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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
28/61

第28節-楓と駿斗-壱

「牡丹……牡丹……大丈夫?」


「……っ、なんとか……」


「どうして急に襲い掛かったの?」


春菊はその場にしゃがみ込み、牡丹を抱えるように持ちながらその場で話す


「……護衛としてね、先に襲いかかったほうがいいかなって」


「相手はこっちを狙う気はなかったみたいだけど……」


「どうかな……あーいう人は信用できないんだよね」


「……お蔭で楓があの男と戦うはめになったんだけど」


春菊と牡丹が話をしている目の前に腕を組んだ雪花が怒り顔で立っている


「楓ちゃんが?!」


「あんたがやられたせいで我を忘れた? のか……怖い感じがする」


「楓ちゃん……」


牡丹達が楓の方へ向くと……そこでは一進一退の攻防が行われていた

楓が居合を放てば駿斗はその居合を避け、大太刀を大振りする

それを楓は避け、また攻勢にでる

そんなやり取りを繰り返している


「ははは、実に楽しい……ちょっとだけ全力で行く!」


「……!」


駿斗が夏染かせん戦浪季(いくさなみき)を頭上に構える

その動作自体……まったくと言っても隙だらけ

楓が居合を振れば簡単に致命傷を与えられる場面に見えるのだが

楓は攻撃せず、その場で居合の構えをしている

その光景を可笑しく思ったのか雪花が独り言のような声を漏らす


「楓? どうして攻撃しないの……」


「攻撃できないが正しいわね、あれは反撃の構えね」


「……どういう事?」


雪花は春菊に独り言を聴かれたうえに言われた事に少しイラつきを

覚えながらも、イラついた顔のまま……雪花は春菊に聴き返す


「……見てわかるでしょ、あれは肉を切らせて骨を断つ

 楓の一撃を合えて受けて、その倍以上で反撃するのよ」


「で、でも……楓の一撃は速いし、反撃されても避けられるんじゃ……」


「夏染・戦浪季を甘くみちゃいけないわ

 あの動作から地面に叩きつければ地面すら抉る勢いよ」


「刀でそんな事できるわけ……」


「できるわよ、夏染・戦浪季は斬る刀じゃないもの」


「……?」


「あんたも刀に憑りついた亡霊ならそれぐらい理解しなさい

 夏染・戦浪季、あの刀は『斬る』じゃなくて『叩きつける』物よ」


「……斬撃じゃなくて打撃ってことね」


「まぁ、そういう事、さて……そろそろ動くわよ」


春菊の言葉に雪花は戦っている2人の方へ眼をやる

すると楓が駿斗に突撃している

それを慌てながら雪花は叫ぶ


「楓! だめ!」


『……四の太刀……』


楓は駿斗の横を何もなかったように通り過ぎる

その光景は駿斗自身も驚くほど『何もなかった』

だが……駿斗の腕、刀を持っていた方の手だけ細かいかすり傷が何十にも付く

それを見た駿斗は嬉しそうに夏染を下に下ろし、楓を見る


「……たいして痛くはない」


「っ……まだ、成功しない……」


「……でも面白い一撃だ、楓と言ったな、もう一度こい」


「……」


「その一撃……次は防ぐ」


「わかりました」


楓はまた駿斗に突撃する

その光景見ていた春菊は『はっ』とした表情で楓に言う


「楓、次は防がれる!」


「……もう遅い」


駿斗の小さな声だけが楓の耳に聴こえる

だが……楓は足を止めず、駿斗に突っ込む

そして居合をする素振りをした楓に合わせ、駿斗は刀を両手で地面に突きさす


「手だけ狙うのなら……その反撃で本人を狙えばいいだけ!」


駿斗は右手を楓目がけ殴る

その拳にたしかに駿斗は『当たった』と言う感触はあった

だがそれは花月の鞘


「なっ?! なら……左手で!」


駿斗は楓が下から潜るように刀を構えているのを確認すると

左手を楓のお腹目がけ伸ばす

その時、駿斗の拳に当たったのは楓の花月……刀だけが吹き飛ばされる


砕依(くだえ)……攻波(こうは)


楓の掌底が駿斗の腹に直撃し、隙ができた駿斗目がけ楓は回し蹴りを放つ

その衝撃で駿斗は後ろに仰け反る、その隙に楓は後ろに下がり落ちている

花月と鞘を拾い……また居合の構えに入る


それを見た牡丹は驚いた顔で言うと雪花が牡丹に話かける


「……何……あれ」


「最初の入りはたしかに前に見た『砕依(くだえ)』ね

 だけど後半は……と言うかあれが本当の砕依?」


「本当の?」


「前に楓が言ってたでしょ、お父さんに教わったって……

 多分だけど、あれこそが楓のお父さんが楓に見せた技

 本当の砕依……」


「……そんな技が」


『でも……その前に見せたあの技……あれは未完成?』


雪花は砕依よりも楓が駿斗にやった剣技

通り抜けただけの技のほうが気になっていた

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