第27節-夏染・戦浪季の持ち主-
「……お前がすぐに喋らないからだ」
「……俺のせいか?」
「ああ」
雪花と春菊の睨みを他所に夏戦は男性に話かける
その直後、楓がオドオドとした感じで男性に聴く
「あ、あの……どうして私達に能力を……教えてくれるんですか?」
「ん? あ、ああ……そのほうが『面白そう』だから」
「面白そう……?」
「そ、だって妖刀と妖刀の対決だ、こんなに面白い事はない」
その言葉に牡丹は短刀を鞘から抜き、両手で持ち……男性を見る
しかし、男性は微笑みながら牡丹に言う
「……まぁ、いっか……説明するより実戦ってね」
「私の名前は牡丹、椎名牡丹」
「俺は『葛茅 駿斗』、よろしく頼むよ」
葛茅 駿斗と名乗った男性
その髪は茶色のショートカット、目の色は黒
服装は白いシャツに黒い羽織、下には黒の袴
そして大太刀……鞘は腰部分に長くぶら下がっている
「……さて、お手並み拝見と行こうか」
駿斗と名乗った男性は軽々と大太刀を構え牡丹目がけ走り出す
それに合わせ、牡丹は両手の短刀を構えながら突撃する
そして……牡丹が足を滑らせるように駿斗の背後に回り込み斬り込む
だが、駿斗はそれを読んでいたのか……大太刀を構え、180回転する
「どっせい!」
その一撃は早く牡丹が両手の短刀で間一髪、受け止める事に成功したが
その反動なのか……かなり遠くに吹き飛ばされる
「……すごい」
楓がその光景を見て驚いていると雪花が楓の隣で説明を始める
「楓、夏染・戦浪季は
自分の刀で斬った血を枷に重たくなっていく……
それもそれは何度も何度も永遠に……」
「え?! でも……あの駿斗って名乗った人は軽々と……」
「……夏戦がいないでしょ、どうせあいつが刀に中で支えてるのよ」
「凄い……ってあれ……それじゃあ雪花も花月の中に入れば
同じような事ができるの……?」
「……」
楓の言葉に雪花は少し遠くを見るような、悲しい目をした後
作り笑顔を楓に見せながら言う
「わ、私は今……花月の中には入れないんだ……ごめんね」
「……こっちこそごめんね、雪花」
その直後、駿斗名乗った男性は刀を一度払い肩に背負うと楓の方へ歩く
そして楓に大声で話かける
「そこの親切なお嬢ちゃん、次……相手してくれよ」
「え?!」
「まだ……まだよ! 私はまだ!」
吹き飛ばされた牡丹は一気に地面を駆け、駿斗の後ろから斬りかかる
だが……それを予測していたのか
駿斗は牡丹が飛び込んで来るであろう場所に足を牡丹のお腹目がけ放つ
それは正確に牡丹の腹に直撃し吹き飛ばす
「……っ」
その衝撃か牡丹は吹き飛ばされた位置で気を失う
「チッ……明らかに冷静差が欠けすぎなんだよ
さて……邪魔者はいなくなった……こと……だし」
「……」
駿斗が半笑を浮かべながら楓の方を見る
その時……並外れた『殺気』に近い何かを感じた駿斗は急いで武器を構える
「楓……」
「雪花は牡丹さんを春菊さんと一緒に見てあげて」
「う、うん……」
楓は横目で血の気が引きながらも慌てて牡丹に駆け寄る春菊を見ながら雪花に言い
そして、楓は……駿斗を睨むように見ながら言う
「どうして……あそこまでしたんですか?
そもそも、私達を襲う理由を聴いてないです」
「言う前に襲ってきたのはそっちだ、俺に非はないよ」
「じゃあ聴いたら……いいんですよね?」
「っ……ああ」
その時の楓の目つきは明らかに駿斗を殺すまでは行かなくても
その寸前……までに凝縮されたような殺気と視線を浴びせる
それに若干押され気味な駿斗は説明を始める
「俺は夏戦に言われた通り春夏秋冬の刀を集める旅をしている
だが、これ以外見つからなくてな……丁度反対側の村に行く最中で
君達を見つけて勝負を挑もうと思ったんだよ」
「それならどうしてあの時襲わなかったんですか?」
「それは人数的な物かな? 今はあの子が伸びてくれたお蔭でやりやすい」
「……私目当てって事だったんですか?」
「……それはどうかな? まぁ、あれよりは俺の好みと言うのはたしかだよ」
ただその時の駿斗の態度、親指で倒れている牡丹を指差すその態度が……
楓のイラつきをさらに刺激し、より一層……危険な物としている自覚はなく
駿斗は笑顔で楓に向かって説明をしている
「もういいです……さっさと始めましょう」
「ああ……行くぞ」
楓は花月を腰に構え、左手を武器に添え……右手を鞘に構えると走り出す
それに合わせ駿斗は大太刀を横に構え、追撃の姿勢に入る




