第25節-中腹-
「え?」
その男性の言葉『女性が4人』に4人の女性が同じ反応をする
しかし、そんな事を気にせず男性は立ち上がり……楓に近づくと両手を握る
「先程は道を教えてくれてありがとう、この例は……
次に会った時にでもするから、それでいいかい?」
「え、あ……お気になさらず」
「そうか、じゃあ……また会えるといいね」
その男性は楓の手を離すと森の中を走り抜け
山の登り道である坂をどちらに言ったかまではわからない
「あいつ……どさくさにまぎれて楓の手を……」
「雪花、そんな事じゃなくてあの人、雪花と春菊の事、見えてたわよね……」
牡丹の言葉に楓と雪花はお互いを見る中
春菊だけは男性が走り抜けた先、森の出口を見ながら思う
『あいつ……明らかに迷子じゃない、わざと森の中で迷子になったフリを
して、楓をこの場所に釣ったのね……それも手まで握って……』
「春菊? どうしたの?」
「……なんでもないわ……というかさっさと登りましょ
雨が降ったり暗くなったらいろいろとメンドクサイから」
『はーい』
3人はほぼ同時に返事をすると、森の外に出……坂を登っていく
そしてある程度登った所で楓は牡丹の横に付き、話かける
「この道って……そこまで上に登らないんですね」
「ん? ああ、ここは山道と言っても、人が山を渡りやすくするために
傾斜が優しいのよ、そのため、楕円を半分にしたような道になってるの
もう少しで茶屋が見えるから、そこが半分よ」
牡丹の言葉に従い、4人はさらに歩くと……茶屋が見える
そこに牡丹が駆け寄るようと、店の人であろうお婆さんに声をかけている
その直後、楓達が到着すると、木の長細い椅子に座るように言う
「……楓ちゃん、ここから両側みてごらん」
「え?」
楓が牡丹に言われた通り、両側の道を見ると……
先程、牡丹が言った通り楕円を半分にしたような道になっている
「……丸い感じだったんですね」
「うん、そうだね……だから、ここから見るとそれが良くわかる」
牡丹がそう言った直後、店のお婆さんがお饅頭4つとお茶を4つ持ってくる
しかし、お婆さんは不思議な顔で牡丹に尋ねる
「お嬢ちゃん……本当にお茶2つずつ飲むの?」
「え、ええ……喉乾いちゃって」
「あら、そうなの? じゃあ……ごゆっくりね」
「はい、ありがとうございます」
店のお婆さんが店の中に入って言ったのを確認した牡丹は
お茶を雪花と春菊に渡す、その光景は楓と牡丹からしたら普通なのだが……
見えない人から見たら……それはお茶が入った入物が空中に浮いている
そんな可笑しいな光景が楓と牡丹の目の前に起きている
「……ばれそうになったらお茶をすぐおいてね」
「了解」
「うん」
「……牡丹さん、春菊さんの扱いになれてるんですね」
「え? ああ……旅をしている内に春菊が当たり前のようにやってたから
私もこれが普通だと思ったのだけど、そこの雪花は違うみたいだからね」
「……うるさい」
「雪花?」
「え? 何? 楓」
楓は不思議そうな顔で雪花の顔を覗きこんでいる
しかし、牡丹と春菊は何も聴いてない様子でただ無言でお茶を飲んでいる
「教えてくれれば……じゃなくて、私が気付くべきだったよね……」
「あ、ち、違うよ? 私は楓に『人』として扱って貰って嬉しいから」
「そう……?」
「うん!」
そういうと雪花はお饅頭を1個取り、木の長椅子ではなくその場にしゃがみ
お饅頭を一口噛むと……牡丹を睨みながら言う
「これ……何も入ってないじゃん」
「え? 私のは餡子だけど?」
「私は……白餡」
「……楓、それ食べてみて」
「え? う、うん……あ、これ……苺大福」
「……」
今の今までただの饅頭4つが茶色のお皿の上に乗ってるだけだと思った雪花は
他の3人の顔を見ながら自分の何も入ってない饅頭を見ている
そんな時、楓が雪花の目の前に半分を割いた苺大福を出す
「はい、雪花」
「え?」
「変わりに雪花のお饅頭ちょうだい、苺ばかりだと飽きちゃうから」
その時の楓の顔は満面の笑みで雪花に言う
もちろん、雪花も含み……その楓の対応はすぐにわかった事であった
しかし……雪花から見たら楓が『気を使って』と言う態度ではないと思った
「……いいの?」
「え? もちろんだよ?」
「ありがとう、楓」
そういうと雪花は自分のお饅頭を半分に割り、楓に渡すと
楓はそれを口小さく含むと笑顔で雪花に言う
「……以外に美味しいかも、このお饅頭、苺の口直しかな……」
「……そうかもね」
雪花もそう言いながら楓がくれた苺大福を小さく噛む
それを見ながら牡丹は自分の餡子饅頭の半分を春菊の前に出す
しかし、春菊は嫌な顔で牡丹の手を追いやる
「……私は白餡が好きなの」
「え? いいじゃん、半分くれたって」
「お断りよ、それもそっち餡子でしょ……私は餡子だけは嫌いなのよ」
「何それ……」
牡丹が苦笑しながら春菊に話かけた時……それは突然起きた
牡丹と楓目がけ、『何か』が飛んでくる
それを雪花と春菊が手で弾く、だが……2人の手から血が出ている
「誰……?」
「さぁ? ただ食事中を襲うのは最低ね」
その直後、茶屋の裏側から口を白い布で隠した男が4人現れる
しかし、雪花と春菊が弾いた『何か』はそこから投げられた物ではない
その直後、下り道から女性が1人、弓を構えながら歩いて行く
「ちっ……風で当たらなかったか」
2人目がけ放たれたのは木の矢、先っぽに鉄部分があり
刺されば致命傷になる、それを適格に弾き……主人を守った2人は洞察力
そう、楓と牡丹はその矢に気付かず、お饅頭を口に含んでいたのだから
しかし、そこで1つ重大な事ができる
「ねぇ……楓」
「……牡丹」
「え?」
「何?」
『お饅頭……地面に落ちてる』
「……あ」
2人の重なるような声だけが周囲を囲んでいる盗賊らしい人の耳に聴こえる




