第26節-夏染・戦浪季-
「あん? 饅頭がなんだって……!?」
盗賊の男性1人が楓達に向けて叫ぶように言うが
とうの4人は落ちている饅頭を見ている
「私の苺大福……」
「お饅頭が……」
盗賊の矢の驚きに2人は食べていた物を地面に落とした
もちろん、雪花と春菊はきっちりとお皿の上に食べかけの饅頭を置いている
「……ま、まぁ……拾うのは危ないけど」
「ええ、というか……今はそんな事言ってる場合じゃ……」
その言葉を聴いた楓と牡丹は無言で自分達の武器を抜き
盗賊達の顔を見る……その時、相手の盗賊達は後ろに半歩下がる
「牡丹さん……」
「ええ、楓ちゃん……食べ物の恨みは恐ろしいって事見せてあげましょ」
「……はい」
その言葉を残し楓と牡丹は左右の盗賊達に突撃する
それを心配そうに見ている雪花を他所に春菊は長椅子に座り
残りの饅頭を食べている、そんな春菊に雪花は長椅子は座り怒鳴る
「って! のんきに食べてる場合じゃ!」
しかし雪花の言葉を右手を静止した春菊は口に饅頭を含みながら言う
「ふあふ、ふえあたちはふぇいまわよ」
「は?」
その直後、春菊は饅頭を飲み込み、お茶を一口啜ると雪花に言う
「だから……今のあの子達は止められないわよ」
「どういう事?」
「食べ物の恨みは恐ろしいって事かしらね」
「……ああ、なるほど」
雪花が春菊の言葉を聴き、左右を見た時には既に盗賊の男達は地面に伏せている
楓のほうは武器だけをしっかりとへし折り気絶させたのだろう
一方牡丹の方は……武器だけが2本地面に落ちて男性はいない
「……私を忘れるな!」
女性の矢が楓目がけ放たれたと同時に雪花は駆けだす
しかし楓はそれに気づかず男性達を見ている
『間に合わない!』
だが……その矢を大太刀を持った男性が弾く
そして、楓の方を振り向くと笑顔で言う
「先程はどうも、さっきのお礼はここでさせて貰うよ」
その男性は先程、楓が迷子になっていたのを助けた男性
その手に握られているのは大太刀、ただし……明らかに重たそうに見える
「チッ……まだ仲間が! ここは撤退……とでも言うわけないだろ」
その直後、店のお婆さんだった人が変装を解き
ナイフを構えた女性が男性の後ろから斬りかかろうとした時……
「……まったく」
男性が大太刀を振り払いナイフに直撃させる
するとナイフは砕け……
ナイフを持っていた女性は店の一番奥の壁に叩きつけられる
「なっ……」
その行動に女性が驚いていると男性はゆっくりと弓を持った女性に歩む
それに動揺した女性は男性目がけ矢を放つ
しかしその矢はどれも男性には当たらず、まるで矢が男性を避けてるように見える
「……なんであたんない?!」
「そりゃあ……あんたが動揺してるからだよ」
男性は左肩に大太刀の先端を当てながら近寄る
その行動に殺意はない物の女性は弓を捨て、慌てて逃げていく
それを呆れた顔で見ている男性を他所に春菊と雪花は2人に近づき言う
「楓、良く聴いて……あの大太刀は『夏染・戦浪季』
私達が探している2本目の刀よ……」
「牡丹、あの大太刀は……夏染・戦浪季」
・夏染・戦浪季
春夏秋冬の夏の名を継いでいる大太刀
その重さ、威力は夏染・戦浪季の持っている能力で変わる
「……その能力は」
春菊が言おうとしたその時、男性が笑顔でこちらに近寄り春菊に言う
「……そこから先は俺が説明するよ、な……いいだろ? 夏戦」
「……ああ、別に構わない」
いつの間にか男性の横に1人の男性が立っている
その姿は……茶色の眼に銀髪、後ろ髪を束ねている
そして服装は薄い赤色の着物……両手は着物が長いのか見えない
足元は相変わらずの裸足
「……久しぶりね、夏戦」
「ああ、久しいな……春菊、それと……」
夏戦と名乗った男性は雪花の顔を見ると、馬鹿にしたように言う
「……ああ、なんだ……紛い物か」
「……煩い」
「おいおい、俺が説明を始める前に喧嘩はやめてくれよ?」
男性の言葉を聴かず、妖刀に憑りついた人物達はお互いを睨んでいる




