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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
23/61

第23節-椎名・牡丹の過去-弐

「で……これからどうするのよ……」


私は隣を一緒に走ってる女性に話かける

その女性は足元は裸足


「さぁ? あなたの思う通りに動いたら?」


「また勝手な事を……」


私は五地を抜け、商店が並ぶ通りに出る

そしてそこで……ある事に気付く

私の隣を走っていた女性は人とぶつからない

と言うより、まるでその場にいないように……歩く人達は女性をすり抜けていく


「……え」


「だから言ったじゃない、私はあなたにしか見えないし触れない

 ほら、このように……ね」


女性は私の肩を触る、その感触はたしかに人に触れられたような感じなのだが

女性が歩いている男性の肩に触れようとすると、その手はすり抜ける


「もちろん、あなた以外には声も聴こえない」


女性は次に通りかかった女性の耳元と大声をあげる

しかし歩いていた女性は何も聴こえない様子で歩いて行ってしまう

それを見送りながら女性は『ほらね』と私と向かって言う


「でも……どうして私にだけ?」


「さぁ? 運命とでも思って頂戴」


「また簡単な……」


「ところであなた、名前は?」


「私? 私は椎名(しいな)牡丹(ぼたん)よ」


「牡丹ね、私は春菊、その短刀に憑りついた亡霊って所ね」


「え……まさかこの短刀、本当に呪われて……」


私は顔を青ざめながら胸元の短刀を見ると

目の前で春菊と名乗った女性は溜息をつきながら言う


「当たり前でしょ、私みたいなのが憑いてる時点で可笑しすぎるのよ」


「自分でそういうのね……」


「まぁ、そんな物よ」


「……ところで、春菊……さん」


「さんはいらないわよ、呼び捨てで構わないわ、で何かしら?」


「じゃあ春菊……あなたの事が見えて、話せる人は他にいないの?」


「……どうかしらね、私と同じ……憑りついた武器か

 または……」


その後の春菊の声は小さく聴き取る事はできなかったが

春菊は小さな声でこう言った


『春夏秋冬……その刀を持つ人達と……知り合いならね』


「……まぁ、そういうわけで牡丹、私はあなたがその短刀を持っているかぎり

 あなたに協力してあげる」


「……」


「何してるのよ」


私は胸元から短刀を1本だし、鞘から抜くとジロジロと見た後

私のほうを見ている春菊に話かける


「ねぇ……この短刀、普通に売ってるのと同じじゃない?

 変な『おまけ』が付いてるだけで」


「おまけって……まぁ、見た目はね

 そうだ、1つ教えといてあげる」


「え?」


「その手に持ってるのは菊波、それには『神経毒』が付いてる

 ようは毒付きね、もちろん胸元にある春閃も毒持ちで春閃は『血液毒』」


「……え……」


私は慌てて短刀を鞘に仕舞う

するとクスクスと笑いながら春菊は私に話かける


「別に持ち主に害はないわよ、牡丹が攻撃した相手ぐらいよ」


「……毒ってどんな毒なの?」


「……え、ああ……」


血液毒

体の中の「酸素を運ぶ細胞」を壊し

体に酸素を行きわたらすのを防ぎそして…最後は酸欠で死ぬ。


神経毒

神経の働きを邪魔する毒…徐々に人間の体の神経を麻痺させる

それは、徐々に体を蝕み…体を動かす事すら困難になる。


「わかった?」


「両方とも怖い……」


「そりゃあそうでしょ……そもそもこんな力が付いてなければ

 あんな『開かない木箱』に封印されてないわよ」


「……ちょっとまて、今……開かない木箱って……」


「ええ、言ったわよ、だから向こうの男もそう言ってたじゃない」


「え、え……じゃあどうして私が開けられたの?!」


「さぁ? 芸者だからじゃない?」


「それはさすがに……」


「……とまぁ、牡丹」


「ん?」


「さっさとこの町、出たほうがいいわよ」


「え?」


牡丹は右方向を指差すとそこには木の板に張り紙がされて

目上の高さに立て掛けれいた

そこを私が眺めるように見ると、そこにはこう書かれていた


重守(かさもり)攻信(こうしん)隊の五地より

 短刀2本盗まれた、その者の名前と顔をここに晒す』


その紙の下には私の顔絵、そして『椎名牡丹』と書かれていた


「……どうして私の名前が……」


「そりゃああんたが自分で芸者って名乗ったから調べられたんでしょ

 それに目立つ服装だしね」


「……私これ1着しか持ってないのに……」


「今までどうしてたのよ」


「え? 1人暮らしで宿屋泊まりだったし

 宿屋で洗ってもらったりしてたから……」


「……そ、まぁ……逃げ出すなら早めにしましょ」


「ぅー……お金稼いだからまだお金はあるけど……」


そう言いながら私はトボトボと町を後にして……旅に出る事にした

それから1か月……

白い羽織の男性達が何度も私を探してるのか

私は立ち寄る場所、全てに現れるようになった

そんな旅を続けて行く内に春菊が優しい事に気付く


「何?」


「え……別になんでも」


「そ、牡丹……ごめんなさいね、私のせいで」


「んーん、気にしないで旅も楽しいから」


「そう? それなら安心した」


春菊は私の顔を見ながら微笑む

最初は毒舌で愛想がよくなく……よく腕を組む人だと思っていた

だが慣れてしまえば、その毒舌の裏には優しさがあり

私の事を常に考えてくれたりと……まるでお姉ちゃんみたいな感じだった


「ふふ」


「どうしたの? 牡丹」


「なんでもない、春菊は優しいなぁって思っただけ」


「……は?」


その時の春菊の顔は何時も眠たそうな目ををさらに細め……

『何いってんの?』と言った表情でこちらを見てくる

それが私の中でわかっていたような対応にさらに可笑しくなりながら

私は春菊は次の村へ向かう、そこは裏に森がある村……

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