第31節-山を降りる道中
「何時までも髪を触ってるのはいいが……この先どうするんだ?」
駿斗は呆れた顔で楓達を見ながら言う
その光景は楓が左手で雪花の髪を触り
右手で春菊の髪を触ってる光景である
「え、えっと……どうしましょう」
「とりあえず山降りてから考えましょ」
「……春菊、その体勢で言われても説得力ないよ」
牡丹は呆れ顔で春菊に言う
春菊は真面目な事を言ってるのだが……楓に髪を触られながら満足そうに
その場から離れない、よっほど楓に髪を触られるのが気に入ったのだろう
『……私とした事が……最初は楓がやめるまでのはずが……
すっかり触られるのが好きになって、ここにいたわね』
春菊は慌てて立ち上がり、楓に手を伸ばす
その行動に牡丹が驚いてる中、楓はその手を取り立ち上がる
すると楓の左腕にしがみつきながら雪花も立ち上がると
3人と3人の霊は山を降りるための道を急ぐ
その道中……牡丹は隣を歩いていた春菊に声をかける
前を歩いている楓と雪花に聴こえないように……
「ねぇ……もしかして楓ちゃんの事気に入ったの?」
牡丹が嬉しそうに春菊に言うと春菊は冷静な顔で牡丹に言い返す
「どうして?」
「え? だって楓ちゃんに手伸ばしたり、髪触らせたり」
「……そうね、気にいったのかも……」
「春菊は楓ちゃんの事嫌いだと思った」
「最初は、ね……まぁ、普段牡丹がしない事をされたから
少しだけ気が緩んだ……のかしらね」
「良い事じゃない」
牡丹は嬉しそうに春菊の顔を見ると春菊はそっぽを向いてしまう
そんなやり取りを他所に雪花は楓の右腕を掴みながら歩いている
それに楓は苦笑を浮かべながら雪花に言う
「ね……ねぇ、雪花、そろそろ離してくれない?」
「いーや、楓から離れると誰かさんが楓を横取りしそうなんだもん」
「しないから……」
「する! 絶対する!」
楓の苦笑を他所に雪花はほっぺを膨らませ、
前と後ろを見ると子供のような態度と声で楓に言う中
一番前でその声を聴いている夏戦が駿斗に言う
「あいつは馬鹿か……この状況で何を言っている……」
「楓ちゃんを取られたくないんだろ?」
「……誰も取らないだろ」
「どうかな? 楓ちゃんのあの剣技に魅せられた者
楓ちゃん自身に魅せられた者はいるはずだ」
「……お前は後者だろ?」
「……そうだな」
2人は前を向きながら表情1つ変えずに話しをしている
この順番に意味があり、駿斗が前を護衛をし……牡丹が後ろを護衛する
そして守られる張本人は真ん中と言う護衛陣形である
もちろん……実際他の人から見ると3人が順番に歩いているだけなのだが
その3人が何もない所に話しかけ、会話をしていると言う可笑しな光景であり
その3人とすれ違う者1人1人から後ろを振り向かれ
変な顔をされているのは誰1人気付かない……
そして3人が山を降り……少し離れた所に村らしき物が見えたので
駿斗は後ろを振り向き、後ろにいる皆に話かける
「あそこで休憩しないか?」
「はいっ」
「楓がいいなら」
「そうね」
「私も問題ないわ」
4人は頷き、村に向けて歩き始める……




