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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
30/61

第30節-思い違いも1つの答え-

「疲れてるところ悪いけど……ちょっと静かに私と話をしない?」


「……はい、構いませんけど?」


楓は春菊の真面目な顔と口調に何か感じたのか頷き

他の人達より少し離れた位置に2人で座る

すると春菊が楓に話かける


「ねぇ、楓……さっきの砕依って技の……あの繋ぎはなんなの?」


「え? あ、ああ……えっと、砕依(くだえ)攻波(こうは)ですか?」


「そ、それ……あれもお爺ちゃんに?」


「あ、えっと……砕依攻波はお父さんに見せて貰ったので模倣になりますね

 お爺ちゃんの砕依の繋ぎはまた別です」


『模倣……真似してあの剣技ができるなんて……

 というより、楓の身体能力が高いからできるのね……』


春菊が最も驚いたのは楓の身体能力

並外れた『集中力』そして『技の冴え』、『精度』この3点である

しかし春菊は楓の弱点を把握していた


「ねぇ、楓」


「はい?」


「楓って腕細いわよね?」


「え? あ、はい……慈心流は腕力を必要としないので

 それに、お爺ちゃんが『楓ちゃんの腕が太くなるのはいやじゃ』って」


「なるほどね……」


『そう……楓に速さはあっても威力がない

 だからこそ……『殺さない』事には長けている反面

 逆に殺し合いになった場合、楓の威力だと弱すぎる……』


「楓、あなたは強くなりたい?」


「え?」


春菊の真面目で冷静な顔の質問にきょとんとした表情で楓は聴き返す

その表情を見た春菊は溜息をつきながら言う


「あなたは強くなりたいの?」


「……どうなんでしょう、家が道場で小さい頃から教えて貰いましたけど

 強くなりたいとかはないんですよ、誰かのためになれたらって思いますけど」


「……誰かのために……ね、楓は好きな人とかいたの?」


「え? いませんよ」


またも楓のきょとんとした顔の言い回しに肩透かしを食らう春菊

しかし、春菊は呆れ顔で質問をする


「好きな異性の1人、2人はいたんじゃないの?」


「……いませんって、私が道場の子だと知ってて話しかけてくる人は

 大抵お爺ちゃん目当てだし、それに私に話しかけてくるのは同性の子ばかり」


『……絶対、楓の家族の誰かが裏で手を引いてるわね』


「でも、どうしてそんな事を?」


「……なんでもないわ、楓の事が気になっただけ」


「そうですか?」


実際は違っていた、春菊は楓の『強さ』の源……原点を知りたかった

誰かのためにと言うのならそれは家族だったり異性だったりと……

だけどここに楓の家族はいないし、好きな異性もいない

それなのに、ここまでの実力がだせるのは何なのか……それが気になった


「ええ、そうよ」


それだけ言うと春菊は両手を後ろに回し長い髪を少しだけ払い立ち上がる

それを見ていた楓は突然、春菊の髪を触り始める

楓が髪を触っている事に気付いた春菊は髪を触っている楓に言う


「私の髪を触って何してるの?」


「え、えっと……綺麗な髪でサラサラだなぁって……」


「……そう?」


「はいっ」


そう言いながら楓は笑顔で春菊の薄い赤髪を触り続けている

しかも……髪を触る手を止める事はない


「……楓は髪を触るのが好きなの?」


「そんな事はないんですけど……」


「じゃあどうして?」


「触ってみたくなったんです」


「……そう、じゃあ好きなだけ触れば」


あしらうような諦めたような言い方をした後……春菊は気付いた

この髪を触るという行為、これが楓なりの私に対する気遣いなのだと

たしかに私は……人間じゃない、だからこそ……妖刀を持っている者しか

わからないし、触れない……だから、楓はこうやって触ってくれているのだと


「楓は優しいのね」


「え? そうですか?」


楓はまたきょとんとした顔で春菊に言う

それを見た春菊は溜息をつき……その場に座ると楓が髪を触るのをやめるまで

何も言わずただただ黙ってその場にい続けた……


その数分後、雪花が楓達のほうを見ると楓が春菊の髪を弄ってる事に嫉妬し

『私も触って!』と言い……さらにややこしい事になった

それを見ながら駿斗と牡丹はお互いの顔を見て微笑むと……楓達の方へ歩く

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