泣きそうな顔で首を横に振っている……
その光景に雪花は唇を噛みしめる
『私には楓を助けられないの……?!
今から牡丹達を呼びに行ったら楓は……』
その時、どこからか雪花の耳に声が聴こえる
『まだだ、水色の髪の少女よ』
『そうよ、私達を使いなさい』
『ああ、まだ折れてない、あの子を助けるために俺達を』
「……まさか……」
『ああ、そうだ……少女よ、我らの声が聴こえるのだろう?』
『ならば……話は早い、さぁ……』
雪花の後ろには先程地面に刺した1本と5本の刀が雪花に語り掛ける
その刀達はけして妖刀でも誰かが憑りついているわけでもない
しかし、今の雪花にそんな事を気にしてる余裕はなく
身近にある刀を1本抜いた時、雪花の足元に水色の粒子らしき物が巻き上がる
「……おい! お前ら! 後ろ!」
楓を捕まえていた男性の1人が空いている手で楓に触ろうとしてる男達に言う
「あん? こいつ以外には誰も……」
「……ほぅ、刀を持っているが刃こぼれしてる上に
このガキより旨そうだな……」
大男の1人が自分の刀を腰から抜く
楓を抑えてる男達を後ろに下がらせると他の男共も刀を抜く
「こいつも捕まえて……へへ」
「気色悪い……」
「……いいねぇ、その塵を見るような顔、実に美味しそうだ」
「……」
雪花の話かけてくる男の顔を睨みそう言う
しかしそんな光景に捕まってる楓だけは不思議な顔をしている
『え、え……どうして……雪花の事が……見えてるの?』
そう楓達『妖刀』持ちだけが見えるはずの雪花が
ただの賊に見えている、その光景が楓には不思議でしかたなかった
「悪いわね……少しだけ力を貸して」
『ああ、好きなだけ俺を振るえ、俺はまだ戦える』
雪花は自分が両手で持っている刀に語り掛ける
すると雪花の持っている刃こぼれしている刀が雪花の声に答える
「俺の名前は大脇差『楔』、少しの間、よろしく頼む』
「ええ、行くわよ……!」
雪花は大脇差・楔と名乗った刀を右手で持ち直すと男達に突撃する




