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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
29/61

第29節-楓と駿斗-弐

「ははは、ははは」


仰け反らされた駿斗は左手だけで大太刀を持ち

右手を頭に当て笑い出す


「……」


しかし、楓はそれに驚く事はなく冷静に駿斗を見ている


「……楓って言ったか……気に入った、だから……全力で行くぜ」


駿斗のその言葉と共に駿斗自身からもの凄い殺気が楓に襲い掛かる

その殺気に押し潰されないように楓は踏ん張る


「……止められるもんなら止めてみな……!」


駿斗は両手で大太刀を持ち、楓目がけ走る

その速度は先程よりも速く……まるで大太刀なんて持ってないような速さ

そして楓との距離を詰めると上段に大太刀を構える


『……避けてもだめそう……なら一か八か……花月……ごめんね』


楓は脇差である花月を構え、駿斗の一撃を止めようとする

だがその光景は……明らかに無茶で無謀である

だからこそ……雪花は楓の元に走る


「楓……! 私は……楓を守りたいの……花月……お願い」


その瞬間、雪花は消え……花月に吸い込まれる

一瞬だが楓は驚くが駿斗の振りは止まらない


「これで終わりだぁぁ! 『豪破・強撃』!」


その言葉と共に夏染かせん戦浪季(いくさなみき)が振り下ろされる

その一撃を楓は花月で防ぐ、その衝撃は地面を伝わり『ドン』と言う音と共に

楓の足元に小さなクレーターができる

だが……それよりも楓が両手支え、抑えている花月は折れる事なく

夏染かせん戦浪季(いくさなみき)の一撃を防いでいる

その光景に駿斗は驚きながらも力を込める


「……脇差ごときが! 俺の一撃を止められるかよっ!」


しかし、駿斗がどんなに力を込めようと花月は折れる事はない

そんな花月に力を込め続けている楓の耳に雪花の声が聴こえる


『大丈夫、花月……雪華・花月を信じて……

 私と花月なら折れないから』


「え……」


楓は雪花が近くにいないはずなのに……まるで目の前にいるように声が聴こえた

それに疑問を感じながら駿斗の一撃を抑え……耐え続ける


「……なんなんだよ! さっさと折れろ……!」


駿斗の一瞬の動揺に楓は花月を力を込め払うと

夏染・戦浪季はまるで普通の刀のような軽さになっていて

駿斗の両手は頭上に上がる


『力を使い果たした? それとも……持ち主が限界?……楓、行けるよ!』


「うん……」


楓はその瞬間に花月を鞘に仕舞い……居合を放つ

その一撃は『弐の太刀・撃』

撃は隙だらけの駿斗の持ち手に当たると

簡単に夏染・戦浪季は吹き飛ばされ地面に刺さる


「……私の勝ちですね、駿斗さん」


「……ああ、そうだな」


駿斗は地面に正座で座り、まるで『殺してくれ』と言ってるように見える

しかし、そんな事を知らず楓は座ってる駿斗に手を伸ばし言う


「おつかれさまでした、良い試合でしたよ」


『楓……?』


その行動に雪花の唖然とした声が聴こえる

だが、駿斗は驚きながら楓の手を取り……立ち上がると笑顔で言う


「ははは、本当に面白い……楓、いや……楓ちゃんは凄いな」


「あ、いえ……その、何時もの癖で……」


楓の先程の行動は道場での練習試合が終わった直後

戦った相手が座り込み、それを助けるように笑顔で手を伸ばす

その行動を楓は何十回、何百回とやってきた……だからこそ癖になっていた


駿斗の言葉に楓は恥ずかしそうに両手をモジモジさせていると

楓の横に雪花、駿斗の横に夏戦が現れると楓は驚いた顔で雪花に話しかける


「楓、おつかれさま」


「……雪花、今までどこに?」


「え? 花月の中だよ」


「え? 雪花……前に刀の中に入れないみたいな事言ってなかった?」


「なんか楓を助けなっきゃと思ったらできちゃった」


「……何それ、でもありがと、雪花」


「うんっ」


雪花は笑顔で楓に抱き付く

それを呆れた顔で見ながら夏戦は駿斗に何も言わず考え事をしていた


『……春はその周期よる毒……夏は暑さによる重力……

 そして雪花……お前は雪が硬くなるように『硬化』と言う事になるのか?

 だが……冬の季節刀は存在する……』


夏戦がそこまで考えていると駿斗が夏戦に話しかける


「悪いな、負けちまって」


「……まぁ、そういう事もある、だが……命を助けられたな」


「ああ、俺はあの子……楓ちゃんに惚れた、だから」


「だから付いていく……のか?」


「ああ、だめか?」


「……まぁ、丁度……春閃と菊波があるみたいだし良いだろう

 ただし……あいつ等の許可はお前が貰えよ?」


「了解だ」


夏戦はそれだけ言うと夏染・戦浪季の中に入ってしまう

それを微笑みながら見た駿斗は右手で頭をかきながら楓の前に行く

そして楓に笑顔で話かける


「あのさ、楓ちゃん」


「……はい?」


「よければ俺も一緒に付いてっちゃだめか?

 女ばかりで男の護衛も欲しいかなって思ったんだが」


「え、えっと……」


楓が駿斗の言葉に困っていると起き上がり楓の方へ

春菊に支えながら歩いていくる牡丹が叫ぶ


「お断りよ、楓の護衛は私1人で十分」


「……俺に負けた奴が護衛とは笑えるな」


「なっ?! ……たしかにそうだけど……」


牡丹の言葉は後半、独り言のように小さな声で言う

そんなやり取りに楓は笑っていると雪花が抱き付いたまま言う


「ねぇ、楓」


「なぁに?」


「付いてきて貰ったら?」


「え? どうして?」


「だって……夏染・戦浪季、あれ重たそうだし

 それに男1人ぐらいいたほうが荷物持ちとか襲われる危険が減りそうだし」


「それもそうだね……でも」


「でも?」


楓はそこまで雪花に言いながら今も喧嘩している駿斗と牡丹の方を見ている

それに気付いた雪花は呆れ顔で『なんとなるでしょ』と言いながら

2人の元へ歩いていく……楓も雪花に続き歩こうとしたその時

楓の後ろから声をかけられる


「楓、少しいいかしら?」


「春菊さん……?」


楓の後ろで声をかけたのは腕を組んだまま真面目な顔をしている春菊だった

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